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16話

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用意していた馬車にのってここからかなり遠い城へと向かう。なんかよく分からんが古い習わしに従って、行きはテレポートを使ってはいけないらしい。

携帯もない時代は暇すぎるので、馬車のカーテンをそっと開けて外を眺めると、そこにはハンスとトーアが立派な立髪を持つ馬に乗りながら何かを話している。

そんな様子も様になるなとあまり回っていない頭で思いつつ、再びカーテンを閉じた。


日がくれてきた頃やっと到着した。もうパーティーは始まっているそうで、遅れて登場するなどユースも度胸あるなとは思うが、昔からそうらしいので急に遅刻せずに行くわけにはいくまい。

「ユース・クロレピア公爵及びその御一行が入場します。」

男の大きな声と盛大な楽器共に大きくて金属でできた扉が、鈍い悲鳴をあげながら開いていく。

二人は護衛と世話役として連れてきたため、仮面をつけて顔が一切見えないようにしていた。貴族らは平民以下を害虫のように嫌う。たとえこうして美味しい食にありつけているのが誰のおかげかを分かっていても、同じ空気は吸いたくないようだ。

それと比べて容姿で身分関係なく判断するユースはマシか……と思いかけたが、全然そんなことはないだろう。比べる基準が悪すぎる。

一応、男爵生まれのトーアは問題ないが、出生不明のハンスは伏せなければならないので2人とも顔を隠してもらうことにした。

「俺は今から王族の方々と大公爵に挨拶に言ってくる。君たちはここで少し待っていてくれ。」
「「かしこまりました。」」

同時に頭を下げた2人を確認してから背を向ける。早く済ませてしまおう。気のせいだと願いたいが、なんだか今日は変な胸騒ぎがしてたまらないからだ。





しかしそんな努力も虚しく予感は的中した。







大公爵と酒の話で盛り上がっていると、反対方向からざわざわと騒ぎになっていることに気がついた。まさかと思い、一言断りを入れてから人の渦に向かうと、そこには仮面は真っ二つに割れ、赤ワインを浴びたハンスの姿があった。
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