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俺と流華は、西新宿にあるホテルまで走った。
「恭弥、これからどうするの?」
「浮気調査。うち、基本浮気調査ばっかりだからね。第一対象者が、今日このホテルで第二対象者、つまり浮気相手と昼休みに会う予定なんだよ。」
昼休みに、わざわざこんな高級ホテルを取るなんて、流石ベンチャー企業の社長だ。
「じゃあその2人が外に出てきた所を写真に撮るって事?」
「その通り、このビデオカメラでおさめるんだよ。」
そう言って俺は叔父から預かったビデオカメラをバッグから取り出して流華に見せる。
「そんないかにも、カメラですって感じの大きなカメラでばれないの?」
「それが意外にもばれないんだよ。不倫中って、お互いの世界だけで、自分達の事しか見えてないんだよきっと。」
俺がそう言うと、流華は納得したように
「そうなんだ。」
と一言つぶやいた。
「きたきた!あいつだ!」
俺は写真で対象者の顔を確認済みだったので、すぐにわかった。
ホテルのロビーを足早に入ってくる。
見ただけで高価なスーツだとわかる。海外一流ブランドのボストンバッグを持ち、時計などつけているものも、高価な物に間違いない。
あのバック、プレミアついて値が上がってるってネットで見たな。
何百万するんだろう、、、。
『モテるだろうな。』
それが俺の第一の感想だった。
30代半ばだが、顔もなかなかのイケメンだ。これが金を持っているならモテないわけがないと思った。
女が嫌でも寄ってきそうだ。浮気の1つや2つしていても仕方ないだろうなと思った。
奥さんからして見れば溜まったもんじゃないだろうが、結婚する時にわからなかったもんかね、と思いながらビデオカメラをまわす。
残念ながら、第二対象者は現れない。
もう既に、部屋に行ってしまったのか?
出てくる時にツーショットを狙うしかないかもなと思っていると、流華がどんどん第一対象者について行く。
「流華何してるの?」
慌てて俺が呼び止めると
「部屋まで行けば、浮気相手が部屋から出てくるかもよ?」
と言ってどんどんついていく。
「バレたら危ないって!ロビーのエレベーター前で出待ちしよう。ちょうど、ティールームもあるし。」
と言っても流華は全然聞かずについて行ってしまう。
むしろ俺に向かって手招きしている。
「流華、だめだって!見つかるぞ!」
俺がそう言うと、流華は返事もせずに
「10階で降りたみたい。よし10階へ行こう。」
と全然話しを聞いてない。
「まずいって、尾行がばれたら、おじさんにぶちぎれられるよ~」
俺が嘆くと、流華は
「別に怒られるくらい大丈夫だって。そんなのいちいち気にしても仕方ないって。」
と言って、隣のエレベーターに乗り込む。エレベーターから降りると、第一対象者が真っ直ぐな廊下を歩いている姿を見る事ができる。
廊下は途中で曲がっていて、対象者の姿が見えなくなる。
「いそいで!」
流華がそう言って廊下を足音立てずに走っていく。
廊下の曲がり角を曲がると、第一対象者がホテルの部屋へ入って行く所だった。
中に人がいるかどうかもわからない。
「ほら、ここじゃ人目につくし、ツーショットは撮れないって、下に戻ろう。」
俺がそう、促しても彼女は動こうとしない。
「ちょっと待って!もう少しここではろう。」
そう言って待ってると、第一対象者の斜め前の部屋から1人の男が出てきた。
見た目はエリートサラリーマンといった風貌で、年齢はまだ若い。20代くらいだろうか。
そのエリートサラリーマンが第一対象者の部屋のチャイムを鳴らして部屋に入って行く。
流華がすかさず俺に言う。
「カメラはやくまわして!」
俺は、訳が分からず言われたままカメラをまわす。
「え?何なの?なんでカメラ回す必要ある?会社の部下かもよ?まさか、あの若いサラリーマンが浮気相手ではないでしょ?」
俺が言うと流華は
「さあ?それはわからないけど。
バイって言う選択肢もあるしね?
