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胡蝶の想い.4 ※
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「ひ…ぁ、──ッ…!」
折り曲げた膝頭を掴んで促す手に従って、軽く開いた両脚の間に、ムラサキ自身がたっぷりと濡らした指が忍び込み、奥処の縁に押し当てられた瞬間、ムラサキはあえかな嬌声を上げてきゅっと足の指先を丸めた。その指は、すぐにぐぷりと内側に入り込み、柔い肉壁の中に息衝く神経をかりかりと掻き立てるように指の腹で押し上げてくる。交尾の為の器官ではないそこをそんな風に弄られれば、どうあっても快感を覚えてしまう、この身をそんなあさましい身体に創り変えたのは、他ならぬシノノメだ。咽喉で深く息をする度、小刻みに震える翅から溢れる発情の香気は、蜘蛛の鼻孔から脳幹に入り込んで欲情を高め、隘路を慣らす手の動きに拍車を掛けるもの。ムラサキの中で動く指は、その先を求めて逸り、しかし決して柔い壁を一方的に、乱暴に荒らして傷めるような真似はしなかった。
「うぅ──、んッ…。…ねぇ、シノノメ…。もう、いいから──!」
内側に埋もれた、知り尽くされた弱点を狙って押し込むように蠢く指は、ムラサキを身悶えさせ、道ならぬ随喜を感じさせはしたが、純粋に快楽をいや増す為だけにそうしているだけで、ムラサキを辱めようとはしていない。そんなシノノメの想いを感じ取っただけで、彼を受け容れる隘路の柔壁は切なさを覚えてきゅうっと引き締まる。
小刻みに息継ぎをし、背筋を仰け反らせながら、眉尻を下げ、潤んだ目許を細めて若者を見遣った。その腕を掴んで、長い髪を乱しながら緩々と首を横に降る。
「私は──大丈夫、だから。…もう、来て。──お願い…。」
「…ん。」
幾度も唇を舐めて湿しながら、ムラサキの肉体を交接できるように馴染ませていたシノノメは、捕らえて間もない頃ならば、とうにムラサキを貫いて犯し、身勝手な欲望を散らしていたに違いない。だが今では、ムラサキが喘ぎながら懇願するまで、硬さを解すその手を止めようとはしない。
ずるりと抜け落ちる二本の指に追い縋り、柔い肉の襞が狭窄して疼いた。本能的な情慾の熾火に焼かれ、駆り立てられ、それでもムラサキを傷付けないように扱う雄蜘蛛の青い瞳には、余裕に乏しい若い欲求がありありと浮かび上がって、薄く汗ばんだ肌を火照らせるムラサキをじっと見据えていた。
シノノメの手でうつ伏せの体勢を取るように導かれ、腹這いのまま腰だけを高く持ち上げる。最も奥深く秘め隠された処を曝け出す姿勢に、羞ずかしさを覚えない訳ではない。ただ、今は、散々掻き立てられたその中心に、じくじくとした疼きを散らしてくれる熱い楔を早く穿たれたくて仕方がなかった。これが雄と番う雌の心地だというのならば、毒蜘蛛の為の番いになり果てたこの身に、最早何の憂いも感じはしない。
交わる前に、シノノメは、ムラサキが外した絹の襟巻きを、丹念に細い首筋に巻き付け、縛ってしっかりと止める。困惑したムラサキが何故そんなことをするのか、と問うと、シノノメは余裕を欠いた顔で薄く笑った。
「蜘蛛の習性、ってヤツだ。…気にするなよ。まあ、すぐに、ちっぽけなことなんか気にもならなくなるようにしてやる。」
そう言ってムラサキの流れるような葡萄茶色の髪を掻き分け、項にひとつ口づけを落とした。
「行くぞ…。」
「う──ん、ッ……っく、あぁ──ッ…!」
すっかり開かれた路の入口に、竦み上がるほど熱い切っ先がぴたりと押し付けられる。媾合の刹那、どうしても覚えてしまう粘膜を分け拓かれる息苦しさへの怖れに四肢を強張らせても、最後に辿り着く境地の味を知った入口は、まるで楔に接吻するかのように吸い付いて迎え入れた。ゆっくりと、引き戻りを繰り返しながら奥に沈められてゆく固く張り詰めたシノノメの一部。今はすっかり雌の交接器と化した肉の隘路を押し広げ、侵入してくる灼熱は、括れたその尖端で幾度も隧道の柔い壁を引っ掻いてムラサキを身悶えさせる。
