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第1章 ソロキャンパー、大地に立つ(異世界の)
8、ソロキャンパーの、異世界旅歩き ①
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****
その後、3人?で色々と話した。
まずはマクサーンへ行くルートの選定や備品の調達についてやマクサーン迄の距離やルート選定等。
マクサーンに行くにはまずオ・グーニへと下り、そこで準備した後一度「公都フィーゴ」に立ち寄らなければならないらしい。
巫女であるアイーシャが領地を出るには、自領で承認を得た後公都に赴き、大公様に領地を離れた事を直接報告する義務がある為一度公都に立ち寄らなければならないという訳だ。
その上僕ははぐれ人である。この世界での身分証明が必要らしく、オ・グーニでの補給も合わせて身分証明が出来る形を整えなければならない。
タラスク様曰く
『『ギルドでギルダーとして登録すれば事は簡単!』』
現代日本に生まれ育った僕からするとそんなに簡単で良いのかと思うけど、今度はアイーシャが「ギルダー登録時に血液をギルダーカードに一滴垂らすとその人の体の中の情報がカードに登録されるので偽造もできないですし、本人以外には使えなくなりますので大丈夫ですよ」と言ってくる。
なるほど。DNA登録なのか。凄いな異世界。
ちなみに、今いる場所からオ・グーニまでは徒歩で一日、オ・グーニから公都フィーゴまでが徒歩で3日、公都からマクサーンまでが徒歩で3日半の道のりらしい。
馬車もあるのだけれど、エルダーがいる為乗るのは難しいだろうとの事。
その後の会話。
『『のう、ユズルよ』』
「なんです?タラスク様」
『『お主の持つスキル等、聞いておきたいことがあるのじゃが・・・』』
「あー、わかりま『『その前にの!』』」
「な、なんです?」
『『お主アイーシャは呼び捨てなのに、なんでわしには【様】付けなんじゃ?』』
・・・は?
「いや、ですがタラスク様は崇め奉られる神代の竜なのでしょう?さすがに敬称を付けないっていうのはいくらなんでも『『嫌じゃ!!』』」
さっきから被せ過ぎだろこの竜様。
『『様付けされるのは嫌いなのじゃ!』』
「いや、そういわれましても・・・呼び捨ては無理でしょうよ・・・」
『『嫌じゃ!!』
「・・・じゃあタラスクさんで」
『『嫌じゃ!!』』
「・・・タラさん」
『『・・・もう一声!!』』
「・・・タラ・・・ちゃん?」
『『それが良い!!』』
・・・てかこの竜、実は日本に来たことあるんじゃね?いや絶対あるだろ!
「わ、分かりました(汗)今後はタラちゃんとお呼びしますね」
『『うむ!それで良い!アイーシャも今後はそう呼ぶ様にの?』』
「えぇ・・・、む、無理ですよぅ」
『『呼ぶように、の?』』
「わ、分かりましたぁ・・・」
呼び方が決まったところで再度タラスク改めタラちゃんが聞いてくる。
『『それはそうとお主のスキルなんじゃがの』』
話を中断したのはあんたじゃないんかい・・・。
「はいはい。スキルでしたよねー」
半ば呆れつつ「サーチ」で所謂ステータス画面の様なものを目の前に開く。
魔力表示の下に「スキル」と記載されている部分をタップ。
「あれ?なんだこれ?」
『『どうしたかの?』』
「いや・・・、ちょっとタラちゃんも見てもらえます?」
スキルの項目には【このファイルは破損しています】という文字が表示されているだけだった。
『『ふむ、やはり普通とは違う呼ばれ方をした所為かのう。いや、はぐれ人ならば常ならざるスキルを持っておるじゃろ、と思っての?気になったんじゃが・・・、これは・・・』』
「問題ですかね?」
『『問題と言えば問題じゃが・・・、ま、大丈夫じゃろ!いずれ解決策も見つかるじゃろ。多分』』
軽いな、おい!しかも多分かよ。
『『はて?魔法の欄にも表示が無い様じゃが、お主さっき魔法を使っておったよの?どういう事じゃ?』』
「ああ、それは・・・」
ペットボトルについて説明すると、タラちゃんは非常に興味深げに『『飲んでみても?』』と聞いてくる。
どうぞと、取り敢えずコーラーを渡すと『『これでわしの力が二倍に。クフフフ』』と嬉しそうに一口飲むタラちゃん。邪悪な笑顔だ。
『『うん?何も起こってない様じゃが・・・』』
タラちゃんには何も起こらない様だ。物は試しとアイーシャにも飲ませてみる。
「何も起こらないですね」
ひょっとしなくてもこの効果は僕にしか効かない様だ。
タラちゃんが疑い深げな眼差しで僕を見るので、コーラーを一口飲んでステータス画面を見せる。
「ほら、魔法の欄見て下さい」
『『おお!本当じゃ!不思議な事じゃが、まあはぐれ人だしの!そんなものじゃ!しかしぬか喜びじゃったのう・・・』』
少しだけしょげているタラちゃんをしり目に僕は荷物を片づける。
聞きたいことや、知りたいことはまだまだある。
だけど異世界にきて一日目、なのに色々あり過ぎた。
もう夜中というより明け方だ。とりあえず寝よう!