人によって、性の対象は色々だから。」
と言う。
でも事前に調査書でみた、浮気相手はなかなかの美人な女性だったはずだ。
まさか、あの若い男ともなんて考えずらい。
そうしている間にさっき入っていった、あの若いサラリーマンが、第一対象者の部屋から出てきた。
時間にしたら5分くらいしか部屋に居なかったと思う。
「出てきた!」
「はやく!カメラ!」
俺は流華に言われて、カメラを回す。
何で俺が指示出される側なのかわからないが、別に嫌な気にはならなかった。
若いサラリーマンは、部屋から出てきて、また自分の部屋に戻った。
「どうゆう事だろう?今の数分で何してたんだろう?」
俺が言うと、流華はじっとエリートサラリーマンが入っていった部屋のドアを眺めている。
「また、すぐ出てくるから、そしたら私は、あの若いサラリーマンの後を追うから、恭弥は下のティールームで第一対象者が出てくるのを待ってて!」
「追うってなんで?」
俺は流華が言ってる意味がさっぱりわからない。
そしたら、流華の言った通りすぐにエリートサラリーマンが出てきた。
「きたきたきた!見つかるから、エレベーターホールまで戻るよ!」
流華が言う。
「ちょっと待って!なんであのサラリーマン追う必要があるの?浮気と何か関係あるわけ?よくわかんないけど、流華が1人で追うとか危なくない?」
俺が言うと、
「いいから!恭弥は私の言う事聞いてティールームで待ってて。」
俺は流華の切れ長の綺麗な目で睨まれると「はい。」としか言えない。
惚れた弱味だろうか?全く逆らえる気がしない。
俺は仕方なく言われた通りにエレベーター前のティールームに行く。
流華はそのまま、サラリーマンを追って行く。
「流華気をつけて!」
と俺が声をかけると、
「誰だと思ってるの?」
と美しい笑顔を振りまいて歩いていく。その笑顔に俺はまたぼうっとなる。
何なんだろう、この胸の高鳴りは。
彼女の笑顔を見れただけで、俺は天にまで昇る気持ちになる。
今までだって、恋愛はしてきたが、こんなに胸を揺さぶられる経験は初めてだ。
しかし、流華はなんであのサラリーマンを追っていったのだろう?
浮気の証拠を掴むのに全く関係ないと思うんだけど、、、。
変わった子だなと思う。
俺はティールームでひたすら第一対象者を待った。コーヒー1杯でだいぶ粘る。
時間を見ると1時間は経っていた。
流華も何故か帰ってこない。
俺はだんだん不安になってくる。
一体大丈夫なのか。危ない事をしてなきゃいいが、朝の痴漢を捕まえていた流華を思い出すと、かなり護身術には長けていそうだが。
それでも流石にあんな若い男に敵うはずはないだろう。
そんな事を1人考えていると、エレベーターから第一対象者が降りてきた。
しかも第二対象者と一緒だ。
「なんて、ラッキーなんだ。」
俺は心の中で呟く。
まだ第一対象者をはって数日だ。
数日でこんなチャンスなかなかない。
俺はティールームから、すぐにビデオカメラを回す。
ばっちり2人の姿を映す。2人は腕なんか組んで完全にリラックスしている。
まさか狙われているなんて夢にも思っていないんだろう。
よし、この動画を編集して今日の仕事は終わりか。
と思った瞬間。
第一対象者がロビーの受付でルームキーを返して出口に向かって歩き始めた時だった。
第一対象者の後ろにいつのまにか流華がいた。
「あれ?なんであんな所に流華が?いつのまに?」
俺が思わず呟くと、流華は第一対象者の持っている鞄に向かって見事な足蹴りをした。
えっーー
えーーーーー!!!!
