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十章 緩やかに劇的に
知らぬ間に大事になってるとかあり得ない
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「なんだぁ? 」
扉の先で堂々と立つ男性の頭には一対の赤い角を生やした男性に目が釘付けになる。
「遅い!」
眉間に皺を寄せ少なくとも友好的に見えない男性にアルさんは唸るも、部屋の奥で王様のホッとした表情が見えた。
部屋の先には遠くからでもわかるくらい顔を真っ白にしたお城の騎士さん達。
鮮やかな赤色のカーペットの床、壁に飾られた絵画が心なしか一段階色が落ちてるように見える、柱、窓天井壁人……真っ赤な宝石を額につけた真っ赤な髪の男性の赤い目。
……現実逃避、無理かな。
「……えっと」
腕を組み少しも動くことなく僕を捉える力強い紅い目に蛇に睨まれた蛙のように固まる。
首一つ動かせないまま現状確認と言い訳を頭の中で並べ意識を他所に向けていたるとふいに一歩。
胸の勲章を揺踏み込んだ瞬間、頭の隅で忘れていた何かが顔を出し始める。
虹色に煌き燃えるように揺れるルビーのような目に何処か見覚えがあるようなないような。
何処かでこれを見たような気がする。
その気が何かはっきりとしなくて、近くなる目をぼんやりと見ていると体が後ろに動いた。
「アルギス」
「うるせえ、無言で近づかれたら誰だってこうするわボケ」
悪態をついたアルさんは更にもう一歩下がると僕に回していた腕がきつくなる。
一瞬感じた痛みに霧がかっていた思考が晴れていく。
手で届く距離にいた男性を見れば変わらず僕をみているけど、眉間の皺は更に深くなっている。
「ラグーン」
「軽々しく名前を呼ぶんじゃねえよカスが」
「アルギス! お前いい加減に……」
「よい」
目の前の男性の一言に立ち上がった王様は即座に押し黙る。
「暴言のひとつやふたつ気にすることではない」
「…………アルギス、しばらくお前は減俸だ」
「糞が」
「大事な御客の前で無礼にも程があるだろう、当然だ」
「 ハッ! 勝手に城に来て勝手に苛ついて破壊していた奴に今更向ける礼儀なんてありゃしねえよ」
「アルギス……!」
アルさんが正論を言ってる……ちょっと感激。
「だとしても、言葉を選べ馬鹿たれ」
「い や だ ね」
「おまえぇ……」
心底嫌そうにため息を吐くアルさんと王様が睨み合い緊迫した空気が場を包む。
「貴方達いい加減に」
「ふむ」
見えない火花を散らす二人に静かに控えていたミネルさんがたまらず声をかけた時、僕を見ていた男性がふいに視線をあげ口角をあげる。
「……そうだな、物の破壊、知らせもなく現れた無礼、ひいては礼の一つも見せていない……人の心を持たず殺戮を楽しむ狂戦士と聞いていたが、猛将アルギス、存外常識は持ち合わせていたか」
「あ?……喧嘩売ってんのかてめぇ」
静かだがはっきりと耳に響く男性の言葉に頭が真っ白になると同時に、頭の上から冷たい空気がひやりと首筋にかかる。
「気を害したならすまない、いやはや……人間とて長く生きればそれなりになるが貴殿らの輝きは別格だ……実に素晴らしい」
「おいイウァン、こいつ殺して」
「駄目に決まってるだろう、給料しょっぴくぞ」
「駄目か……ああくそ!! ……黙らせてぇ」
「良い殺気だ、誉めてやろう」
「……外に出ろ、その角へし折ってやる」
「ハッハッハッ! 嬉しい誘いだが後にしてくれ、遊ぶために来た訳ではないのだ」
ビリビリと身が縮む怒気を膨れさせるアルさんを前にして笑顔で声をあげる男性……2人のアンバランスな様子をほぼゼロ距離で見ている僕の胃がそろそろ痛みだすかもしれない。
「それはそうとだ猛将アルギス」
「あぁ? 」
「正直貴様との語らいは興味がないゆえ早々に終わらせたいと思っている」
「一々ムカつく野郎だなてめぇ……」
「貴様の感情等どうでもいい……ふむ」
綺麗に整った笑顔をままにアルさんの言葉を吐き捨て、男性はおもむろに腰を落とすと僕と視線を合わせると目元を緩ませ手を僕に向け伸ばす。
「へっ……」
「なっ……」
大きな掌が僕に向けられた瞬間、突然頬が温かくなる。
遠くでこの場を見守る王様が僕を見て目を見開いて声をあげる。
「さぁ、漸く声をかけられる……久しいな、愛しき」
