上 下
7 / 31
第1章 ソロキャンパー、大地に立つ(異世界の)

7、ソロキャンパー、旅の仲間を作る。

しおりを挟む
****



【ペンネアラビアータの美味しい作り方】


1、まずはアラビアータソースを作ります。
フライパンに皮をむいて包丁の腹でつぶしたニンニクを入れ、オリーブオイルを注いで火にかけます。
(この時、ニンニク全体にオリーブオイルがかぶる様にフライパンを傾けましょう)
オイルがふつふつしてきたら弱火にし、ニンニクが色づくまで弱火でじっくりと火を通します。

2、ニンニクが柔らかくなったら、フライパンを火から下ろし濡れ布巾などの上に置いて温度を下げます。
ニンニクの周りがふつふつとしなくなったら、鷹の爪を加え、20秒程フライパンをゆすってオイルに辛味を移します。

3、2を再び火にかけ、手でつぶしたトマトホール缶を加えて強火にします。
煮立ったら弱火にし、時々かき混ぜながら水分を蒸発させるように15~20分煮詰めます。
この時に塩・コンソメで調味します。

4、ペンネを湯がきます。この時湯1ℓに対し、10gの塩を振り入れ、多少硬めにゆで上げましょう。

5、3のソースに4のペンネを加えペンネがソースの水分を吸いすぎたらゆで汁を足し、丁度いい硬さになるまで煮込みます。
味をみて調味し、仕上げます。

*今回はキャンプ地での調理ですので調理時間を優先し、ニンニクは薄切りにして味と香りが早くオイルに移るよう調整ずみです。

*マッシュルームやベーコンをプラスしてもいいでしょう。



・・・これで美味しい『ペンネアラビアータ”風”」の出来上がりだ。


・・・なぜ僕はこんな状況で料理をしているのかって・・・? それは・・・



****



『『さて、落ち着いたようじゃ。儂はタラスクと申す。知っておった様じゃがな・・・そこのおのこよ。少し話をさせて貰おうかの? いや、男というより『』といったほうが良いのかの?』』

『『と、その前にの。さっきから良い香りを漂わせておるそこの鍋、あれは何という料理かの?』』


・・・こういうことです・・・。
何だろうか・・・、この世界の人?たちは話をする前にお腹が減る体質なのだろうか?

『『のうはぐれ人殿よ・・・』』

「・・・なんですか?」

『『・・・美味いの!この料理!!』』

「・・・ハァ、ありがとうございます・・・」

いや、料理が美味しいと言ってくれるのは嬉しいが、話を進めて欲しいのだけど・・・



****



『タラスク』は争いを一言で止めた後に『エルダー』以外のネルルク達を離れさせると、焚火で煮込みっぱなしだった料理を目ざとく見つけ、言外に「食べさせろ」と迫ってきたのだ。
勿論食べさせる事に不服など無かったのだが、煮込まれ過ぎている料理を出すのはソロキャンパーとしてのプライドが許さなかった。だから作り直すことにしたのだ。
『タラスク』に作り直すから待っていて下さいと頼むと、彼女は『『ふむ、分かったわ』』と存外に大人しく待っていてくれた。

・・・なぜだと分かったのかって?

変身したのだ。とても妖艶で美しい女性の姿に。
艶やかな赤い髪は所々金色に輝いている。
目はアメジストの様に紫色に輝いて、切れ長だ。
プロポーションは抜群、不二峰子か。
とにかくとんでもなく美しいのだ。

「・・・女性だったんですね・・・」

『『当り前じゃろ!それとも何かの?胸毛の濃い熊のような男とでも思っておったか?』』

そういってタラスクは笑う。

「いや、単純に竜のままでしたから・・・変身できるとは思ってもみませんでした」

『『クフフッ、それはそうじゃの!竜の姿を見たら竜だと思うのが道理じゃ。悪かったのww』』

そういうと彼女はソファーの代わりの様に『エルダー』にもたれ掛かる。
そこへトマトとニンニクのいい香りが漂ってくる。

「あ、出来ましたね」

『『おおっ!これは美味そうじゃ!頂いても?』』

「ユズル様!私も頂きたいです!!」

・・・アイーシャさん?さっきステーキ二人分食べたよね?

