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叶わない恋の物語
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「恭弥、今からちょっと、外に出ない?」
流華が突然そんな提案をする。
時刻はAM1:00
こんな夜中に何処へ行くって言うんだ?
しかもこんな話しの途中で。
「恭弥、早く着替えてきて。」
流華が俺を急かしてくるので、俺は仕方なく部屋着から着替えて、またリビングに降りて行く。
リビングには流華がいて、
「お待たせ。」
と声をかけると、「行こう!」と言って2人で玄関を出る。
流華が何処に行こうとしているのか、俺には全然見当もつかなかった。
流華は、早足で夜の住宅街を抜けて行く。
「流華!ねえ流華!」
俺が呼んでも振り返りもしない。
俺はだんだん不安になってきた。
流華はそのまま新宿の駅の方まで歩いてきた。
こんな夜中でも人が多い。
ネオンと、ビルの明かりが眩しくて俺は目を細める。
暗い部屋でいきなり明かりをつけられた気分だった。
流華は新宿の雑居ビルの1つに入っていく。
ボロいビルで廃墟のようだった。流華はそのビルの外階段を上がっていく。
仕方ないので俺も後をついて行く。
何階、階段を上るつもりなのか、俺は息が切れてきた。
流華はそんな事なんか全然気にせずに、どんどん階段を登っていく。
結局、流華は屋上まで上がって行った。
立ち入り禁止の看板が掲げてあるが、流華は気にせず跨いで中に入る。
屋上に登ると、そこは開けていて、新宿の夜景が見れた。
俺は息を切らしながら流華に尋ねる。
「流華、どうしたの?何ここ。夜景が見たかったの?」
流華は何故かちっとも息を切らさず、俺の方を見て言う。
「6月の始め。恭弥と初めて会った日、私はここに来たの。」
流華がそう話し始める。
「東北から上京して出てきたって事?」
流華が首を振る。
「私の出身は東京都よ。」
「え?そうなの?あれ?東北って言ってなかった?」
俺が不思議に思って聞き返す。
確か前に東北だって言ってたよな。
あんまり人がいない場所だって。
「あれは嘘よ。私は東京都品川区出身。」
「品川なの?」
俺はなんで今更流華が出身の話しをするのかわからなかった。
けど流華は、自分が何者であるかを俺に教えようとしてるんだと思った。
「でも、今の品川じゃない。」
「今の品川じゃない?」
流華が俺の顔を見つめている。
こんな時なのに、流華の顔が恐ろしいくらい綺麗だなと俺は思う。神様が綺麗に丁寧に作り上げたような顔みたいだ。
「私が生まれたのは、2024年より少し先の未来よ。私は未来から来たの。」
遠くでトラックのクラクションの音が鳴っている。
その音で俺は現実に引き戻される。
未来から来た。
そんな事言われて、すぐに、まともに信じる人間がいるだろうか。
冗談だろって思うのが普通だ。
けれど、流華のその美しい顔を見ていると、それが嘘なんかじゃないと思えてしまうのだ。
「未来?から?」
俺がかろうじて流華に聞き返す。
「未来。今より先の東京よ。私の言ってる事信じられる?」
流華が言う。
わからない。俺は自分の頭で使えるだけの思考を使って考えてもわからなかった。
そんな事がありえるのか?
自分に何度も問いただす。出会った時から疑問だった。流華の醸し出す雰囲気、不思議な超能力、身体能力、俺の中にある普通を超えていると思っていた。
それでも、未来から来たと言って、はいそうですね。と言って、簡単に信じられるかと言ったら難しい。
俺が1人で、何も言えずに悩んでいると流華が笑って言う。
「恭弥、頭で考えてもきっとわからないと思う。こっちへ来て。」
と俺の手を取る。
俺は言われるがまま、流華についていく。
流華はそのまま、屋上のフェンスの方へ連れていく。
フェンスが壊れて外れている箇所が1っ箇所あった。
(危ないな)
俺はそう思ったが、流華はどんどんその壊れてフェンスがない所へ歩いていく。
「流華、何するの!危ないよ!」
俺はビビって流華に言う。
1歩行けば真っ逆さま、この高さじゃ、助かる事はないだろう。
新宿の夜の明かりが綺麗に煌めいている。こんなに綺麗だったんだな、と俺は見慣れた新宿の夜景を見て思う。
色とりどりの明かりが煌めき、宝石のように1つ1つが強烈な光を放つ。
その中に、1つ1つ人が生きている光が見える気がした。
そんな事を呑気に考えていると、手を繋いでいる流華が俺の方を見て言う。
「恭弥、飛ぶよ。」
俺は何も言う間もなく、流華と一緒に夜の新宿の夜景の中へ落ちていった。
流華が突然そんな提案をする。
時刻はAM1:00
こんな夜中に何処へ行くって言うんだ?
