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八章 ほころび

マイホームINパラダイス

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丸く食卓用のテーブルに白く落ち着いたソファー、そして緑色の絨毯には花柄の刺繍が。
壁にはアナログ時計、

奥には少し大きなベッドには本が重なり、隣には本棚。
カーテンを引き締め切った窓を全開に開ければうっそうとした森から来る緑の香りと強い風が暑かった部屋を通り抜けて。

一人で住むには少しだけ広くて快適なワンルーム。

一歩、王様の部屋から影の扉へと踏み出せばそこはのんびりとした時間の流れる僕の家、靴を脱いであがれば、後ろからついてきた王様が声を漏らす。

「おぉ……おおぉ……!! 何だここ……! なんだここ……! 」
「僕の家だよ」
帰ってきましたとも、マイハウス。

隣でキラキラと少年の目をしている王様にははよ靴脱げと言っておいて、と。
早速僕は歩く。

「冷蔵庫の中は……大丈夫かな」
「ん? 」
玄関から左手に向かった先にあるキッチン、そこにある小さな冷蔵庫を警戒しながらゆっくりと開ける。

「たまごにベーコン、鶏肉鹿肉お野菜調味料………うん、大丈夫そうだね……なんで大丈夫なの? 」

調味料はまぁ当たり前だけど、この家空けてから2ヶ月3ヶ月過ぎて………カビなり冷凍焼けなり起こしても不思議じゃないけど……普通に食べられそうなんだけど、なにこれ怖い。


「ほう……冷却に時間固定……手が込んでいる箱だな」
頭の中で首を傾げていれば頭の上から王様が顔を出す。


「んー……」
「なんだ浮かない顔して」
「いんや、なんでもない、それよりお茶出すからソファーで寛いでてくれる? 」
「おう……あ、テル! 跳びはねるなこら! やめなさい! 」
「ぶーふぶ! 」
「なにやってるの……」
麦茶の入った容器片手に声のしたほうを見ればオークちゃんが部屋の奥のベッドでぴょんぴょんと跳ねて遊んでいたり
王様はオークちゃんを注意しているけど怒る気0だねあれ。

楽しそうに遊ぶオークちゃんが王様に捕まる様子を見てコップに麦茶を注ぎながら思わずため息をつく。




「ベッドが痛むだろ、メッ! 」
「ぶー! 」
「別に構わないよ、ほら、コップに氷入れたけど大丈夫だった? 」
「おう、ありがたい」
オークちゃんを小脇に挟んで座る王様を確認し、僕もソファーに腰を降ろす。


一息ついたのを確認し、僕は自分のコップを掴みぐびぐびと一息に飲み干す。

「ふぅ……………疲れた」
「疲れるのはやっ」
「体力ないんですよこちとら」
息を少し整え王様をじとりと見れば、王様もゆっくりと息を吐きだらんと腕をテーブルに伸ばした。

「あぁあぁ゛……体痛え」
声がおっさん……。

「………お疲れ様です国王陛下」
こきこきと骨を鳴らし体を伸ばす王様ににやりと言えばばつの悪そうな顔をあげる。

「今日ぐらいはその呼び方は勘弁してくれ、……はあ34連勤は流石に体に堪える」
「1ヶ月以上もあれはきついでしょ……」
一日中書類や会談をして、酷いときは休憩も取らずにカリカリカリカリと、やだねそんな真っ黒な職場

「あぁ、あぁツラいとも……だからこそたまの休みは楽しくすごしたい、駄目か? 」
じっ、とこちらを見る少し揺れている目に僕はおかわりのお茶をいれながら首を横に振る。

「いいや全く? 人生は楽しんでこそだよ」
「そうだよな………そうだよなぁ……! 」
「暗いこと言ってどーしたの」
「……仕事辞めたい」
「こらこら……」
どんよりとした事を言う王様は中々情けない………うーむ。

「ラグーンにはわからんだろうな、この苦しみが」
あらネガティブを振り撒きはじめた。

「分からないよそりゃ、年中ニートだもん」
「………ニートってなんだ? 」
どんよりとしたまま顔を傾げられ、ちょっと考える。
あぁ、伝わらないかな、

「……働かずごろごろして生活している事」
「いいなそれ…………俺もしようかな、ニート」
「えぇー? 」
あなた王様でしょ。

「丁度後釜によさそうな孫も入るしそいつに王位押し付けてこの家でテルと隠居生活、中々理想的だた 」
「その孫ってキオラって人? 」
時折文官さんとの会話に出る子り

「そうだ、今年で18になる子だが中々に見所のある、まだまだ荒削りだがな」
「へぇー」
「今日キオラが俺の仕事をしてくれている筈だ、……やはり隠居しよう、この絶好のタイミングは他にない」
「…………」

王様の中で着々と隠居計画が練られている……目が本。

「ここで隠居って言うけど……ここ立地最悪だよ? 」
「だが、住み心地は良さそうだぞ?  」
「そりゃ頑張って調整したからね、ここ森の奥地だし大変だったよ、それに、ほらあそこ」
きょとんと顔をあげる王様に更に僕は言葉を重ね、窓の方へと指を向ける。

「む? …………ん?! 」
「ぶ……!? 」
僕の向けた先、そこは窓を全開に開けた森の風景が見える窓の筈が、見えない……、

何故なら窓を埋めつくす黒いまだら模様の入った赤い中に見える大きな黄色い目。



「グルルルルル」
カチリと固まる王様を尻目に僕はその窓へ口許を緩ませてで近づいた。

窓の淵に手を置き、もう片方は顔へと手を伸ばし、ゆっくりと撫でればごろごろと地響きのような喉を鳴らす声が家をゆらす。

「トラちゃんお久しぶり 」
「ガウッ」


かなりの久しぶりだけど、マタタビお魚大好きのクリムゾンタイガーである。






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