信濃の大空

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凱旋

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2航戦が艦載機の収容を済ませたのは、午後3時を回ったころだった。
「艦長、これより帰投したします。到着は午後6時頃になるかと。」
「ありがとう。それで、艦載機はどの程度帰ってきた?」
阿部の質問に副官はすこし顔をこわばらせて言った。
「隼鷹隊は6割弱、大鳳隊は5割強、我々は6割です。」
やはり、敵の対空砲火は厳しかったのだろう。
それでも、よく空母を4隻も沈められたものだ。
阿部は心から搭乗員の腕前に感心した。


「長官!やりました!空母4隻撃沈です!」
小沢はそんな草鹿の歓喜の声を諫めるように言った。
「そのようだな。だが、まだ戦いは終わっていない。それにこちらも1隻撃沈され1隻を大破させられた。今後も厳しい戦いが予想される。慢心だけは無いように。」
「…はっ。」
母港に帰投した小沢は大破している『飛鷹』を湾内に留め置き、内地からの整備要員を待つことにした。


「米軍部隊の投降が完了しました。」
辻村の報告を南雲が安堵した様子で聞いていた。
「無駄な血が流れないのは良いことだ。しかし、戦艦はやはり恐ろしいものだな。
南雲は穴だらけとなった海岸線に目を向ける。
「海岸にいた将兵たちのほとんどが消えていることからも、その威力が分かりますね。」
「全くだ。」
サイパン島上陸作戦は米軍側死傷者42000人、日本軍側死傷者18000人を経て日本軍の勝利に終わった。


マリアナ沖海戦の勝利の報はすぐに国民に知らされた。
『精鋭なる帝国海軍はマリアナ沖にて、敵艦隊と決戦を行いこれを撃破。空母4隻を撃沈せり。』
そんなラジオから流れてくる戦勝の報告を一人小馬鹿にしている軍人がいた。
「いまさら、国民は信じないだろうに…。だがサイパンが落ちなかったことはこれからの戦況に少なからず影響を与えるだろう。」
予備役の身になってから様々なことを学んだ。
そして、先日木戸幸一が話を持ち掛けてきた。
なんでも東条を説得するらしい。
今日がその日だ。
彼はラジオの電源を切り、総理官邸に向かう。
列車をいくらか乗り継ぎ約束の時間20分前に到着した。
「早すぎたか。」
石原は談話室の椅子に腰かけながらぼやいた。
「いや、そんなことはない。」
不意に扉が開き、東条が入ってきた。
「お久しぶりです。東条総理大臣。」
それを聞くと東条は驚いた顔をした。
「君が私に敬語を使うようになるとはどういう風の吹き回しだ?」
「予備役は暇なもので色々と学びましたから。」
「まあいい。それで何の用だ?石原莞爾元中将。」
石原は東条と真正面に向かい合い姿勢を正す。
この戦局を打開するために。
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