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そして翌朝。この10歳の体はたぶん弱っちいかと思われるので、昨晩は動き回るのは断念してごはんだけ食べて早く寝たのだ。ちなみに怪我で倒れていたせいでそこまで美味しくもない病院食みたいなおかゆもどきが出てきた。泣きたい。それも味付けは一切なかった。とてもとても梅干しが恋しくなった。死亡エンドさえ回避できたら絶対にふりかけとお茶漬けを作ってやると決心した。なるほど、転生者がご飯ばっかり改革していくのも分かったわ、他の何より耐えられないからだ。まぁ、それはともかく、私にはやるべきことがまだまだ山積みだ。
「とりあえず探索だよねこういうのは」
やるべきことは3つ。一つはもちろんヒロインの特定。近寄らない、会ったときは友好的に、そして絶対にいじめない。悪役令嬢転生の三ヶ条だと個人的には思っている。これで処刑されたらどんな原作補正だよって話でしょ。そしてもう一つは攻略対象の方の特定。これも大事。関わるが最後罪をなすりつけられるんだよ。知ってる、定番だよね。
そしてなにより今の最優先はこれ。フラグ破壊レベル∞とかいう意味不スキルの内容特定だ。そしてこれはこの部屋の中でじっとしていても始まらない。実際、昨日色々寝る前に試してみたけど(手を振ってみたり、スキル名を唱えてみたり)何も起こらなかった。だからこそ探索なのだ。
「よぉし」
そしてドアノブに手をかけて外に出た。頭に包帯をつけているので外で掃除をしていたメイドには目を丸くさせて驚かれたが、何も気づいていない無邪気な遊び盛りの幼女のふりをしてぱたぱたと走って逃げた。確信犯である。うん、申し訳ないけど背に腹は代えられないんだ。
「……ぜんっぜん何も見つからないんだけど」
ステータスボードに関しては昨日寝る前に軽く試したところ、出てこい、消えろ、とか頭の中で意識して唱えると出したり消したりできた。なるほど、最初に出てきたのはあのムカつく神の多少のリップサービスといったところか。
と、いうことは、このフラグスキル、ステータスボードと同じでなにか発動条件があるとか? ……ん? そうだったらだいぶ無理ゲーじゃない? いやもともとそうだったけども。使えないスキルとか意味なさすぎるじゃん。
「おねーさま?」
と、毒づいていたところで後ろから鈴を転がしたような舌っ足らずの可愛らしい声が。弟だ。
「あぁ、カイル。少しお散歩に行っていたの。怪我したからそのリハビリってところよ」
ふわっふわの栗色の髪がくるくるぴょんぴょん跳ねていて、目は私よりも深い青で宝石みたいにキラキラしている。え、私の弟マジ可愛い。2歳違うだけでこうも変わるかってくらい可愛い。ショタが前の世界で人気だった理由が分かった気がする。これはかわいい。世界を救えるくらいにはかわいい。前世を思い出す前はこの子があまりに可愛がられていてすごく嫉妬していて毛嫌いしていたみたいだけど全然そんなこと欠片も思うことなくとにかく可愛い。貢ぎたいくらい。そりゃ両親も可愛がるわ、かわいいもん。ちょっと転生してきて良かったかもって思えたくらいに嬉しい。……ん? それにしてもなんで毛嫌いするところまでいったんだろ。
と、考えたところで一つの考えに至る。
「あー、やっぱり……」
「どうしたの、おねーさま?」
「なんでもないのよ、少し思い出したことがあっただけ」
ステータスボードを確認したら分かったことがある。思ったとおりだった。……なるほど血が繋がってなかったのか。うん納得。義理の弟だってこと知らされてなかったけど、ある日それを知っていじめに繋がって断罪ルートってところか。ありがちだね。
「おねーさまと一緒にお散歩行ってもいい?」
「もちろんいいわよ」
そう言ったところで、ピコン、と電子音が頭の中で鳴った。……え? ふと周りを見回すと、弟の頭の上に黄色いフラグが。ちっちゃい三角のカラーガードみたいなやつ。……ん? フラグ!?
つい声が出てしまいそうになったのを手で抑える。……もしかしてこれ? フラグ破壊レベル∞って……
じいっと見つめていると、フラグがぽわぽわ上下に揺れ動き、ピコン、と再び軽快な音を立てた。そして今度はステータスボードの仲間のような文字の書かれた薄い板がフラグの上に更に現れる。――え、階段から転げ落ちて全治1ヶ月の大怪我? この可愛い可愛い弟に? 大怪我? そんなのさせてたまるか。
「ちょ、カイル、動かないでね」
「ん、わかった。でもなんで?」
「なんでも。ごめんね、ちょっと待ってね」
でもこのフラグってどうやったら取り除けるの? 私が抱き上げて階段を降りるとか? フラグ破壊っていうくらいだからなにかできるとは思うんだけど。
うーん、と腕組みで考え込むけど結論は出ず。とりあえず、フラグに触れた。そう、つんと。人差し指で軽く触れた。
「うわぉ」
すると漫画さながらのエフェクトとともに、フラグが散り散りに砕け散った。砕けたというより爆散と言ったほうが正しいかもしれない。……え、破壊って物理? 物理的に壊すってことだったの?