「・・・まあ、大したものではありませんが、どうぞ」


と、まあこんな訳で料理を作らなくてはならなくなってしまったのだ。



****



「『『ご馳走さまでした』』」

二人は、二度ほどおかわりすると満足そうに手を合わせた。

『『では、はぐれ人殿。いやユズルと申したかの、少々話をさせてもらうぞ。まずは、なぜお主がこちらに来なければならなかったかという事じゃが』』

おお!いきなり核心に触れてくれるのか!

『『・・・正直、儂にも分からん!!』』

「ガクッ!」である。気を持たせておいて・・・分からんって・・・

『『いやの?数百年毎にはぐれ人は呼ばれる。そこには明確な理由があったんじゃが、今回は特にその兆候が見えんでの』』

「えっ!?300年前だけではなかったのですか?」

『『そうじゃ。はぐれ人については【神々の収穫Harvest of the gods】に対して、この世界唯一の対抗手段であるからの』』

「【神々の収穫Harvest of the gods】?それは何なのですか!?」

『『【神々の収穫】とはの、数百年に一度、星空から神が降りてきてこの世界を半壊せしめ、蹂躙したうえであらゆる種族の者たちを大量に攫い取ってまた空に戻る。・・・まさに収穫じゃの・・・その事象の事をいうのじゃ。
というても我ら『神代かみよ』から生きておる者たちがそう言っておるだけじゃがの。勿論人の子等や、魔族の子等はこの事を知ってはおらぬ。簡単なおとぎ話としてはぐれ人の事を伝えさせておるだけじゃからの』』

「アイーシャさん、言い伝えでは特に何もなく冒険にって・・・」

「は・・・はい、私もそう言い聞かされておりましたもの。というよりユズル様がはぐれ人であった事に今更ながら吃驚しております・・・ハッ!という事は私はこれから幸せになれるのですね!!やりましたぁ!!」

いや、今聞いたよね?神々の収穫って!この世界が壊されるって!

『『オホンッ!続けてもいいかの?』』

「あ!すいません、お願いします」

『『それでの、我等は神などにこの世界を好き勝手されるのは好まん。
その為、兆候があった時のみ他の世界より強力な資質やスキルを持った者を神代の者いずれかが呼び・・・所謂召喚じゃの・・・我等神代の者と協力して神達を退しりぞけるのじゃが、先も言ったように今回はその兆候が出ておらぬ。しかし、お主は呼ばれた。まあその為我が見に来たという訳じゃ』』

「要するに僕は何かの間違いで呼ばれた可能性がある・・・と」

『『有体に言えばそうじゃの』』

「タラスク様」

『『なんじゃ?』』

「僕は元の世界に戻れるんですか?」

『『戻れる。戻れるが、そのためには呼んだ者のところに行かねばならん』』

「そう・・・なんですね。僕を呼んだ人って誰か分かりますか?」

『『・・・今は分からぬ。正直神代から生きているものはそこそこおるでの。まぁ、2,3検討はついとるがの』』

なるほど。要するに、戻る為には『神代から生きるもの』を訪ねる必要があるって事か・・・。

「タラスク様、アイーシャさん!」

『『なんじゃ?』』

「なんでしょう?」

僕は覚悟を決める。

「この世界について教えてくれますか?僕は神代の皆さんに会いに行こうと思います」



*****



二人が言うにはここは「クジュ山」の麓で、クジュ山は「オ・グーニ」という町と「ココノ」という町に跨がってそびえている所謂「神の山」とされている山だそうだ。
「オ・グーニ」は「フィーゴ公国」に所属し、「ココノ」は「ブンゴール連邦」に属しているらしい。