「恭弥、これからどうするの?」
「浮気調査。うち、基本浮気調査ばっかりだからね。第一対象者が、今日このホテルで第二対象者、つまり浮気相手と昼休みに会う予定なんだよ。」
昼休みに、わざわざこんな高級ホテルを取るなんて、流石ベンチャー企業の社長だ。
「じゃあその2人が外に出てきた所を写真に撮るって事?」
「その通り、このビデオカメラでおさめるんだよ。」
そう言って俺は叔父から預かったビデオカメラをバッグから取り出して流華に見せる。
「そんないかにも、カメラですって感じの大きなカメラでばれないの?」
「それが意外にもばれないんだよ。不倫中って、お互いの世界だけで、自分達の事しか見えてないんだよきっと。」
俺がそう言うと、流華は納得したように
「そうなんだ。」
と一言つぶやいた。
「きたきた!あいつだ!」
俺は写真で対象者の顔を確認済みだったので、すぐにわかった。
ホテルのロビーを足早に入ってくる。
見ただけで高価なスーツだとわかる。海外一流ブランドのボストンバッグを持ち、時計などつけているものも、高価な物に間違いない。
あのバック、プレミアついて値が上がってるってネットで見たな。
何百万するんだろう、、、。
『モテるだろうな。』
それが俺の第一の感想だった。
30代半ばだが、顔もなかなかのイケメンだ。これが金を持っているならモテないわけがないと思った。
女が嫌でも寄ってきそうだ。浮気の1つや2つしていても仕方ないだろうなと思った。
奥さんからして見れば溜まったもんじゃないだろうが、結婚する時にわからなかったもんかね、と思いながらビデオカメラをまわす。
残念ながら、第二対象者は現れない。
もう既に、部屋に行ってしまったのか?
出てくる時にツーショットを狙うしかないかもなと思っていると、流華がどんどん第一対象者について行く。
「流華何してるの?」
慌てて俺が呼び止めると
「部屋まで行けば、浮気相手が部屋から出てくるかもよ?」
と言ってどんどんついていく。
「バレたら危ないって!ロビーのエレベーター前で出待ちしよう。ちょうど、ティールームもあるし。」
と言っても流華は全然聞かずについて行ってしまう。
むしろ俺に向かって手招きしている。
「流華、だめだって!見つかるぞ!」
俺がそう言うと、流華は返事もせずに
「10階で降りたみたい。よし10階へ行こう。」
と全然話しを聞いてない。
「まずいって、尾行がばれたら、おじさんにぶちぎれられるよ~」
俺が嘆くと、流華は
「別に怒られるくらい大丈夫だって。そんなのいちいち気にしても仕方ないって。」
と言って、隣のエレベーターに乗り込む。エレベーターから降りると、第一対象者が真っ直ぐな廊下を歩いている姿を見る事ができる。
廊下は途中で曲がっていて、対象者の姿が見えなくなる。
「いそいで!」
流華がそう言って廊下を足音立てずに走っていく。
廊下の曲がり角を曲がると、第一対象者がホテルの部屋へ入って行く所だった。
中に人がいるかどうかもわからない。
「ほら、ここじゃ人目につくし、ツーショットは撮れないって、下に戻ろう。」
俺がそう、促しても彼女は動こうとしない。
「ちょっと待って!もう少しここではろう。」
そう言って待ってると、第一対象者の斜め前の部屋から1人の男が出てきた。
見た目はエリートサラリーマンといった風貌で、年齢はまだ若い。20代くらいだろうか。
そのエリートサラリーマンが第一対象者の部屋のチャイムを鳴らして部屋に入って行く。
流華がすかさず俺に言う。
「カメラはやくまわして!」
俺は、訳が分からず言われたままカメラをまわす。
「え?何なの?なんでカメラ回す必要ある?会社の部下かもよ?まさか、あの若いサラリーマンが浮気相手ではないでしょ?」
俺が言うと流華は
「さあ?それはわからないけど。
バイって言う選択肢もあるしね?