掴まれた腰の両脇に力が籠もった。背中で深く荒い呼吸を聞くと同時に、杭の切っ先がこつんと奥に突き当たったのを感じる。身体の中にすっかりと収まった巨きな交尾器は、ムラサキが少し腹に力を込めれば、内壁を掻き分けて脈打つその存在が具に伝わってきた。自分の中に他の雄が挿入っていることを思い知らされる度に覚えていた絶望的な屈辱感は、今は、恍惚を伴う愛しさに形を変えている。早く動いて欲しくて、彼を知らしめて欲しくて、甘く鼻を鳴らしながら腰を揺らして強請るムラサキの脊柱の上を、温かな手が一撫でした。明らかに余裕のない震え声で笑うシノノメの声が、背中の上から柔らかく落ちてくる。酷薄な命令や嘲笑の色のない、強気だが優しい声だった。
「して欲しくて仕方がないのか…?可愛い奴だ。ここはもう、俺だけのものだろ──?」
「…あぁ、シノノメ──!…君以外に、こんなことを…させるのは、嫌だ…。──だから…、頼むから、…焦らさないで…!」
シノノメの指先がムラサキの腰を離れ、繋がった二つの器官の合わいを指先でゆるりとなぞる。それだけで、雄の交尾器を深々と飲み込んだ深みの縁がきゅうっと引き締まった。下腹では、言い逃れなぞできないくらいに昂ぶり、濡れた雄の器官が、解放を待ち望んで濡れ、そそり勃って震えている。
紛う事なき雌になり果てたこの身を恥じらう気持ちは消えなかったが、屈辱的だとは思わない。『蝶の王』ではなくなった、色褪せて老いを歩むこの身を、それでも欲してくれる愛おしい若い雄蜘蛛が求めるのならば、それに応えて全てを与え、受け止めてやりたいという情がムラサキの心身をなみなみと満たしていた。これはきっと、幸福感と呼べるものなのだろうとムラサキは想う。羽虫の肉を喰らう毒蜘蛛の交尾器を秘部で受け止めながら、湧き起こる陶酔を堪えることが出来ない。息を喘がせて、この先に開ける境地を求める。
「すっかりいやらしい身体になったな。…だが、嫌いじゃねぇ。──俺が、お前をこうしたんだ。…一生離してやらないからな。覚悟を決めろ。」
ゆっくりを腰が引かれ、肉の壁を擦りながらずるりと引き抜かれる強張った肉の槍に、ムラサキは歓喜の溜息を零して背筋を仰け反らせる。彼にどう突き抜かれても、濡れそぼつ交接器となった奥処は訳が解らなくなるほどに感じるようになっていた。
折り曲げた膝頭を掴んで促す手に従って、軽く開いた両脚の間に、ムラサキ自身がたっぷりと濡らした指が忍び込み、奥処の縁に押し当てられた瞬間、ムラサキはあえかな嬌声を上げてきゅっと足の指先を丸めた。その指は、すぐにぐぷりと内側に入り込み、柔い肉壁の中に息衝く神経をかりかりと掻き立てるように指の腹で押し上げてくる。交尾の為の器官ではないそこをそんな風に弄られれば、どうあっても快感を覚えてしまう、この身をそんなあさましい身体に創り変えたのは、他ならぬシノノメだ。咽喉で深く息をする度、小刻みに震える翅から溢れる発情の香気は、蜘蛛の鼻孔から脳幹に入り込んで欲情を高め、隘路を慣らす手の動きに拍車を掛けるもの。ムラサキの中で動く指は、その先を求めて逸り、しかし決して柔い壁を一方的に、乱暴に荒らして傷めるような真似はしなかった。
「うぅ──、んッ…。…ねぇ、シノノメ…。もう、いいから──!」
内側に埋もれた、知り尽くされた弱点を狙って押し込むように蠢く指は、ムラサキを身悶えさせ、道ならぬ随喜を感じさせはしたが、純粋に快楽をいや増す為だけにそうしているだけで、ムラサキを辱めようとはしていない。そんなシノノメの想いを感じ取っただけで、彼を受け容れる隘路の柔壁は切なさを覚えてきゅうっと引き締まる。
小刻みに息継ぎをし、背筋を仰け反らせながら、眉尻を下げ、潤んだ目許を細めて若者を見遣った。その腕を掴んで、長い髪を乱しながら緩々と首を横に降る。
「私は──大丈夫、だから。…もう、来て。──お願い…。」
「…ん。」
幾度も唇を舐めて湿しながら、ムラサキの肉体を交接できるように馴染ませていたシノノメは、捕らえて間もない頃ならば、とうにムラサキを貫いて犯し、身勝手な欲望を散らしていたに違いない。だが今では、ムラサキが喘ぎながら懇願するまで、硬さを解すその手を止めようとはしない。