****
「さ、寒っ」
9月と言えど高原の朝は冷える。寒さで目を覚ました僕は辺りを見廻す。夜中の出来事が嘘の様な爽やかな朝の匂い、朝露に濡れた植物が日の光に照らされてキラキラと光る。
キャンプならではの朝の風景。サイトを眺めると焚き火の傍でエルダーに包まれて、アイーシャとタラちゃんが寝息を立てている。
二人の上には「ナソガ」の寝袋が掛けられている。撥水加工が施されており、使用快適温度がマイナス20度、別注カラーのイケてるヤツだ。
「あー、あのベージュ色やっぱイケてるね・・・って、あれ僕のじゃないか!」
僕は確かに寝袋にくるまって寝た筈。
それがなんで二人の上に?
「まあいいか。気持ち良さそうに寝てるし」
そう思いながら僕は朝食の準備を始めた。
焚き火の上に五徳を置きフライパンを温める。ベーコンを薄くカットし、その上に卵を乗せる。ベーコンエッグだ。
ちなみに材料はクーラーに入っていた。確認不足だね。慌ててたしね。
他にチーズと食パン、「ハウ・グー」のホットサンドメーカーがあったので朝食のメニューを考えるのは簡単だった。
「ベーコンエッグとチーズのホットサンド」と昨晩のアラビアータをベースに味と見た目を整え直した「ピリ辛ミネストローネ風スープ」だ。
調理をしているとタラちゃんが目を覚ました様で、モゾモゾと寝袋の中で動いている。
「ひゃうっ!」
何故かアイーシャの悲鳴が聞こえる。
「タラちゃん様、そこは、そこは違いますぅ! や! んぅ・・・!」
『『クフフフ、柔らかいのう。クフッ』』
何が違って、何が柔らかいのか・・・。
き、気になる!気になるけど・・・。
「二人とも!朝ごはんですよっ!それと奪った寝袋、ちゃんと畳んでくださいね!?」
「『『はいっ!』』」
3人で朝食を終え『『美味かった!しかし儂もっと肉が食べたいんじゃが』』などとほざく竜様を半眼で睨みながら、サイトを片づける。
道具をザックに詰め込み重くなったそれを背負うと体をひと伸びさせる。
さあ、初の異世界トレッキングだ!
「さて、行きましょうか!二人とも!」
****
オ・グーニへの道を三人と一匹でてくてく歩く。
今歩いている道はフィーゴとブンゴールを結ぶ街道でもあるらしく、そこそこの人とすれ違う。
石畳では無いが程よく整備された歩きやすい道で、ザックの重さも苦にならない。
すれ違う人は皆エルダーに吃驚している様子だ。
タラちゃんに「竜の姿で行けば早いのでは?」と聞くと『『そんなことしたら街道が大騒ぎになるじゃろ?』』と返された。
「ホントは?」と聞き返すと『『めんどくさいだけじゃ。歩くの好きじゃしの!』』とのお返事。「じゃあせめてエルダーを目立たない様に出来ないの?」と聞くと、タラちゃんはエルダーに『『フッ』』っと息を吹きかける。大きかったエルダーがハスキー犬くらいのサイズになった。
『『これでよかろ?』』
駄目竜かと疑っていたがやはり神扱いされる存在なのだろう。サーチ掛けても魔力分かんないし。
初秋の心地よい空気に包まれて街道を歩く。空は青く高く、まさに秋の空といった感じ。
少しずつ色づいている萩の葉や、風に揺れるススキが目に入る。やはり植生は日本に似ている。
ふと思い立ちアイーシャに尋ねる。
「ねえアイーシャ?」
「はい?なんでしょう?ユズル様」
「様は着けなくていいってw」
「・・・ではユズルさんで」
「まあいいか。オ・グーニの町までは歩きっぱなしで一日なのかな?」
あまりにも日本に似ていた為気になる事があったのだ。
「いえ、途中で充分な休憩を挟んでゆっくりいって一日ですよぅ。休憩なしなら半日程度かと」
「そうなの?じゃあさ、この道すがらに温泉・・・、いやお風呂に入れる所ってあったりする?」
「え?なんで分かるんですか?!確かに途中には宿場町があって、地面から湧くお風呂が有名なんですよ。今日は寄る時間がありませんが。さすがユズルさん、そんな事も分かるんですねぇ」
「う、うん。まあね。」
