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七章 欠片

三度目のなんとやら

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「…………本題に入ろうか」

「へい……」




二回目となる王様のこの台詞、盛大に顔をひきつらせる王様の隣では満面の笑みの美人が静かにブリザードを放出させている。


ついでに言えば、ミネルスさんがブリザードを起こした原因である、おっさん二人とナーバスさんは外野である僕も凍えるような説教を受けてお部屋の外に叩き出されましたとさ、……めでたしめでたし。




ちがうちがう……めでたくないぞ全く。



ゴツゴツとしたアルさんの筋肉質な膝からふかふかなソファーにシフトチェンジした僕は背筋を伸ばし、真剣な顔の王様を見る。



「………あの人たちのせいであやふやになったけど結局……貴族達がなんか起こすかもって事で良いの?」

「あぁそうだ……まあ既に一部の貴族は事を起こしたようだがな……全く……」

やれやれとため息をついた王様、疲れたような顔をすると、カップの紅茶を手に取り一息に飲み干し、もう一度。



「……アイデンさんと出掛けた時の事? 」

あのなんかコロスコロス連呼していた女の人の奴、……そういえば忘れるところだった。


アイデンさんと一緒にいったお店で購入したあの短剣、できるだけ早めにあれ改造しておかないと、アルさんお出掛けするのって確か三週間後 それまでに完成させて渡そう。



「……思考にふけるのもいいがここからが割りと重要だから聞いてくれ」

「え? あ、うん? うん」


ボーッとしてたのがバレたのか指摘された上に僕が我に帰るなか王様はミネルスさんと顔を会わせると、互いに苦笑を浮かべる。



「人の話聞かない所だけはあいつと似てるなぁ……」

「あれよりはマシでしょう……多分」

「ん? 似てる? なにが? 」

「いいや何でもない……」


何故そこで笑うのかね王様、……ミネルスさんもなに微笑ましそうな顔で見てるの。


いや、うん話進めよう、なんとなくいたたまれない気持ちになる。



「とりあえず何かされたら倍返しにして返しておけばいいのね」

「間違ってはいないが……それにしても平然とした顔で言ってくれるなぁ、怖くないのか? 」

「別に怖がる要素ないし……端的に単純明快、言葉で現す分には簡単でしょう? 」

「現す分にはな……だが、気を付けるにしてもどうするんだ、いきなりこう切り出したとはいえその対策に支援はするつもりだが、あまり大事にすると反発を大きくするからそこまではできんぞ? 」


前のめりになり僕の顔を眉間に皺を寄せて見る王様、怖い顔しているけど、それは僕の事を心配してくれる証拠……とってもありがたい。


まぁでも、王様には悪いけど僕個人としてはそこまで焦ることではない、かなぁ……。

なんとなく緊迫とした空気のなか、僕はいつもと変わらない声で話す。



「そこは、ほら、アリムさん達にお任せにすれば良いじゃない」

「任せるんかい! 「ですか! 」」


おっと声が重なったぞ?


「ほら、ぼく難しい事わかんないから 」

「いやいや…………他力本願すぎやしないか?」

「問題ないよね? アリムさん」


ね? と隣にいるアリムさんに首をかしげて聞けばアリムさんは僕の目線までゆっくりと膝をつくと、うやうやしく僕の手をとった。



「えぇ勿論でございますマスター、この身この魂を掛け全身全霊で御守りいたしますとも!」

「……心なしか過剰な気がするなぁ」

「心なしでもなんでもなく、異常だからな? 何なんだその忠誠心……羨ましいぞ」

緩く、そしてしっかりと僕の手を握りしめ、熱い視線を向けるアリムさん。

心なしか……甲冑の隙間から見える目が赤く光っているような……?


「……まぁ、万善の策を用意して置けば良いのね? 」

「そうだな、それが良いだろう……欲を言えば貴族供を黙らせられる材料があればいいが……何でもない、ラグーンにはすこしきついだろう」

ほほう、黙らせる材料……ねえ?


