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自分って転生者だったんだ、ってことを知ったのは10歳のときだった。ある日、目覚めた瞬間に記憶が滝のように頭の中で溢れ出したのだ。
そして、それとともに自分が悪役令嬢になる予定だということも知った。
「悪役令嬢(全ルートDEATHエンド(笑))ってなんだよぉ…… マジのクソゲーでしかないじゃん、それもこのゲーム私知らないし…… っ、てか悪役令嬢は改心して逆ハーエンドでの親友に……っていうのが一つくらい残されてるのがセオリーってもんでしょうがっ!」
普通こういうのって、自分が好きなゲームに転生してる!? ってやつじゃないの? どうせなら推してる乙女ゲームの世界線に転生したかったかな、なんて、目の前で憎たらしく浮かんでいるステータスらしきものを睨みつけつつひとりごちた。ふざけんなまじで。これでもオタクだったから乙女ゲーム数十本レベルでやりこんでたんだぞ、それでも知らないマイナーゲームに転生とか聞いたことないわ。
それからしばらく呆然としていると、メイドのレイラが包帯を取り替えに来ました、と救急箱片手に、ベッドの上で座り込んでいる私のもとにやってきた。
「お嬢様! お目覚めなさって安心しました。お怪我の具合はいかがですか?」
「怪我……?」
「お嬢様はお外で遊んでいらっしゃる際に、転んで庭石に頭をぶつけなさって今まで眠っていらしたのです。こめかみから出血していらしたので、その包帯を取り替えなければならないので、よろしいですか?」
「分かり、ました、お願いします」
……この頭の痛み、前世の記憶を取り戻した反動とか、力に目覚める前兆とかのそれっぽい理由じゃなかったのね。確かに庭石でそれはそれは派手に滑って転んで頭を打ったんだということをぼんやりと思い出してすごく恥ずかしくなった。物理かよ。穴があったら埋まりたい。
「終わりましたよ、お嬢様。お大事になさってくださいませ」
顔を手で覆って心のなかで悶えているうちに、レイラは手早く包帯を巻き終えて帰っていった。つらい。
「まぁまぁまぁ。気を取り直そう。うん。まだステータス確認してないし。チート転生って可能性もあるじゃん?」
目の前で依然として浮かんでいるステータスの板(どことなくスマホっぽい)を触ってみる。……お、スワイプできる。
「えーと? ジャネット・リヴィエール10歳、役職は悪役令嬢(笑)。で、詳細?によると享年は17歳ぃ……!? うっそ、あと7年しかないってこと?」
前世は交通事故で17歳で亡くなり、今世も17歳で亡くなる予定とかどんな悪夢なんだよ。転生モノってこう……もっとイージーモードで溺愛、逆ハー、最強チートのオンパレードじゃないの!?
「気を落とすな私。まだスクロールバー残ってるし……」
気合を入れてスクロール。……いやいや、具体的な死に方って何よ。やっぱりハードモードだわこの人生。10%の確率で溺死、20%の確率で刺し違え、70%の確率で処刑って。どんなクソゲーでもこれはない。そもそもこれ乙女ゲームじゃありませんでした? 見た目は確かに乙女ゲーのメイン悪役ってだけあって超絶美人になりそうだけど。銀髪に吊り気味の青目の超美少女とか見た目だけなら最高だけどさぁ!
「いやいやいやいや、これは流石にひどすぎるって。もっと何かあるでしょ、ほら特殊能力とかさ! こういうのってチート能力で回避とかでしょ!? ほんとに見た目だけしかいいとこないじゃん、美人薄命ってこと!?」
さらにスクロール。そして見えたのは、特殊スキルの項目だった。
「……ってなにこれ」
ステータスボード鑑定、うん、これは分かる。今していることだろう。問題はもう一つの方だ。
「フラグ破壊レベル∞……?」
文字をタップしても詳細が出てくることもなく、できるのはその謎の9文字を見つめて首を傾げることくらい。……死に方の詳細を書くくらいならスキル説明くらいしてくれよ……っ! なにこのステータス、主観的で使いにくくてだいぶ勝手な……
本当に怒りしか湧いてこない。
「お、メッセージもある。……どうせろくでもないんだろうな……」
分かっていてもまぁ、見るしかないのでまたスクロール。
「17歳で死ぬのは可哀想なのでどうせならということで同じ17歳つながりで自分が目をかけている世界の悪役令嬢に転生させました。最近娯楽の少ないご時世だったので楽しんで見ておきます。じゃあ、スキルを活用して精々死ぬまで頑張って……? by神?」
は、と乾いた笑いが漏れた。馬鹿にするのも大概にしろよ、と本気で言いたい。なにが娯楽だ、何が精々頑張れだ。なんで死ぬことが決定事項のように話してるんだよ。神だからってなんでもやっていいとかって思わないでくれ、これは倫理観に反してるだろ。
「私の人生はゲームじゃないっての」
何が何でも生き残ってやる。死に怯えながら生きるなんてことはしてやるもんか。娯楽になんてならないような、見ていて悔しくなるほどの幸せな人生を送ってやる。
