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おまけ
龍神様と波乱(おまけその捌)
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これは本当に何でもないある晴れた日、それは突然やって来ました。
「君が龍平?」
「はい?」
いつものように畑に出ていた龍平の名を呼ぶのは、浮世離れしたような白銀の髪に白い肌、美しい以外の言葉で形容することが難しいほどの美青年でした。狩衣を身にまとい、人ならざる雰囲気と美しさをもつその青年を見て、龍平はすぐにその存在を神だと認識しました。
「僕は兎ノ神。神様と一緒に暮らす人間なんて珍しいからどんな人間かと思って見に来たんだ。龍神に求婚されたんだってね。」
「求婚はされましたけど婚姻はしてないですよ!?」
龍平は慌てて否定しましたが、そんな龍平の姿を見て兎ノ神は怪しげに笑います。
「知ってるよ。だから龍神と一緒に暮らす人間って言っただろう?でも君本当に普通の人間だね。霊力もないし、突出した能力もない。体は鍛えてるみたいだけどそれだけ。龍神は君のどこがいいんだろうね。」
兎ノ神のそのつかみどころのない言葉、声色に、龍平は思わず身構えます。兎ノ神の言っていることはごく当然のことですが、言い方に含みがあるように感じます。今まで龍平が会ってきた龍神様、土公神、蛇神様のような神様とはどこか違います。
「龍神様が俺のどこを気に入っているのかは俺にも分かりません。でも龍神様が俺にここにいて欲しいと言いました。」
龍平は毅然として言います。責められているかのような言い方でしたが、龍平は何も悪いことなどしていません。やましいことがないなら堂々と言えばいいのです。
「君は本当に龍神と一緒にいるつもりなのかい?」
「そうです。」
「君は何も特別じゃないのに?」
「それは、そうですけど。」
「ふーん...。」
龍平の毅然とした態度に兎ノ神は納得したような、不満があるような声を上げます。言葉はどれも含みがあり、態度はどこか読めない兎ノ神は龍平のようにまっすぐな人間とは根本的に合わないようでした。少し考えて、兎ノ神は一手を打つように口を開きました。
「君って、龍神と一緒にいて何が出来るの?」
「え...。」
兎ノ神のまさに神の一手のような言葉に、龍平は言葉を失いました。龍神様は龍平と一緒にいて欲しいと思っていますが、それは嫁として、です。婚姻をかたくなに拒否し、ただ毎日龍神様の屋敷で暮らす龍平は龍神様の欲する愛の言葉を伝えたこともありません。そんな龍平が、龍神様と一緒にいて何が出来るのでしょう。何の意味があるのでしょう。龍平は悪い方に考えてしまうばかりです。
「神である龍神と、何も特別なことなんてない普通の人間である君とじゃ、生きてる世界が違うと思うんだけど。」
龍平は黙ったまま、何も言葉を返せません。そんな龍平を見て可哀想だと同情したのか、はたまた言うだけ言って満足したのかは定かではありませんが、兎ノ神は「邪魔したね。」とだけ言って消えていきました。残された龍平は、ただ黙って下を向いて考えるばかりです。
「君が龍平?」
「はい?」
いつものように畑に出ていた龍平の名を呼ぶのは、浮世離れしたような白銀の髪に白い肌、美しい以外の言葉で形容することが難しいほどの美青年でした。狩衣を身にまとい、人ならざる雰囲気と美しさをもつその青年を見て、龍平はすぐにその存在を神だと認識しました。
「僕は兎ノ神。神様と一緒に暮らす人間なんて珍しいからどんな人間かと思って見に来たんだ。龍神に求婚されたんだってね。」
「求婚はされましたけど婚姻はしてないですよ!?」
龍平は慌てて否定しましたが、そんな龍平の姿を見て兎ノ神は怪しげに笑います。
「知ってるよ。だから龍神と一緒に暮らす人間って言っただろう?でも君本当に普通の人間だね。霊力もないし、突出した能力もない。体は鍛えてるみたいだけどそれだけ。龍神は君のどこがいいんだろうね。」
兎ノ神のそのつかみどころのない言葉、声色に、龍平は思わず身構えます。兎ノ神の言っていることはごく当然のことですが、言い方に含みがあるように感じます。今まで龍平が会ってきた龍神様、土公神、蛇神様のような神様とはどこか違います。
「龍神様が俺のどこを気に入っているのかは俺にも分かりません。でも龍神様が俺にここにいて欲しいと言いました。」
龍平は毅然として言います。責められているかのような言い方でしたが、龍平は何も悪いことなどしていません。やましいことがないなら堂々と言えばいいのです。
「君は本当に龍神と一緒にいるつもりなのかい?」
「そうです。」
「君は何も特別じゃないのに?」
「それは、そうですけど。」
「ふーん...。」
龍平の毅然とした態度に兎ノ神は納得したような、不満があるような声を上げます。言葉はどれも含みがあり、態度はどこか読めない兎ノ神は龍平のようにまっすぐな人間とは根本的に合わないようでした。少し考えて、兎ノ神は一手を打つように口を開きました。
「君って、龍神と一緒にいて何が出来るの?」
「え...。」
兎ノ神のまさに神の一手のような言葉に、龍平は言葉を失いました。龍神様は龍平と一緒にいて欲しいと思っていますが、それは嫁として、です。婚姻をかたくなに拒否し、ただ毎日龍神様の屋敷で暮らす龍平は龍神様の欲する愛の言葉を伝えたこともありません。そんな龍平が、龍神様と一緒にいて何が出来るのでしょう。何の意味があるのでしょう。龍平は悪い方に考えてしまうばかりです。
「神である龍神と、何も特別なことなんてない普通の人間である君とじゃ、生きてる世界が違うと思うんだけど。」
龍平は黙ったまま、何も言葉を返せません。そんな龍平を見て可哀想だと同情したのか、はたまた言うだけ言って満足したのかは定かではありませんが、兎ノ神は「邪魔したね。」とだけ言って消えていきました。残された龍平は、ただ黙って下を向いて考えるばかりです。
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