そんなこんなで街道をさらに進むと、どこからか硫黄の匂いが漂ってくる。温泉街独特のあの香りだ。
(お風呂、入りたかったなぁ・・・)
湯気が湧き上がる宿場町を眺めながら、まだ歩く。
都合5時間ほど歩いたところで、下り坂の向こうに、石塀に囲まれた街の姿が見えてきた。
「ユズルさん、タラちゃん様。オ・グーニの町が見えましたよぉ」
その言葉に促されるように門へと進む。
するとアイーシャに気がついたのか、衛兵らしき人がこちらに駆けて来た。
「アイーシャ様!ようやくお戻りですか。領主様が御心配されておりましたよ!行き先も告げずに出かけてはなりません!全く!」
こちらに来た衛兵さんは、袴姿に洋風の革鎧を着けた様な格好の女性だった。
アイーシャが巫女姿に神父の様なガウンを身に着けていた事からも、この世界の一般的な服装なのだと見受けられた。
「ごめんなさい、リゼル。昨日の光が気になっていても経っても居られなかったのですぅ」
「あなたはいつもいつも!毎度のように領主様に呼び出される私の身にもなって下さい!」
「だからごめんなさいって言ってるじゃありませんかぁ!」
「ごめんで済めばいいと思ってるんですか!?今日こそは領主様にきちんと叱ってもらいますからね!」
「え~、嫌ですぅ!」
「嫌ですぅ~じゃありません!」
遺憾、いやいかん、喧嘩が始まってしまった。
これは止めた方が良いかなっと。
『『二人ともそこまでにしておかぬかの?』』
「だって!・・・あ、タラちゃん様・・・」
「ですが! ? お二人は一体?」
『『アイーシャはちと子どもが過ぎるぞ。それとそこの騎士よ。領主に伝えよ』』
『『神代竜タラスクが来てやったと、な?』』
その後、3人?で色々と話した。
まずはマクサーンへ行くルートの選定や備品の調達についてやマクサーン迄の距離やルート選定等。
マクサーンに行くにはまずオ・グーニへと下り、そこで準備した後一度「公都フィーゴ」に立ち寄らなければならないらしい。
巫女であるアイーシャが領地を出るには、自領で承認を得た後公都に赴き、大公様に領地を離れた事を直接報告する義務がある為一度公都に立ち寄らなければならないという訳だ。
その上僕ははぐれ人である。この世界での身分証明が必要らしく、オ・グーニでの補給も合わせて身分証明が出来る形を整えなければならない。
タラスク様曰く
『『ギルドでギルダーとして登録すれば事は簡単!』』
現代日本に生まれ育った僕からするとそんなに簡単で良いのかと思うけど、今度はアイーシャが「ギルダー登録時に血液をギルダーカードに一滴垂らすとその人の体の中の情報がカードに登録されるので偽造もできないですし、本人以外には使えなくなりますので大丈夫ですよ」と言ってくる。
なるほど。DNA登録なのか。凄いな異世界。
ちなみに、今いる場所からオ・グーニまでは徒歩で一日、オ・グーニから公都フィーゴまでが徒歩で3日、公都からマクサーンまでが徒歩で3日半の道のりらしい。
馬車もあるのだけれど、エルダーがいる為乗るのは難しいだろうとの事。
その後の会話。
『『のう、ユズルよ』』
「なんです?タラスク様」
『『お主の持つスキル等、聞いておきたいことがあるのじゃが・・・』』
「あー、わかりま『『その前にの!』』」
「な、なんです?」
『『お主アイーシャは呼び捨てなのに、なんでわしには【様】付けなんじゃ?』』
・・・は?
「いや、ですがタラスク様は崇め奉られる神代の竜なのでしょう?さすがに敬称を付けないっていうのはいくらなんでも『『嫌じゃ!!』』」
さっきから被せ過ぎだろこの竜様。
『『様付けされるのは嫌いなのじゃ!』』
「いや、そういわれましても・・・呼び捨ては無理でしょうよ・・・」
『『嫌じゃ!!』
「・・・じゃあタラスクさんで」
『『嫌じゃ!!』』
「・・・タラさん」
『『・・・もう一声!!』』
「・・・タラ・・・ちゃん?」
『『それが良い!!』』
・・・てかこの竜、実は日本に来たことあるんじゃね?いや絶対あるだろ!