「それは、例えばどんな感じかな?」

王様に聞けばキョトンとした王様は顎に手を当てて唸りはじめる。


「ん? そうだなあ……」

「まぁ、例をだしますと」

「ん? 」

すると隣でが紅茶のおかわりを用意していたミネルスさんにこりとが口を開いた。


「貴族は主に流行や噂に敏感、特にラグーン君に関しましても一度だけ出席したあの戦勝祝典の夜会、ゴリラが上手く貴方の耳に入らないよう動いていたようですけど実際は結構シビアで、社交界や令嬢たちの間でラグーン君のあることないこと、尾ひれなどのついた噂が社交界を占めていますよ」


「へぇー……その人たちと会話した覚えはいけどね」

「それは当然、厳重に監視してますからね、主にアルギスが」

「……なんで教えてくれなかったのアルさん、面白そうな事なのに」

「 まぁ、あれだ、あいつもあいつなりでラグーンを気遣っているんだろうよ」

「ふーん…………」

ボソリと言葉を漏らせば王様は苦笑を全面に押し出した表情で頭をかいた。


なんでい、つまらん。


「はじめの頃はまだマシでしたが最近ではアバスレだの尻軽だのともはや別の生き物の噂が蔓延してます ?」

「……へぇー」

尻軽、アバスレ。


ハードなエロ小説の世界に使われる単語に僕は顔を俯ける。

そして何を思ったか王様が慌てたように身を乗り出す。

「ま、まぁ、極一部での噂だからな!、気にする事はないからな!! 」

「んー僕……アルさんと、致したことないんだよね、その……セックスを」

「「「「「え?! 」」」」」

「ん? 」

ポツリと、首をかしげた僕が呟けば周りから聞こえる驚きの声。


ん? 周り?


声のしたところを見渡せば驚きの顔で僕を見ている兵士の人々……んん?


「はい? 」

今更、すんごい今更だけど、王様と話しているこの部屋って、いる人王様だけじゃないんだよねぇ。


王様さっきまて仕事していたらしく……王様の護衛の兵士いっぱいいるわ仕事の秘書官らしいおじさまもいるわ、お世話係の侍女さんもいる。


つまりどういう事かというとね?



「え、あの方まだヤッてないんですか?! 」

「手の早いことで有名なあの方が……?! 」

「そんな、あり得ない……」

「これはいやはや……」


上から順に。


目を丸くして持っていたお盆を落とすメイドさん。

驚きを隠せず目を見開いている扉の所で控えていた騎士さんが他の騎士さんと顔を見合って漏らしている。

そして僕らのすぐ近くでお世話をしてくれていた二人目のメイドさん。


終わりに執務室のテーブルの隣で書類に目を通していた白髪のおじさまは顔をあげておられる。。




……さっきまで重苦しかった部屋の雰囲気がまた、跡形もなく消えて、わちゃわちゃしだしたのを、肌に感じた……。


「ありゃあ……」


なんだこれ

ひくりと口角を上げたところで目の前の王様は遠い目を向けため息をつく。


すると壁に控えていた騎士の一人が一歩前に出て手を上げた。


「陛下……発言の許可を頂いても……」

「……いいだろう」

「アルギス大将軍殿はもしかして何か大病を……? 」

「ちがう」

「で、では他の方で欲を満たして」

「違う」

「…………もしや育て上げてからペロリと頂くおつもりで」

「ありそうで恐ろしいから言うな……職務に戻れ」

「ハッ! 」

「…………紫の上」

万葉集のどっかに書かれてた幼児に惚れた20代の男がその子を拐って自分好みに育て上げて美味しく頂くお話……いや~源氏の名前忘れたけどあれは変態………アルさん?



「あぁもお何でこうも予定通りに進まないんだろぉなあ………!! 」

記憶の彼方からその知識を引っ張り出しているとふいに、王様は頭を抱えテーブルに突っ伏した。


そんな様子をミネルスさんとほのぼのと眺めていると、扉が乱暴に開けられる


「おいこらジジイ!! いい加減待ちくたびれたぜって……あ? 」

のしのしと現れるアルさんは王様と僕を交互に見てキョトンとする。

そして今の状況になった張本人であるアルさんに一斉に集まる視線に更にアルさんの頭にクエッションマークが浮かび、次いで何か聞きたげに僕をみた。。


「なぁラグ……」

「お話し中申し訳ありません大将軍」

そしてその中で一歩前にでた騎士の一人が恐る恐る口を開いた。

「……なんだよ」

「貴方まだこの方とセックスしてないんですか!? 」

「……は? 」









この後また、一悶着あったのは言うまでもない。



そしてそんな中諦めたような顔をする者と面白そうにクスクスと笑う者は……。



「ふふ……どうしましょうかイウァン、個人的には面白そうですし眺めていたいですが」

「……勝手にしてくれもぉ…… 俺はテルの所に行く!! 」





















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