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番外編2
1、オーガイトとザラ 前編
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オーガイトがはじめて10程違う弟と会ったのは、17の時だった。
他国の姫を母に生れたオーガイトと違ってその弟は父王の妻のなかでも身分の卑しいものが生んだ子だった。
しかもその母は弟を生んですぐに、後宮で他の妻たちにいびり殺されたという噂であった。
その父王の落しだねは表向きは貴族の子として王都の片隅の静な郊外で育っていた。
色好みのオーガイトの父は多くの妻を娶っていた。
身分の有るものからそうでないものまで気に入った花を持ち帰って活けるように、花である妻たちは増えていった。
当然、後宮での女としての戦いとその裏の勢力争いはし烈を究め、王子や姫たちは不審な死を遂げていた。
オーガイトが17まで生き残っているのはひとえに、魑魅魍魎がうごめく後宮の中で王の愛を繋ぎ止め、賢しらに生き残ろうとした母の決死の守りと、オーガイトが生まれながらに備えもった人を魅了する研ぎ澄まされた美貌と、己の才覚によるものが大きかった。
オーガイトの活動は王宮内から飛び出して、ボリビアの貴族たちや、町の豪商たちなどと交流を深め、強いボリビアを打ち立てて、他国に攻められない国作りを訴えて、地下水脈が広がるように滔々と彼自身の、そして主義主張の支援者を増やしていた。
「会わせたいものがあるのです、、」
そういう前置きで、父王の腹心が案内した貴族の庭園で、初めて7つの弟と顔を合わせる。
母親が違うとはいえ、半分流れているのは同じものだった。自分の子供の頃と似ていると思う。
利発そうな黒い眼、黒い髪。整った顔立ち。
だが、決定的に違うところがある。
弟のザラは、ほわっとした顔をしていた。
王子として厳しく育てられた自分の7つの時は、既に笑顔で近づいてくる者には笑顔の裏に隠されているものに気を付けなさい、と教えられていた。
欲しいのは、自分の欲望を実現させるためのオーガイトの好意であったり、オーガイトを枕詞に権威を振りかざしたいのかもしれないし、命を金に変えるつもりかもしれませんよ、と。
その常に用心を怠ることはなく、結果的に命の危機を回避したことは何度もあった。
初顔合わせの時は、子供らしくふっくらとした頬の弟は、ほわっと笑った。
顔全体に大きな花が咲いたようだった。
彼と引き合わされたのは、王子がもう残り少なくなっていることと、オーガイトには絶対的な身内の味方が必要だったからだ。
いくら、才気走る彼とはいえ、国内を押さえた後は、群雄割拠しているこの中原で生き残るためには、裏切ることのない保証付きの強い味方が必要だった。
だが、このほわっとした年の離れた弟が自分の助けになるとは到底思えなかった。
「お兄さんは誰?」
おいおい、ちゃんと説明をしておけよ!
と口に出さず毒づく。
「私はオーガイト。お前は?」
「ザラ!」
ザラはひとかかえのほどの大きさのボールを持っていた。動物の革を繋ぎあわせ、空気をパンパンにいれたものだ。
ボールを蹴ると跳ね上がる。
巷の少年たちに人気の遊び道具である。
ボールを蹴り数を数える。
地面に落としたらそれで終わりだ。
「お兄さんもこれする?ぼく、50ぐらいできるよ!」
誇らしげに7つのザラはいい、得意気にちょっとやって見せた。
オーガイトはそんな庶民的な遊びをしたことが一度もないが、器用にバランスを崩しても追い付き蹴りあげる機敏な動きは、7つの子にしては運動神経がいいように思えた。
「やる?」
とザラは高く蹴ってよこす。
オーガイトはふんっと鼻で笑う。
無言で剣をシャンと抜き、ビックリしているザラの前で、ボールをまっふたつにした。
破裂した玉が落ちた音が鈍く重い。
ザラは驚愕して目を見開いてギラリ日を反射させる本物の剣と、妖しく底光りするオーガイトの目と、ボールだった残骸を見る。
吸う息も吐く息も、一度にたくさん必要で馬鹿のように鼻から大きな擦れた音がしていた。
言葉がでなかった。
「ザラよ、私と遊ぶなら剣でだ!」
オーガイトは宣言する。
その途端、ザラの世界からボールが消えてなくなった。
ギラつく刃と、その後方から危険な色を煌めかせて自分をみる、自分よりは大人ではあるが、まだ完全に大人になりきれていないほとばしるような精気に溢れた17才の若者に言葉を失った。
その出会いでザラはオーガイトに魅了され、心にオーガイトが永遠に刻みこまれた。
可愛く素直で元気であるとを求められた子供時代が終わる。