「わ、分かりました(汗)今後はタラちゃんとお呼びしますね」
『『うむ!それで良い!アイーシャも今後はそう呼ぶ様にの?』』
「えぇ・・・、む、無理ですよぅ」
『『呼ぶように、の?』』
「わ、分かりましたぁ・・・」
呼び方が決まったところで再度タラスク改めタラちゃんが聞いてくる。
『『それはそうとお主のスキルなんじゃがの』』
話を中断したのはあんたじゃないんかい・・・。
「はいはい。スキルでしたよねー」
半ば呆れつつ「サーチ」で所謂ステータス画面の様なものを目の前に開く。
魔力表示の下に「スキル」と記載されている部分をタップ。
「あれ?なんだこれ?」
『『どうしたかの?』』
「いや・・・、ちょっとタラちゃんも見てもらえます?」
スキルの項目には【このファイルは破損しています】という文字が表示されているだけだった。
『『ふむ、やはり普通とは違う呼ばれ方をした所為かのう。いや、はぐれ人ならば常ならざるスキルを持っておるじゃろ、と思っての?気になったんじゃが・・・、これは・・・』』
「問題ですかね?」
『『問題と言えば問題じゃが・・・、ま、大丈夫じゃろ!いずれ解決策も見つかるじゃろ。多分』』
軽いな、おい!しかも多分かよ。
『『はて?魔法の欄にも表示が無い様じゃが、お主さっき魔法を使っておったよの?どういう事じゃ?』』
「ああ、それは・・・」
ペットボトルについて説明すると、タラちゃんは非常に興味深げに『『飲んでみても?』』と聞いてくる。
どうぞと、取り敢えずコーラーを渡すと『『これでわしの力が二倍に。クフフフ』』と嬉しそうに一口飲むタラちゃん。邪悪な笑顔だ。
『『うん?何も起こってない様じゃが・・・』』
タラちゃんには何も起こらない様だ。物は試しとアイーシャにも飲ませてみる。
「何も起こらないですね」
ひょっとしなくてもこの効果は僕にしか効かない様だ。
タラちゃんが疑い深げな眼差しで僕を見るので、コーラーを一口飲んでステータス画面を見せる。
「ほら、魔法の欄見て下さい」
『『おお!本当じゃ!不思議な事じゃが、まあはぐれ人だしの!そんなものじゃ!しかしぬか喜びじゃったのう・・・』』
少しだけしょげているタラちゃんをしり目に僕は荷物を片づける。
聞きたいことや、知りたいことはまだまだある。
だけど異世界にきて一日目、なのに色々あり過ぎた。
もう夜中というより明け方だ。とりあえず寝よう!
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「さ、寒っ」
9月と言えど高原の朝は冷える。寒さで目を覚ました僕は辺りを見廻す。夜中の出来事が嘘の様な爽やかな朝の匂い、朝露に濡れた植物が日の光に照らされてキラキラと光る。
キャンプならではの朝の風景。サイトを眺めると焚き火の傍でエルダーに包まれて、アイーシャとタラちゃんが寝息を立てている。
二人の上には「ナソガ」の寝袋が掛けられている。撥水加工が施されており、使用快適温度がマイナス20度、別注カラーのイケてるヤツだ。
「あー、あのベージュ色やっぱイケてるね・・・って、あれ僕のじゃないか!」
僕は確かに寝袋にくるまって寝た筈。
それがなんで二人の上に?
「まあいいか。気持ち良さそうに寝てるし」
そう思いながら僕は朝食の準備を始めた。
焚き火の上に五徳を置きフライパンを温める。ベーコンを薄くカットし、その上に卵を乗せる。ベーコンエッグだ。
ちなみに材料はクーラーに入っていた。確認不足だね。慌ててたしね。
他にチーズと食パン、「ハウ・グー」のホットサンドメーカーがあったので朝食のメニューを考えるのは簡単だった。
「ベーコンエッグとチーズのホットサンド」と昨晩のアラビアータをベースに味と見た目を整え直した「ピリ辛ミネストローネ風スープ」だ。
調理をしているとタラちゃんが目を覚ました様で、モゾモゾと寝袋の中で動いている。
「ひゃうっ!」
何故かアイーシャの悲鳴が聞こえる。
「タラちゃん様、そこは、そこは違いますぅ! や! んぅ・・・!」
『『クフフフ、柔らかいのう。クフッ』』
何が違って、何が柔らかいのか・・・。
き、気になる!気になるけど・・・。
「二人とも!朝ごはんですよっ!それと奪った寝袋、ちゃんと畳んでくださいね!?」
「『『はいっ!』』」
3人で朝食を終え『『美味かった!しかし儂もっと肉が食べたいんじゃが』』などとほざく竜様を半眼で睨みながら、サイトを片づける。
道具をザックに詰め込み重くなったそれを背負うと体をひと伸びさせる。
さあ、初の異世界トレッキングだ!
