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九章 亀裂

なにこの残念な人…

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「やはりお前は可愛い……とても……とても、あぁ愛しい」

逞しい胸に強制的に顔をうずめ。

身動きできない程抱きしめられる中、頭の上からは甘ったるい低音ぼい……。


これである。



バリトン寄りのテノール声は耳に心地いい……けど言ってることがちょっとなと。
しかもこれ、抱かれるというよりも包まれてるよね、数ヶ月前の僕なら慌てるだけだったけど……立派になったものだ、はぁ。

「……今からでも我が城に来ないか? 」
「遠慮しておきます」
ダルーダさんの城というと……要塞と街を融合して尚且つ本城が空中にあるっていうとんでも仕様のあれ……凄い興味はあるし少年心がつつかれるけど……けど王様やアルさんと離れるのは嫌だしな。


……ダルーダさんは何処まで話が通じるか、ここもちょっとした鬼門。


今僕を抱き込んでにこにこしてるこの人だけど、初めて見たときは真っ黒な姿で尚且つ真顔から表情が変わらず、一席の赤毛のでかい人はギャーギャー喋る中ダルーダさんはあまり喋らず怖い人という印象あった。

「そうか、残念だ」
今でもほんの少し苦手意識があるのは内緒。


でもどういうわけか結構気に入られているからある程度の要望は通るけど……ここで強制的に連れ出されたら凄い困る……。


「連れ帰りたい気持ちは山々だが……嫌われたくはないからな、無理強いはしない」
残念そうに言って僕を腕から解いたダルーダさんに首を傾げる。

「……ありがとうございま」
「我が部屋から一歩も出ないよう甘やかし俺なしには生きれないようにするのも一興だが……まだその時期には早い」
とりあえずお礼を言おうと口を開いたところで耳に入った落ち着いた声に素で僕は固まった。

「…………」
えぇ。



なんだこのひ……げふんげふん。







※※※

ああそうだ。

「そういえばダルーダさん、今日はどうしてここに来たんですか?」
「む?」

改めて、ソファーに座った僕は隣に収まったダルーダさんに一番聞かなくてはいけない疑問を聞く。

「どうして、か、少し難しい聞き方をするな」
「?」
「いや、気にするな、至極単純、お前と会いたくて来たんだ」
「……はい」
うわぁ……ドラマというか少女マンガというか……痛い。

「頼むから純粋に引かないでくれるか?」
「……そんなことありませんよ?」
か、顔に出てたかな?

ダルーダさん……うん、苦笑してるからバレてるねこれ。

「…………一応それは本音なんだがな? ここからが本題だ」
「はい、はい?」
「建前は来年の魔王会議に参加できるかどうかの確認とラグーンが無事かどうかの確認をしに来た」
「…………ええっと?」
何処から突っ込めばいいのだろうか……いやいけないな、うん。

「……ん〝っん〝、まぁ、とりあえずだな」
大きく咳払いをして微妙な空気を……たぶん誤魔化したダルーダさんは顔を引き締めた。

「ラグーン、来年の会議には出席できそうか?」
























    
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