何だろう、国の名前まで元の世界に似ているなぁ。

で、アイーシャさんは「オ・グーニ」領主の次女になるそうで、『巫女』として、クジュ山とタラスク様に祈りを捧げるのが生業だそうだ。
タラスク様はクジュ山に神代から居を構え「フィーゴ公国」「ブンゴール連邦」の二国から神代の竜として崇められている存在とのこと。
『『儂は偉いのじゃぞ!』』とタラスク様は仰るが、腹ペコ竜にしか思えない。
そのタラスク様が言うにはここから少し離れた「マクサーン」という町に神代の者がいるらしく、まずはそこを訪れることにした。
これには理由があって、はぐれ人を呼んだ場合召喚を行った神代の者の近くに呼び出される確率が高いからだそうだ。
まあ、今の状況で旅するには心許ないので「オ・グーニ」に行き装備を整えもっと情報を仕入れて、それから「マクサーン」に向かうという算段になるだろう。「オ・グーニ」で二人とはお別れかな。

「じゃあ「オ・グーニ」で二人とはお別れですかね?」

「『『え?』』」

「え?」

『『何を言っとるんじゃ。儂はお主についていくぞ?』』

「私もそのつもりですぅ」

「いや、でも、お二人にはそれぞれ役目があるのでは?」

『『そんなものないぞ?儂は基本的に暇なのじゃ。【神々の収穫】の時でもなければの』』

「大丈夫です。祈りはどこでもできますからぁ。というより祈りの対象であるタラスク様が一緒ですもの。あ、それと今後はアイーシャと呼んで下さいね!」

「え?」

「『『え?』』」

『『久しぶりのはぐれ人、しかも普通とは違う呼ばれ方をした者だしの。ついていくと面白そうじゃ!それに美味い物も食べれそうじゃしの!ん?エルダーもいくとな?』』

『オンッ!!』

マジか・・・、食べ物に釣られたか・・・。やっぱりダメ竜なんじゃないだろうか?この竜。

「私もです!タラスク様の言う通りです。・・・それに『幸せ』が付いてくるのですよねぇ?ウフ、ウフフフフ」

アイーシん・・・それはおとぎ話って言ってませんでしたか?というか笑い顔が怖いんですが。


こうして僕は、3人と1匹で旅することになったのである。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

【完結】おじいちゃんは元勇者

三園 七詩
ファンタジー
元勇者のおじいさんに拾われた子供の話… 親に捨てられ、周りからも見放され生きる事をあきらめた子供の前に国から追放された元勇者のおじいさんが現れる。 エイトを息子のように可愛がり…いつしか子供は強くなり過ぎてしまっていた…

【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?

つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。 平民の我が家でいいのですか? 疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。 義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。 学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。 必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。 勉強嫌いの義妹。 この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。 両親に駄々をこねているようです。 私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。 しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。 なろう、カクヨム、にも公開中。

晴れて国外追放にされたので魅了を解除してあげてから出て行きました [完]

ラララキヲ
ファンタジー
卒業式にて婚約者の王子に婚約破棄され義妹を殺そうとしたとして国外追放にされた公爵令嬢のリネットは一人残された国境にて微笑む。 「さようなら、私が産まれた国。  私を自由にしてくれたお礼に『魅了』が今後この国には効かないようにしてあげるね」 リネットが居なくなった国でリネットを追い出した者たちは国王の前に頭を垂れる── ◇婚約破棄の“後”の話です。 ◇転生チート。 ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇なろうにも上げてます。 ◇人によっては最後「胸糞」らしいです。ごめんね;^^ ◇なので感想欄閉じます(笑)

大切”だった”仲間に裏切られたので、皆殺しにしようと思います

騙道みりあ
ファンタジー
 魔王を討伐し、世界に平和をもたらした”勇者パーティー”。  その一員であり、”人類最強”と呼ばれる少年ユウキは、何故か仲間たちに裏切られてしまう。  仲間への信頼、恋人への愛。それら全てが作られたものだと知り、ユウキは怒りを覚えた。  なので、全員殺すことにした。  1話完結ですが、続編も考えています。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

嘘つきと言われた聖女は自国に戻る

七辻ゆゆ
ファンタジー
必要とされなくなってしまったなら、仕方がありません。 民のために選ぶ道はもう、一つしかなかったのです。

処理中です...