「さて、行きましょうか!二人とも!」
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オ・グーニへの道を三人と一匹でてくてく歩く。
今歩いている道はフィーゴとブンゴールを結ぶ街道でもあるらしく、そこそこの人とすれ違う。
石畳では無いが程よく整備された歩きやすい道で、ザックの重さも苦にならない。
すれ違う人は皆エルダーに吃驚している様子だ。
タラちゃんに「竜の姿で行けば早いのでは?」と聞くと『『そんなことしたら街道が大騒ぎになるじゃろ?』』と返された。
「ホントは?」と聞き返すと『『めんどくさいだけじゃ。歩くの好きじゃしの!』』とのお返事。「じゃあせめてエルダーを目立たない様に出来ないの?」と聞くと、タラちゃんはエルダーに『『フッ』』っと息を吹きかける。大きかったエルダーがハスキー犬くらいのサイズになった。
『『これでよかろ?』』
駄目竜かと疑っていたがやはり神扱いされる存在なのだろう。サーチ掛けても魔力分かんないし。
初秋の心地よい空気に包まれて街道を歩く。空は青く高く、まさに秋の空といった感じ。
少しずつ色づいている萩の葉や、風に揺れるススキが目に入る。やはり植生は日本に似ている。
ふと思い立ちアイーシャに尋ねる。
「ねえアイーシャ?」
「はい?なんでしょう?ユズル様」
「様は着けなくていいってw」
「・・・ではユズルさんで」
「まあいいか。オ・グーニの町までは歩きっぱなしで一日なのかな?」
あまりにも日本に似ていた為気になる事があったのだ。
「いえ、途中で充分な休憩を挟んでゆっくりいって一日ですよぅ。休憩なしなら半日程度かと」
「そうなの?じゃあさ、この道すがらに温泉・・・、いやお風呂に入れる所ってあったりする?」
「え?なんで分かるんですか?!確かに途中には宿場町があって、地面から湧くお風呂が有名なんですよ。今日は寄る時間がありませんが。さすがユズルさん、そんな事も分かるんですねぇ」
「う、うん。まあね。」
そんなこんなで街道をさらに進むと、どこからか硫黄の匂いが漂ってくる。温泉街独特のあの香りだ。
(お風呂、入りたかったなぁ・・・)
湯気が湧き上がる宿場町を眺めながら、まだ歩く。
都合5時間ほど歩いたところで、下り坂の向こうに、石塀に囲まれた街の姿が見えてきた。
「ユズルさん、タラちゃん様。オ・グーニの町が見えましたよぉ」
その言葉に促されるように門へと進む。
するとアイーシャに気がついたのか、衛兵らしき人がこちらに駆けて来た。
「アイーシャ様!ようやくお戻りですか。領主様が御心配されておりましたよ!行き先も告げずに出かけてはなりません!全く!」
こちらに来た衛兵さんは、袴姿に洋風の革鎧を着けた様な格好の女性だった。
アイーシャが巫女姿に神父の様なガウンを身に着けていた事からも、この世界の一般的な服装なのだと見受けられた。
「ごめんなさい、リゼル。昨日の光が気になっていても経っても居られなかったのですぅ」
「あなたはいつもいつも!毎度のように領主様に呼び出される私の身にもなって下さい!」
「だからごめんなさいって言ってるじゃありませんかぁ!」
「ごめんで済めばいいと思ってるんですか!?今日こそは領主様にきちんと叱ってもらいますからね!」
「え~、嫌ですぅ!」
「嫌ですぅ~じゃありません!」
遺憾、いやいかん、喧嘩が始まってしまった。
これは止めた方が良いかなっと。
『『二人ともそこまでにしておかぬかの?』』
「だって!・・・あ、タラちゃん様・・・」
「ですが! ? お二人は一体?」
『『アイーシャはちと子どもが過ぎるぞ。それとそこの騎士よ。領主に伝えよ』』
『『神代竜タラスクが来てやったと、な?』』
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