ホーリーウッド物語

3.

クリスと会ってから3日が過ぎたが、まだ父さんたちは帰らない。母さんから手紙が届いたのはさらに3日経った頃だった。
手紙には父さんが調べ物が終わらず、あと数日かかりそうなので、1人で私のお土産選びと称して買い物していると書いてあるので、心配はなさそうだ。帰るまで困ったら近所の食堂兼宿屋の主人で父さんの友達のガイルさんを頼るように書いてあった。

私は、明日に迫った医療補助の試験勉強と試験会場の隣街に行く準備をして過ごすだけだから、特に困ることはない。強いて言えばあのクリスが父さんの帰りを待っていることくらいだ。
あれから一度診療所の前で会ったときにパン屋も休みなのかと不思議そうに言われたが、私が自分の勉強のために休んでいると言ったら、パン屋も研究が必要なのかとなんだか納得していたから、まぁいいのだろう。

夕食は、なんとなくガイルさんの店に行くことにした。

「いらっしゃいっ。エリー。今日は定食食ってくか？」
「うん。」
ガイルの店は夜は呑み屋も兼ねているので、酔っ払いに絡まれないようにカウンターの1番すみに案内される。
「ケインは、まだ帰らないのか？」
「母さんはあと数日かかりそうだって。私は明日、試験で隣街行くから、留守にするよ。」
「がんばって来い。合格したら、スペシャルメニュー作ってやるから、食いに来いな。」
「ありがとう。ところであの人まだいる？」
「あぁ、あの貴族の坊ちゃんらしい兄さんか？ケインの帰りを待っているって言ってたな。」
「何で父さんを待っているのか、言ってた？」
「なんか昔の話を聞きたいとか言ってたよ。」
「とりあえず害はなさそうかな？私が父さんの娘とは知らないから、問題ないと思うけど。」

医療補助の試験は毎年合格率30%ほどだが、ずっと父さんの手伝いをしてきたので、学科も実技もさほど心配はない。
とは言え余計なことを考えて、失敗したくないから、いったんクリスのことは忘れることにした。
合格すれば、無医村で診療所を開き診察した自分の患者の症状を医師に説明してオッケーが出れば、医療行為を医師に代わってすることもできる。私の場合は、父さんの手伝いをしつつ、継続して通っている患者さんを1人で捌けるので父さんの助けになれると考えている。
明日は早起きして試験会場まで行くので、早々に自宅へ戻るのだった。