白く尖った八重歯を見せつけるように笑った。
「えっと……?」
頬がなんか光っとる、なにこれ。
扉の先で堂々と立つ男性の頭には一対の赤い角を生やした男性に目が釘付けになる。
「遅い!」
眉間に皺を寄せ少なくとも友好的に見えない男性にアルさんは唸るも、部屋の奥で王様のホッとした表情が見えた。
部屋の先には遠くからでもわかるくらい顔を真っ白にしたお城の騎士さん達。
鮮やかな赤色のカーペットの床、壁に飾られた絵画が心なしか一段階色が落ちてるように見える、柱、窓天井壁人……真っ赤な宝石を額につけた真っ赤な髪の男性の赤い目。
……現実逃避、無理かな。
「……えっと」
腕を組み少しも動くことなく僕を捉える力強い紅い目に蛇に睨まれた蛙のように固まる。
首一つ動かせないまま現状確認と言い訳を頭の中で並べ意識を他所に向けていたるとふいに一歩。
胸の勲章を揺踏み込んだ瞬間、頭の隅で忘れていた何かが顔を出し始める。
虹色に煌き燃えるように揺れるルビーのような目に何処か見覚えがあるようなないような。
何処かでこれを見たような気がする。
その気が何かはっきりとしなくて、近くなる目をぼんやりと見ていると体が後ろに動いた。
「アルギス」
「うるせえ、無言で近づかれたら誰だってこうするわボケ」
悪態をついたアルさんは更にもう一歩下がると僕に回していた腕がきつくなる。
一瞬感じた痛みに霧がかっていた思考が晴れていく。
手で届く距離にいた男性を見れば変わらず僕をみているけど、眉間の皺は更に深くなっている。
「ラグーン」
「軽々しく名前を呼ぶんじゃねえよカスが」
「アルギス! お前いい加減に……」
「よい」
目の前の男性の一言に立ち上がった王様は即座に押し黙る。
「暴言のひとつやふたつ気にすることではない」
「…………アルギス、しばらくお前は減俸だ」
「糞が」
「大事な御客の前で無礼にも程があるだろう、当然だ」
「 ハッ! 勝手に城に来て勝手に苛ついて破壊していた奴に今更向ける礼儀なんてありゃしねえよ」
「アルギス……!」
アルさんが正論を言ってる……ちょっと感激。
「だとしても、言葉を選べ馬鹿たれ」
「い や だ ね」
「おまえぇ……」
心底嫌そうにため息を吐くアルさんと王様が睨み合い緊迫した空気が場を包む。
「貴方達いい加減に」
「ふむ」
見えない火花を散らす二人に静かに控えていたミネルさんがたまらず声をかけた時、僕を見ていた男性がふいに視線をあげ口角をあげる。
「……そうだな、物の破壊、知らせもなく現れた無礼、ひいては礼の一つも見せていない……人の心を持たず殺戮を楽しむ狂戦士と聞いていたが、猛将アルギス、存外常識は持ち合わせていたか」
「あ?……喧嘩売ってんのかてめぇ」
静かだがはっきりと耳に響く男性の言葉に頭が真っ白になると同時に、頭の上から冷たい空気がひやりと首筋にかかる。
「気を害したならすまない、いやはや……人間とて長く生きればそれなりになるが貴殿らの輝きは別格だ……実に素晴らしい」
「おいイウァン、こいつ殺して」
「駄目に決まってるだろう、給料しょっぴくぞ」
「駄目か……ああくそ!! ……黙らせてぇ」
「良い殺気だ、誉めてやろう」
「……外に出ろ、その角へし折ってやる」
「ハッハッハッ! 嬉しい誘いだが後にしてくれ、遊ぶために来た訳ではないのだ」
ビリビリと身が縮む怒気を膨れさせるアルさんを前にして笑顔で声をあげる男性……2人のアンバランスな様子をほぼゼロ距離で見ている僕の胃がそろそろ痛みだすかもしれない。
「それはそうとだ猛将アルギス」
「あぁ? 」
「正直貴様との語らいは興味がないゆえ早々に終わらせたいと思っている」
「一々ムカつく野郎だなてめぇ……」
「貴様の感情等どうでもいい……ふむ」
綺麗に整った笑顔をままにアルさんの言葉を吐き捨て、男性はおもむろに腰を落とすと僕と視線を合わせると目元を緩ませ手を僕に向け伸ばす。
「へっ……」
「なっ……」
大きな掌が僕に向けられた瞬間、突然頬が温かくなる。
遠くでこの場を見守る王様が僕を見て目を見開いて声をあげる。
「さぁ、漸く声をかけられる……久しいな、愛しき」
白く尖った八重歯を見せつけるように笑った。
「えっと……?」
頬がなんか光っとる、なにこれ。
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