この瞬間、そう決めた。
そして、それとともに自分が悪役令嬢になる予定だということも知った。
「悪役令嬢(全ルートDEATHエンド(笑))ってなんだよぉ…… マジのクソゲーでしかないじゃん、それもこのゲーム私知らないし…… っ、てか悪役令嬢は改心して逆ハーエンドでの親友に……っていうのが一つくらい残されてるのがセオリーってもんでしょうがっ!」
普通こういうのって、自分が好きなゲームに転生してる!? ってやつじゃないの? どうせなら推してる乙女ゲームの世界線に転生したかったかな、なんて、目の前で憎たらしく浮かんでいるステータスらしきものを睨みつけつつひとりごちた。ふざけんなまじで。これでもオタクだったから乙女ゲーム数十本レベルでやりこんでたんだぞ、それでも知らないマイナーゲームに転生とか聞いたことないわ。
それからしばらく呆然としていると、メイドのレイラが包帯を取り替えに来ました、と救急箱片手に、ベッドの上で座り込んでいる私のもとにやってきた。
「お嬢様! お目覚めなさって安心しました。お怪我の具合はいかがですか?」
「怪我……?」
「お嬢様はお外で遊んでいらっしゃる際に、転んで庭石に頭をぶつけなさって今まで眠っていらしたのです。こめかみから出血していらしたので、その包帯を取り替えなければならないので、よろしいですか?」
「分かり、ました、お願いします」
……この頭の痛み、前世の記憶を取り戻した反動とか、力に目覚める前兆とかのそれっぽい理由じゃなかったのね。確かに庭石でそれはそれは派手に滑って転んで頭を打ったんだということをぼんやりと思い出してすごく恥ずかしくなった。物理かよ。穴があったら埋まりたい。
「終わりましたよ、お嬢様。お大事になさってくださいませ」
顔を手で覆って心のなかで悶えているうちに、レイラは手早く包帯を巻き終えて帰っていった。つらい。
「まぁまぁまぁ。気を取り直そう。うん。まだステータス確認してないし。チート転生って可能性もあるじゃん?」
目の前で依然として浮かんでいるステータスの板(どことなくスマホっぽい)を触ってみる。……お、スワイプできる。
「えーと? ジャネット・リヴィエール10歳、役職は悪役令嬢(笑)。で、詳細?によると享年は17歳ぃ……!? うっそ、あと7年しかないってこと?」
前世は交通事故で17歳で亡くなり、今世も17歳で亡くなる予定とかどんな悪夢なんだよ。転生モノってこう……もっとイージーモードで溺愛、逆ハー、最強チートのオンパレードじゃないの!?
「気を落とすな私。まだスクロールバー残ってるし……」
気合を入れてスクロール。……いやいや、具体的な死に方って何よ。やっぱりハードモードだわこの人生。10%の確率で溺死、20%の確率で刺し違え、70%の確率で処刑って。どんなクソゲーでもこれはない。そもそもこれ乙女ゲームじゃありませんでした? 見た目は確かに乙女ゲーのメイン悪役ってだけあって超絶美人になりそうだけど。銀髪に吊り気味の青目の超美少女とか見た目だけなら最高だけどさぁ!
「いやいやいやいや、これは流石にひどすぎるって。もっと何かあるでしょ、ほら特殊能力とかさ! こういうのってチート能力で回避とかでしょ!? ほんとに見た目だけしかいいとこないじゃん、美人薄命ってこと!?」
さらにスクロール。そして見えたのは、特殊スキルの項目だった。
「……ってなにこれ」
ステータスボード鑑定、うん、これは分かる。今していることだろう。問題はもう一つの方だ。
「フラグ破壊レベル∞……?」
文字をタップしても詳細が出てくることもなく、できるのはその謎の9文字を見つめて首を傾げることくらい。……死に方の詳細を書くくらいならスキル説明くらいしてくれよ……っ! なにこのステータス、主観的で使いにくくてだいぶ勝手な……
本当に怒りしか湧いてこない。
「お、メッセージもある。……どうせろくでもないんだろうな……」
分かっていてもまぁ、見るしかないのでまたスクロール。
「17歳で死ぬのは可哀想なのでどうせならということで同じ17歳つながりで自分が目をかけている世界の悪役令嬢に転生させました。最近娯楽の少ないご時世だったので楽しんで見ておきます。じゃあ、スキルを活用して精々死ぬまで頑張って……? by神?」
は、と乾いた笑いが漏れた。馬鹿にするのも大概にしろよ、と本気で言いたい。なにが娯楽だ、何が精々頑張れだ。なんで死ぬことが決定事項のように話してるんだよ。神だからってなんでもやっていいとかって思わないでくれ、これは倫理観に反してるだろ。
「私の人生はゲームじゃないっての」
何が何でも生き残ってやる。死に怯えながら生きるなんてことはしてやるもんか。娯楽になんてならないような、見ていて悔しくなるほどの幸せな人生を送ってやる。
この瞬間、そう決めた。
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