ずるりと抜け落ちる二本の指に追い縋り、柔い肉の襞が狭窄して疼いた。本能的な情慾の熾火に焼かれ、駆り立てられ、それでもムラサキを傷付けないように扱う雄蜘蛛の青い瞳には、余裕に乏しい若い欲求がありありと浮かび上がって、薄く汗ばんだ肌を火照らせるムラサキをじっと見据えていた。
シノノメの手でうつ伏せの体勢を取るように導かれ、腹這いのまま腰だけを高く持ち上げる。最も奥深く秘め隠された処を曝け出す姿勢に、羞ずかしさを覚えない訳ではない。ただ、今は、散々掻き立てられたその中心に、じくじくとした疼きを散らしてくれる熱い楔を早く穿たれたくて仕方がなかった。これが雄と番う雌の心地だというのならば、毒蜘蛛の為の番いになり果てたこの身に、最早何の憂いも感じはしない。
交わる前に、シノノメは、ムラサキが外した絹の襟巻きを、丹念に細い首筋に巻き付け、縛ってしっかりと止める。困惑したムラサキが何故そんなことをするのか、と問うと、シノノメは余裕を欠いた顔で薄く笑った。
「蜘蛛の習性、ってヤツだ。…気にするなよ。まあ、すぐに、ちっぽけなことなんか気にもならなくなるようにしてやる。」
そう言ってムラサキの流れるような葡萄茶色の髪を掻き分け、項にひとつ口づけを落とした。
「行くぞ…。」
「う──ん、ッ……っく、あぁ──ッ…!」
すっかり開かれた路の入口に、竦み上がるほど熱い切っ先がぴたりと押し付けられる。媾合の刹那、どうしても覚えてしまう粘膜を分け拓かれる息苦しさへの怖れに四肢を強張らせても、最後に辿り着く境地の味を知った入口は、まるで楔に接吻するかのように吸い付いて迎え入れた。ゆっくりと、引き戻りを繰り返しながら奥に沈められてゆく固く張り詰めたシノノメの一部。今はすっかり雌の交接器と化した肉の隘路を押し広げ、侵入してくる灼熱は、括れたその尖端で幾度も隧道の柔い壁を引っ掻いてムラサキを身悶えさせる。
掴まれた腰の両脇に力が籠もった。背中で深く荒い呼吸を聞くと同時に、杭の切っ先がこつんと奥に突き当たったのを感じる。身体の中にすっかりと収まった巨きな交尾器は、ムラサキが少し腹に力を込めれば、内壁を掻き分けて脈打つその存在が具に伝わってきた。自分の中に他の雄が挿入っていることを思い知らされる度に覚えていた絶望的な屈辱感は、今は、恍惚を伴う愛しさに形を変えている。早く動いて欲しくて、彼を知らしめて欲しくて、甘く鼻を鳴らしながら腰を揺らして強請るムラサキの脊柱の上を、温かな手が一撫でした。明らかに余裕のない震え声で笑うシノノメの声が、背中の上から柔らかく落ちてくる。酷薄な命令や嘲笑の色のない、強気だが優しい声だった。
「して欲しくて仕方がないのか…?可愛い奴だ。ここはもう、俺だけのものだろ──?」
「…あぁ、シノノメ──!…君以外に、こんなことを…させるのは、嫌だ…。──だから…、頼むから、…焦らさないで…!」
シノノメの指先がムラサキの腰を離れ、繋がった二つの器官の合わいを指先でゆるりとなぞる。それだけで、雄の交尾器を深々と飲み込んだ深みの縁がきゅうっと引き締まった。下腹では、言い逃れなぞできないくらいに昂ぶり、濡れた雄の器官が、解放を待ち望んで濡れ、そそり勃って震えている。
紛う事なき雌になり果てたこの身を恥じらう気持ちは消えなかったが、屈辱的だとは思わない。『蝶の王』ではなくなった、色褪せて老いを歩むこの身を、それでも欲してくれる愛おしい若い雄蜘蛛が求めるのならば、それに応えて全てを与え、受け止めてやりたいという情がムラサキの心身をなみなみと満たしていた。これはきっと、幸福感と呼べるものなのだろうとムラサキは想う。羽虫の肉を喰らう毒蜘蛛の交尾器を秘部で受け止めながら、湧き起こる陶酔を堪えることが出来ない。息を喘がせて、この先に開ける境地を求める。
「すっかりいやらしい身体になったな。…だが、嫌いじゃねぇ。──俺が、お前をこうしたんだ。…一生離してやらないからな。覚悟を決めろ。」
ゆっくりを腰が引かれ、肉の壁を擦りながらずるりと引き抜かれる強張った肉の槍に、ムラサキは歓喜の溜息を零して背筋を仰け反らせる。彼にどう突き抜かれても、濡れそぼつ交接器となった奥処は訳が解らなくなるほどに感じるようになっていた。
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