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九章 亀裂

全てを見通す魔王様?

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「そうだな……五分以内に城に帰ることをお勧めしよう、イウァン・キング・センブレル殿よ、優秀な側近でも王無くして問題の対処には限界があるのではないかね?」


「……どういうことだ」
世間話をするように言ったダルーダさんに声を低く王様は怪訝な顔をする。

「先に言うが、俺はなにもしていない、つまらんからな」
「……? 」
困惑する王様はふいに僕を見ると眉を下げた。

「……わからん、助けてくれ」
訝しげに僕の顔を見た王様に僕も肩をすくめる。


「……手短に伝えても? 」
「いいとも」
「ありがとうございます」

隣でくつろぐお方に確認を取れば、頭を撫でられる、据わりそうな目を何とか誤魔化す。

前方に指を出し【ステータス】の画面、次いでメニューから【ライブラリ】を開きお目当ての資料を探す。

”三つ目”、”魔王”、”初見殺し”、と検索……あった。

他の人には見えないらしいその画面の内容に目を通す。

「んとね、このお方,ダルーダさんは【全てを見透す目】を持ってるの」
「目……?」
「色々とすごい力だけど今回は省略、今ダルーダさんがほのめかして言ってることは多分王様とその周り、んー、王様に関係した今後ほぼ確実に起こるであろう”未来”の事を言ってるんじゃないかな」
「……彼は未来を見て、俺に忠告してくれているんだな?」
「そういうこと……ですよね?」
怪訝な顔で確認する王様に合わせダルーダさんを見れば、何故やら口を尖らせ肘をついていらっしゃる。

「ほとんど合っている、何処から漏れた情報かはさておきラグーンよ……何故その男にはフランクな口調で接している」
「…?」
「俺には堅苦しく接していたではないか、何故…!」
発せられる禍々しい迫力……うおお。

「王様は友人ですから「俺は?」へ」
腹に響く低い声に驚けば、ダルーダさんの眉が悲し気に下がる。

「数百年前の魔王会議から定期的に声をかけ、城に招き語らい、そして様々な場所に行ったこの俺は? 日数で言えば三月と些か見劣りはするがそれは素晴らしい毎日だった……今でもしっかりとあの頃の事を思いだせる……なのにお前はいつも壁を作って避ける、友人知人他人お前と接する不届き者たちと会話する様子を時折覗いていたが、必ず一歩、二歩引いた態度を示す」
「……」
「俺と旅をする時も戦闘時自分が危険にさらされても劇場でもみているかのような目をして、死体とはいえ折角人格を有しているのだ、悲しいぞラグーン」
ぇえ、と。


「……ええ、と」
だって…、ダルーダさんと出会ったときはまんまゲームだし、NPCならばいわずもがな……フレンドとだってあくまでマナーを守ってだし、そんな壁を作った覚えは全く無い。

「今はそれでも幾分かマシになっているようだが……まだ駄目なようだな」
「……」
悪いことは全くしていないのに、言い返す言葉が思い付かない。

ただ最低限の事をしてるだけ、人に迷惑のかからない範囲で好きなことを出来ればいい、それだけが理由だ。

僕が理由で唸るダルーダさん、別に悲しいなんて思わないけど……申し訳ない。

「あぁ……」
悩まし気に顔を合わせていると、ふいにダルーダはんは顔を横に向け手で口元を覆った。

「そのように見つめてはいけない……惚れる」
「……はい?」
「無自覚なのか……それもまた良い」


シリアスって知ってます??


「あぁそうだ男、濁して言ったがそろそろ帰らんと今頃赤龍の王が城で貴様の到着をいまかいまかと待っている筈だぞ」
「それはどういう?!  はぁ? え? 彼の王と対談する予定は…、   っ!?」
目を剥いて勢いよく立ち上がった王様は目を泳がせると途端に顔を青ざめさせる。

「情報の処理が追い付かないだろうがほれ、休暇は終わりだ」
「ぬ。ぬう……これはどういう……後ほどアルギスを寄越す、待っていてくれ」
額の皺が大変なことになっている王様はきつく目を閉じるときっと眼光鋭く言い、傍で震えているオークちゃんを脇に抱えると、足元に真っ白な陣を作る。


「……気を付けてね?」
「おう」
気むずかしい顔をしながらも王様は片手をあげ一層強くなった光に包まれいなくなった。



「ちょっと失礼しますよ」
よいしょと掛け声と共に立ち上がり、王様の使っていたマグカップを手に取り、洗い場へ向かおうと振り返れば目の前に黒い壁。


「ラグーンよ……」
壁の上のほうを見れば、にっこりと満面の笑みのダルーダさんが腕を広げている……。

「……なんでしょう」
「ふふっ、これはこそばゆいものだが……二人っきり……だな」
嫌な予感をひしひしと感じつつ聞けば抵抗する間もなく抱きすくめられダルーダさんの口が耳元に寄せられ囁かれた。




えぇ(´・ω・`)












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