転生者が貰うスキルの割に常識外れで意味がわからない、役立つかもわからないスキルだな。それも物理的破壊ってゴリラかよ。純粋な身体強化とかの実質的ゴリラのほうがマシだったかもしれないと思うくらい使い道が謎だ。
そんなやさぐれた気持ちで心のなかで毒を吐きつつ、弟の手を取って玄関へと一緒に歩いていく。
「なんだったの、おねーさま?」
「……んーと、あーっとね、そう! 虫! 虫が頭についてたのよ!」
「なぁんだ、虫ぐらいなら自分でとったのに。でもありがと、おねーさま」
……まぁ、可愛い弟の笑顔が見れたならよしとするか。
「とりあえず探索だよねこういうのは」
やるべきことは3つ。一つはもちろんヒロインの特定。近寄らない、会ったときは友好的に、そして絶対にいじめない。悪役令嬢転生の三ヶ条だと個人的には思っている。これで処刑されたらどんな原作補正だよって話でしょ。そしてもう一つは攻略対象の方の特定。これも大事。関わるが最後罪をなすりつけられるんだよ。知ってる、定番だよね。
そしてなにより今の最優先はこれ。フラグ破壊レベル∞とかいう意味不スキルの内容特定だ。そしてこれはこの部屋の中でじっとしていても始まらない。実際、昨日色々寝る前に試してみたけど(手を振ってみたり、スキル名を唱えてみたり)何も起こらなかった。だからこそ探索なのだ。
「よぉし」
そしてドアノブに手をかけて外に出た。頭に包帯をつけているので外で掃除をしていたメイドには目を丸くさせて驚かれたが、何も気づいていない無邪気な遊び盛りの幼女のふりをしてぱたぱたと走って逃げた。確信犯である。うん、申し訳ないけど背に腹は代えられないんだ。
「……ぜんっぜん何も見つからないんだけど」
ステータスボードに関しては昨日寝る前に軽く試したところ、出てこい、消えろ、とか頭の中で意識して唱えると出したり消したりできた。なるほど、最初に出てきたのはあのムカつく神の多少のリップサービスといったところか。
と、いうことは、このフラグスキル、ステータスボードと同じでなにか発動条件があるとか? ……ん? そうだったらだいぶ無理ゲーじゃない? いやもともとそうだったけども。使えないスキルとか意味なさすぎるじゃん。
「おねーさま?」
と、毒づいていたところで後ろから鈴を転がしたような舌っ足らずの可愛らしい声が。弟だ。
「あぁ、カイル。少しお散歩に行っていたの。怪我したからそのリハビリってところよ」
ふわっふわの栗色の髪がくるくるぴょんぴょん跳ねていて、目は私よりも深い青で宝石みたいにキラキラしている。え、私の弟マジ可愛い。2歳違うだけでこうも変わるかってくらい可愛い。ショタが前の世界で人気だった理由が分かった気がする。これはかわいい。世界を救えるくらいにはかわいい。前世を思い出す前はこの子があまりに可愛がられていてすごく嫉妬していて毛嫌いしていたみたいだけど全然そんなこと欠片も思うことなくとにかく可愛い。貢ぎたいくらい。そりゃ両親も可愛がるわ、かわいいもん。ちょっと転生してきて良かったかもって思えたくらいに嬉しい。……ん? それにしてもなんで毛嫌いするところまでいったんだろ。
と、考えたところで一つの考えに至る。
「あー、やっぱり……」
「どうしたの、おねーさま?」
「なんでもないのよ、少し思い出したことがあっただけ」
ステータスボードを確認したら分かったことがある。思ったとおりだった。……なるほど血が繋がってなかったのか。うん納得。義理の弟だってこと知らされてなかったけど、ある日それを知っていじめに繋がって断罪ルートってところか。ありがちだね。
「おねーさまと一緒にお散歩行ってもいい?」
「もちろんいいわよ」
そう言ったところで、ピコン、と電子音が頭の中で鳴った。……え? ふと周りを見回すと、弟の頭の上に黄色いフラグが。ちっちゃい三角のカラーガードみたいなやつ。……ん? フラグ!?
つい声が出てしまいそうになったのを手で抑える。……もしかしてこれ? フラグ破壊レベル∞って……
じいっと見つめていると、フラグがぽわぽわ上下に揺れ動き、ピコン、と再び軽快な音を立てた。そして今度はステータスボードの仲間のような文字の書かれた薄い板がフラグの上に更に現れる。――え、階段から転げ落ちて全治1ヶ月の大怪我? この可愛い可愛い弟に? 大怪我? そんなのさせてたまるか。
「ちょ、カイル、動かないでね」
「ん、わかった。でもなんで?」
「なんでも。ごめんね、ちょっと待ってね」
でもこのフラグってどうやったら取り除けるの? 私が抱き上げて階段を降りるとか? フラグ破壊っていうくらいだからなにかできるとは思うんだけど。
うーん、と腕組みで考え込むけど結論は出ず。とりあえず、フラグに触れた。そう、つんと。人差し指で軽く触れた。
「うわぉ」
すると漫画さながらのエフェクトとともに、フラグが散り散りに砕け散った。砕けたというより爆散と言ったほうが正しいかもしれない。……え、破壊って物理? 物理的に壊すってことだったの?
転生者が貰うスキルの割に常識外れで意味がわからない、役立つかもわからないスキルだな。それも物理的破壊ってゴリラかよ。純粋な身体強化とかの実質的ゴリラのほうがマシだったかもしれないと思うくらい使い道が謎だ。
そんなやさぐれた気持ちで心のなかで毒を吐きつつ、弟の手を取って玄関へと一緒に歩いていく。
「なんだったの、おねーさま?」
「……んーと、あーっとね、そう! 虫! 虫が頭についてたのよ!」
「なぁんだ、虫ぐらいなら自分でとったのに。でもありがと、おねーさま」
……まぁ、可愛い弟の笑顔が見れたならよしとするか。
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