しかもこんな話しの途中で。
「恭弥、早く着替えてきて。」
流華が俺を急かしてくるので、俺は仕方なく部屋着から着替えて、またリビングに降りて行く。
リビングには流華がいて、
「お待たせ。」
と声をかけると、「行こう!」と言って2人で玄関を出る。
流華が何処に行こうとしているのか、俺には全然見当もつかなかった。
流華は、早足で夜の住宅街を抜けて行く。
「流華!ねえ流華!」
俺が呼んでも振り返りもしない。
俺はだんだん不安になってきた。
流華はそのまま新宿の駅の方まで歩いてきた。
こんな夜中でも人が多い。
ネオンと、ビルの明かりが眩しくて俺は目を細める。
暗い部屋でいきなり明かりをつけられた気分だった。
流華は新宿の雑居ビルの1つに入っていく。
ボロいビルで廃墟のようだった。流華はそのビルの外階段を上がっていく。
仕方ないので俺も後をついて行く。
何階、階段を上るつもりなのか、俺は息が切れてきた。
流華はそんな事なんか全然気にせずに、どんどん階段を登っていく。
結局、流華は屋上まで上がって行った。
立ち入り禁止の看板が掲げてあるが、流華は気にせず跨いで中に入る。
屋上に登ると、そこは開けていて、新宿の夜景が見れた。
俺は息を切らしながら流華に尋ねる。
「流華、どうしたの?何ここ。夜景が見たかったの?」
流華は何故かちっとも息を切らさず、俺の方を見て言う。
「6月の始め。恭弥と初めて会った日、私はここに来たの。」
流華がそう話し始める。
「東北から上京して出てきたって事?」
流華が首を振る。
「私の出身は東京都よ。」
「え?そうなの?あれ?東北って言ってなかった?」
俺が不思議に思って聞き返す。
確か前に東北だって言ってたよな。
あんまり人がいない場所だって。
「あれは嘘よ。私は東京都品川区出身。」
「品川なの?」
俺はなんで今更流華が出身の話しをするのかわからなかった。
けど流華は、自分が何者であるかを俺に教えようとしてるんだと思った。
「でも、今の品川じゃない。」
「今の品川じゃない?」
流華が俺の顔を見つめている。
こんな時なのに、流華の顔が恐ろしいくらい綺麗だなと俺は思う。神様が綺麗に丁寧に作り上げたような顔みたいだ。
「私が生まれたのは、2024年より少し先の未来よ。私は未来から来たの。」
遠くでトラックのクラクションの音が鳴っている。
その音で俺は現実に引き戻される。
未来から来た。
そんな事言われて、すぐに、まともに信じる人間がいるだろうか。
冗談だろって思うのが普通だ。
けれど、流華のその美しい顔を見ていると、それが嘘なんかじゃないと思えてしまうのだ。
「未来?から?」
俺がかろうじて流華に聞き返す。
「未来。今より先の東京よ。私の言ってる事信じられる?」
流華が言う。
わからない。俺は自分の頭で使えるだけの思考を使って考えてもわからなかった。
そんな事がありえるのか?
自分に何度も問いただす。出会った時から疑問だった。流華の醸し出す雰囲気、不思議な超能力、身体能力、俺の中にある普通を超えていると思っていた。
それでも、未来から来たと言って、はいそうですね。と言って、簡単に信じられるかと言ったら難しい。
俺が1人で、何も言えずに悩んでいると流華が笑って言う。
「恭弥、頭で考えてもきっとわからないと思う。こっちへ来て。」
と俺の手を取る。
俺は言われるがまま、流華についていく。
流華はそのまま、屋上のフェンスの方へ連れていく。
フェンスが壊れて外れている箇所が1っ箇所あった。
(危ないな)
俺はそう思ったが、流華はどんどんその壊れてフェンスがない所へ歩いていく。
「流華、何するの!危ないよ!」
俺はビビって流華に言う。
1歩行けば真っ逆さま、この高さじゃ、助かる事はないだろう。
新宿の夜の明かりが綺麗に煌めいている。こんなに綺麗だったんだな、と俺は見慣れた新宿の夜景を見て思う。
色とりどりの明かりが煌めき、宝石のように1つ1つが強烈な光を放つ。
その中に、1つ1つ人が生きている光が見える気がした。
そんな事を呑気に考えていると、手を繋いでいる流華が俺の方を見て言う。
「恭弥、飛ぶよ。」
俺は何も言う間もなく、流華と一緒に夜の新宿の夜景の中へ落ちていった。
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