一方で、オーガイトは、半分血の繋がった真っ直ぐな目をしたほわっと笑うザラが、血と謀略にまみれた王族や貴族たちの中であがきながら生き残り、変わっていく様をみてみたいと思ったのだった。
他国の姫を母に生れたオーガイトと違ってその弟は父王の妻のなかでも身分の卑しいものが生んだ子だった。
しかもその母は弟を生んですぐに、後宮で他の妻たちにいびり殺されたという噂であった。
その父王の落しだねは表向きは貴族の子として王都の片隅の静な郊外で育っていた。
色好みのオーガイトの父は多くの妻を娶っていた。
身分の有るものからそうでないものまで気に入った花を持ち帰って活けるように、花である妻たちは増えていった。
当然、後宮での女としての戦いとその裏の勢力争いはし烈を究め、王子や姫たちは不審な死を遂げていた。
オーガイトが17まで生き残っているのはひとえに、魑魅魍魎がうごめく後宮の中で王の愛を繋ぎ止め、賢しらに生き残ろうとした母の決死の守りと、オーガイトが生まれながらに備えもった人を魅了する研ぎ澄まされた美貌と、己の才覚によるものが大きかった。
オーガイトの活動は王宮内から飛び出して、ボリビアの貴族たちや、町の豪商たちなどと交流を深め、強いボリビアを打ち立てて、他国に攻められない国作りを訴えて、地下水脈が広がるように滔々と彼自身の、そして主義主張の支援者を増やしていた。
「会わせたいものがあるのです、、」
そういう前置きで、父王の腹心が案内した貴族の庭園で、初めて7つの弟と顔を合わせる。
母親が違うとはいえ、半分流れているのは同じものだった。自分の子供の頃と似ていると思う。
利発そうな黒い眼、黒い髪。整った顔立ち。
だが、決定的に違うところがある。
弟のザラは、ほわっとした顔をしていた。
王子として厳しく育てられた自分の7つの時は、既に笑顔で近づいてくる者には笑顔の裏に隠されているものに気を付けなさい、と教えられていた。
欲しいのは、自分の欲望を実現させるためのオーガイトの好意であったり、オーガイトを枕詞に権威を振りかざしたいのかもしれないし、命を金に変えるつもりかもしれませんよ、と。
その常に用心を怠ることはなく、結果的に命の危機を回避したことは何度もあった。
初顔合わせの時は、子供らしくふっくらとした頬の弟は、ほわっと笑った。
顔全体に大きな花が咲いたようだった。
彼と引き合わされたのは、王子がもう残り少なくなっていることと、オーガイトには絶対的な身内の味方が必要だったからだ。
いくら、才気走る彼とはいえ、国内を押さえた後は、群雄割拠しているこの中原で生き残るためには、裏切ることのない保証付きの強い味方が必要だった。
だが、このほわっとした年の離れた弟が自分の助けになるとは到底思えなかった。
「お兄さんは誰?」
おいおい、ちゃんと説明をしておけよ!
と口に出さず毒づく。
「私はオーガイト。お前は?」
「ザラ!」
ザラはひとかかえのほどの大きさのボールを持っていた。動物の革を繋ぎあわせ、空気をパンパンにいれたものだ。
ボールを蹴ると跳ね上がる。
巷の少年たちに人気の遊び道具である。
ボールを蹴り数を数える。
地面に落としたらそれで終わりだ。
「お兄さんもこれする?ぼく、50ぐらいできるよ!」
誇らしげに7つのザラはいい、得意気にちょっとやって見せた。
オーガイトはそんな庶民的な遊びをしたことが一度もないが、器用にバランスを崩しても追い付き蹴りあげる機敏な動きは、7つの子にしては運動神経がいいように思えた。
「やる?」
とザラは高く蹴ってよこす。
オーガイトはふんっと鼻で笑う。
無言で剣をシャンと抜き、ビックリしているザラの前で、ボールをまっふたつにした。
破裂した玉が落ちた音が鈍く重い。
ザラは驚愕して目を見開いてギラリ日を反射させる本物の剣と、妖しく底光りするオーガイトの目と、ボールだった残骸を見る。
吸う息も吐く息も、一度にたくさん必要で馬鹿のように鼻から大きな擦れた音がしていた。
言葉がでなかった。
「ザラよ、私と遊ぶなら剣でだ!」
オーガイトは宣言する。
その途端、ザラの世界からボールが消えてなくなった。
ギラつく刃と、その後方から危険な色を煌めかせて自分をみる、自分よりは大人ではあるが、まだ完全に大人になりきれていないほとばしるような精気に溢れた17才の若者に言葉を失った。
その出会いでザラはオーガイトに魅了され、心にオーガイトが永遠に刻みこまれた。
可愛く素直で元気であるとを求められた子供時代が終わる。
一方で、オーガイトは、半分血の繋がった真っ直ぐな目をしたほわっと笑うザラが、血と謀略にまみれた王族や貴族たちの中であがきながら生き残り、変わっていく様をみてみたいと思ったのだった。
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