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終結
空母鳳炎奮戦記
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連合艦隊は未明に流星329機、風翔改67機が発艦した。
撤退している60隻ほどの艦隊を撃滅するためだった。
すでに重巡以上の艦艇は撃破されており、掃討戦の様相を呈していた。
「見えた!全機突撃!」
笹井は数日前に比べて激減したアメリカ艦隊に降下していく。
弾幕は決して重厚とは言えなかったがそれでも損害は出る。
だが流星は次々と魚雷や徹甲弾を命中させていった。
結果的に58機の流星と5機の風翔改を喪失し、米海軍の駆逐艦32隻軽巡8隻を撃沈しこれでマーシャル沖海戦は終結した。
マーシャル沖海戦に勝利した連合艦隊はトラック泊地に帰港していた。
「これでルーズベルト大統領も交渉の席に着くでしょうか?」
阿部は鳳炎の艦橋で小沢に尋ねた。
「私にも分からんが、ここまで米海軍を徹底的に叩いたのだ。こちらからも譲歩すれば戦争終結も見えてくるだろう。」
事は小沢が言った通りとなった。
太平洋艦隊はほぼ壊滅し日本軍による西海岸上陸が現実を帯びてきたルーズベルトは日本に講和を要請。
1944年3月9日。
講和会議はホノルルで行われた。
これにより日本はハワイより西の諸島を割譲。
アジア一帯に広がっていた欧米の植民地も独立し、ここに中華民国も参加して日本を盟主とする大東亜共栄圏が設立された。
同時にドイツとの同盟関係を断絶し日本は中立国となった。
だが同盟国でなくなっても産業、軍事協力は依然として続いていた。
第2次世界大戦はその後2年続き、ついに1946年7月12日にベルリンがソ連軍によって陥落したのだった。
1956年。
鳳炎の艦長であった阿部はに海軍を退職しゆっくりと余生を過ごしていた。
大東亜戦争後においても日米は幾度も紛争の危機を向かえていた。
その度に鳳炎と鳳水が急行し事態の鎮静化を図った。
その甲斐あって今日になっても日米は戦争状態に陥っていない。
「…暇だ。」
阿部は横になる。
海軍にいたころは忙しかったが、今やっていることと言えば牛乳瓶の配達だけだ。
そうして鳳炎に乗っていたころを懐かしんでいると、不意に文字に書き起こしたくなった。
あのころの忙しさ、悲惨さ、そして乗員たちの日ごろの暮らし。
書きたいことが次々とあふれ出てきた。
いつしか、それは1冊の本ほどの量となっていた。
1957年1月27日。
平岡公威、又の名を三島由紀夫は大成堂の店頭に置かれていた1冊の本を手に取った。
「空母鳳炎奮戦記…か。なかなか面白そうだな。買ってみるか。」
平岡は家に帰って早速読む。
別に文章が上手いわけでもない。
ただ、なぜかその時の情景がありありと伝わってきた。
読み終えた時、平岡はしばらく呆然としていた。
このような経験を平岡は初めて経験した。
撤退している60隻ほどの艦隊を撃滅するためだった。
すでに重巡以上の艦艇は撃破されており、掃討戦の様相を呈していた。
「見えた!全機突撃!」
笹井は数日前に比べて激減したアメリカ艦隊に降下していく。
弾幕は決して重厚とは言えなかったがそれでも損害は出る。
だが流星は次々と魚雷や徹甲弾を命中させていった。
結果的に58機の流星と5機の風翔改を喪失し、米海軍の駆逐艦32隻軽巡8隻を撃沈しこれでマーシャル沖海戦は終結した。
マーシャル沖海戦に勝利した連合艦隊はトラック泊地に帰港していた。
「これでルーズベルト大統領も交渉の席に着くでしょうか?」
阿部は鳳炎の艦橋で小沢に尋ねた。
「私にも分からんが、ここまで米海軍を徹底的に叩いたのだ。こちらからも譲歩すれば戦争終結も見えてくるだろう。」
事は小沢が言った通りとなった。
太平洋艦隊はほぼ壊滅し日本軍による西海岸上陸が現実を帯びてきたルーズベルトは日本に講和を要請。
1944年3月9日。
講和会議はホノルルで行われた。
これにより日本はハワイより西の諸島を割譲。
アジア一帯に広がっていた欧米の植民地も独立し、ここに中華民国も参加して日本を盟主とする大東亜共栄圏が設立された。
同時にドイツとの同盟関係を断絶し日本は中立国となった。
だが同盟国でなくなっても産業、軍事協力は依然として続いていた。
第2次世界大戦はその後2年続き、ついに1946年7月12日にベルリンがソ連軍によって陥落したのだった。
1956年。
鳳炎の艦長であった阿部はに海軍を退職しゆっくりと余生を過ごしていた。
大東亜戦争後においても日米は幾度も紛争の危機を向かえていた。
その度に鳳炎と鳳水が急行し事態の鎮静化を図った。
その甲斐あって今日になっても日米は戦争状態に陥っていない。
「…暇だ。」
阿部は横になる。
海軍にいたころは忙しかったが、今やっていることと言えば牛乳瓶の配達だけだ。
そうして鳳炎に乗っていたころを懐かしんでいると、不意に文字に書き起こしたくなった。
あのころの忙しさ、悲惨さ、そして乗員たちの日ごろの暮らし。
書きたいことが次々とあふれ出てきた。
いつしか、それは1冊の本ほどの量となっていた。
1957年1月27日。
平岡公威、又の名を三島由紀夫は大成堂の店頭に置かれていた1冊の本を手に取った。
「空母鳳炎奮戦記…か。なかなか面白そうだな。買ってみるか。」
平岡は家に帰って早速読む。
別に文章が上手いわけでもない。
ただ、なぜかその時の情景がありありと伝わってきた。
読み終えた時、平岡はしばらく呆然としていた。
このような経験を平岡は初めて経験した。
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