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終話 最大限の愛情を

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⸺⸺3年後。

「シャロム、フロル! どこへ行った!? 風呂に入る時間だぞ!」
 オスカー様が屋敷中を走り回って我が子を探している。

 私はあの子たちの居場所を知っている。なぜなら……。
「フローラ、はぁ、またお前か……」
 オスカー様は私の前で止まると膝に手をつき、はぁはぁと息を切らしていた。
「えへへ、何のことでしょう?」

 私がてへっと笑って誤魔化すと、オスカー様は困ったように笑い、私の額に軽く口付けをした。
 そして辺りを見回し誰もいないことを確認すると、私のドレスのスカート部分を思いっきりまくし上げた。

「ほーら、見つけたぞお前たち、観念しろ」
 オスカー様が覗くスカートの中には、男女の双子、シャロムとフロルが私の足にしがみついて隠れていたのだ。

「きゃぁ、見つかったー!」
「逃げろ逃げろー!」
「こら、逃さんぞ。よし、捕まえた」
 オスカー様は器用に2人の子供を両脇に抱える。

「わぁ、またおとうさまの勝ちだー」
「パパは何でぜったいフロルたちのこと見つけるのー?」
「俺はお前たちがどこにいたって、絶対に見つけてやるぞ」
 オスカー様はそう言って2人を両肩へと乗せる。

「えー、なんでなんでー?」
「さぁ、なんでだろうなぁ」

「おとうさま、今日もお風呂の中ですーぱーまどーぽーず、しようね!」
「フロルもするー!」
「全く、仕方がないな……」

「ねぇ、オスカー様? そろそろそのスーパー魔道ポーズっていうの、私にも見せて?」
 私はクスクスと笑いながら彼に尋ねる。しかし、返ってくる言葉は決まってこうだった。

「絶対に見せられんと言っているだろう……」
 オスカー様はそう言っていつも顔を真っ赤にする。
「ねぇ、シャロム。お母さんに見せて?」
 私は子供へとせがむ。
「だめ! おかあさまに見せたらおとうさまがもうやってくれなくなっちゃうから!」
 と、シャロム。
「フロルとシャロムとパパだけの秘密のぽーず!」
 フロルはそう言ってオスカー様の肩の上で左手を腰に当てて、右手の人差し指をピンと天へと伸ばす。

「あーっ! フロルがおかあさまの前ですーぱーまどーぽーずしちゃった!」
 シャロムがそう言ってべそをかく。
「あっ、フロルまちがえてママの前ですーぱーまどーぽーずしちゃった……!」
 フロルも同じようにべそをかき始めた。

「まぁ、それがスーパー魔道ポーズなのね。大丈夫よシャロム、フロル。お父様はスーパー魔道ポーズをもっとパワーアップさせたポーズを見せてくれるわ」
「ふ、フローラッ……!?」
 オスカー様は再び顔を赤くする。

「え、ほんとう?」
「ねぇ、パパ、ほんとうなの?」
「ほ……本当だ……」
 オスカー様はそう言って私に背を向けて大浴場へと向かう。

「やったー!」
「早くお風呂いこー!」
「ぼく、今日もおとうさまの背中洗うからね」
「フロルも洗うよ!」
「分かったわかった、順番だぞ」
「「はーい!」」

 その幸せな3つの背中を見て思わずはにかむ。
 私もオスカー様も親からの愛情を知らずに育った。だけど、2人で愛を見つけて愛し合って、愛というものを知った今、天使のような2人の我が子に最大限の愛情を注いでいる。

⸺⸺おしまい⸺⸺
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