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17話

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「痛いじゃないかっ!こやつ……平民風情がこんな所で何をしてる!」
「申し訳ありません。」
「うるさい、俺に口をきくんじゃない!」
「……。」

トーアは石のようになってその光景を眺めているだけで、2人を止めようとはしなかった。それを確認してから慌てて仲裁に入る。

「失礼だが、それは俺が連れてきた者だ。文句があるならこちらが聞いてやろう。」
「…っ、」

見覚えがないので明らかに男爵以下レベルの小物だが、ハンスにとって膨大な力を持っているのは事実だ。

「トーア、何があったか簡潔に話せ。」
「はい。僕たちがここでご待機していた所、そちらの方がハンスにワザとぶつかるよう見受けられました。そして失礼な態度だとワインをかけたのです。」
「それは本当か……?」
「そんなの身内による言いがかりです。それに俺は怪我したんですよ。」
「そちらもこちらの見解で述べさせて頂きますと、故意的に怪我をされたものかと。現に彼の指輪には棘のようなものがありました。」
「……ん?お前の目は節穴だな。そんなのないさ。」

手をひらひらと見せびらかしてくるが、確かに指輪にそのような物はなかった。しかしトーアが嘘をつけないことは知っているので何か細工がされているのだろう。

「その指輪をかせ。」
「え?」

細工があるなら解くのみだと指輪を奪い取ろうとした時だった。

「……これはこれは我が愚息が失礼しました。」
「ちょっと、父上、話が違っ!ウグッ」

間に入ってきたのは今回の目的のリーゼン家の当主、レファルド・リーゼンだった。片手で息子の顔を練り潰すかのように力技で黙らせるとこちらに向き直る。

「取り調べはやめましょう。お互い名誉を傷つけるようなことはしたくないでしょう。しかしそちらの名も分からぬ者が息子に怪我をさせたのも事実……。」
「ほう……男爵如きが俺を脅すと言うのか?」
「では何か証拠があるというのですか?」

このクソジジイ………周りが貴族じゃない者の味方をしてくれるわけがないことをわかっていてこんな言い方をするんだ。

「俺はそれを含めて潰せる力があるのは知っているだろう。」
「そうもいきません。これからというのにその言い草はないでしょう。」
「……兄弟?」

大公爵を筆頭に、公爵家は4つ存在している。なのに男爵がその5つ目になるというのか……?ここでの兄弟とはそういう意味のはずだ。

いくら兵器造りに尽力しているからと言って、それを王家も大公爵も許したというのか……?

「さあ、ここでは目立ちます。明日、我が屋敷にいらっしゃいませ。もちろんそちらに悪い話ではありませんし、お詫びのおもてなしをさせてください。」

この騒動は仕組まれたことだろうし、この誘いも明らかに罠だろう。しかし俺にだって目的がある。頷かない他なかった。

それにもし害があるようなら殺してやればいい。何故か自然にそう思った。
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