人によって、性の対象は色々だから。」
と言う。
でも事前に調査書でみた、浮気相手はなかなかの美人な女性だったはずだ。
まさか、あの若い男ともなんて考えずらい。
そうしている間にさっき入っていった、あの若いサラリーマンが、第一対象者の部屋から出てきた。
時間にしたら5分くらいしか部屋に居なかったと思う。
「出てきた!」
「はやく!カメラ!」
俺は流華に言われて、カメラを回す。
何で俺が指示出される側なのかわからないが、別に嫌な気にはならなかった。
若いサラリーマンは、部屋から出てきて、また自分の部屋に戻った。
「どうゆう事だろう?今の数分で何してたんだろう?」
俺が言うと、流華はじっとエリートサラリーマンが入っていった部屋のドアを眺めている。
「また、すぐ出てくるから、そしたら私は、あの若いサラリーマンの後を追うから、恭弥は下のティールームで第一対象者が出てくるのを待ってて!」
「追うってなんで?」
俺は流華が言ってる意味がさっぱりわからない。
そしたら、流華の言った通りすぐにエリートサラリーマンが出てきた。
「きたきたきた!見つかるから、エレベーターホールまで戻るよ!」
流華が言う。
「ちょっと待って!なんであのサラリーマン追う必要があるの?浮気と何か関係あるわけ?よくわかんないけど、流華が1人で追うとか危なくない?」
俺が言うと、
「いいから!恭弥は私の言う事聞いてティールームで待ってて。」
俺は流華の切れ長の綺麗な目で睨まれると「はい。」としか言えない。
惚れた弱味だろうか?全く逆らえる気がしない。
俺は仕方なく言われた通りにエレベーター前のティールームに行く。
流華はそのまま、サラリーマンを追って行く。
「流華気をつけて!」
と俺が声をかけると、
「誰だと思ってるの?」
と美しい笑顔を振りまいて歩いていく。その笑顔に俺はまたぼうっとなる。
何なんだろう、この胸の高鳴りは。
彼女の笑顔を見れただけで、俺は天にまで昇る気持ちになる。
今までだって、恋愛はしてきたが、こんなに胸を揺さぶられる経験は初めてだ。
しかし、流華はなんであのサラリーマンを追っていったのだろう?
浮気の証拠を掴むのに全く関係ないと思うんだけど、、、。
変わった子だなと思う。
俺はティールームでひたすら第一対象者を待った。コーヒー1杯でだいぶ粘る。
時間を見ると1時間は経っていた。
流華も何故か帰ってこない。
俺はだんだん不安になってくる。
一体大丈夫なのか。危ない事をしてなきゃいいが、朝の痴漢を捕まえていた流華を思い出すと、かなり護身術には長けていそうだが。
それでも流石にあんな若い男に敵うはずはないだろう。
そんな事を1人考えていると、エレベーターから第一対象者が降りてきた。
しかも第二対象者と一緒だ。
「なんて、ラッキーなんだ。」
俺は心の中で呟く。
まだ第一対象者をはって数日だ。
数日でこんなチャンスなかなかない。
俺はティールームから、すぐにビデオカメラを回す。
ばっちり2人の姿を映す。2人は腕なんか組んで完全にリラックスしている。
まさか狙われているなんて夢にも思っていないんだろう。
よし、この動画を編集して今日の仕事は終わりか。
と思った瞬間。
第一対象者がロビーの受付でルームキーを返して出口に向かって歩き始めた時だった。
第一対象者の後ろにいつのまにか流華がいた。
「あれ?なんであんな所に流華が?いつのまに?」
俺が思わず呟くと、流華は第一対象者の持っている鞄に向かって見事な足蹴りをした。
えっーー
えーーーーー!!!!
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