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四章 僕の迷宮へ

夏の日常

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「そういうもんだいじゃないよほら、お釣りあげるから早く行ってきてちょうだい、じゃないとゲーム捨てるからね!? 」

「うぇーい」

母親のイラついた声に気だるげに答え僕は頭からコントローラーを外し、リビングの方に行こうと立ち上がった所で硬直する、


え……………?


「どういうこと………?」

どういうこと………どういうこと!


ぼそりと言いながら僕が立ち尽くしているとリビングに続くドアからひょっこりと母親が顔をだした、


「つったってないで早く行ってきてよ、ポトフが作れないじゃない」

「………はーい」


今のこの状況、至極真っ当で、普通のなんてことの無い日常………そう、僕の日常だけど……だけど。


ちらりとテレビの画面を見れば僕が操作しているゲームのキャラが火山のステージで止まっている。



いままでの事を抜きにすれば、変わらない日常……頭が追い付かないまま母親に急かされ、全く飲み込めないまま学校の教科書やノートが積み重なった勉強机に手を突っ込み、床にノートを落としながら財布を引っ張り出し母親から受け取ったお金を入れるとセミの鳴く音に耳を塞ぎながらとぼとぼと玄関から暑い暑い外へと歩き出した、



「どういうこと…………? 」

さっきからこの言葉しか言ってないが、本当に、どういうこと。


じりじりと太陽に照らされた地面が熱気を放ち、肌からはだらだらと汗が流れる。


歩きながら僕は信じられないと思考を続けた。



さっきまであのダンジョンにいた筈、だよね、もしかして……あれ全部、ゲームとしてのストーリーだったって事?、いやでも、僕の記憶では、体感した事では一ヶ月以上もあそこにいる、


だから今この状況は絶対にあり得ない…………、

だけど実際に起こってることだし…………、



…………考えても仕方がない、 


歩く足をとめ僕は首を振りいつまでも終わらない考えに蓋をする、


下手に考えたって何も変わらない、時間が無駄になるだけ、なら今目の前にある事だけ考えよう、【いつもの事だ】

理不尽だろうが、信じられない、信じたくないことでも我慢……我慢だ、そう、これは悪い夢、長い長い夢だった……。


我慢。


とにかく今はコンビニ行こう、



ええと、卵と、後ついでにコンソメも買うんだっけ?





※※※





「ありがとうございました~」

外に出た瞬間むわっと感じる確かな熱気。


夕方近く、工事現場の作業着を着たおじさん達で凄いことになっていたコンビニを後にする、


あぁ……クーラー……。


今は確か、夏の終盤、昼間はまだまだ暑い。

風もぬるければ日光は地獄……やだ家から出たくない。



そういえば、ここ最近家の改築だったり、新しいコンビニが出来たりと中学に転校して来た二年前までは田舎だった自宅の近くが若干都会みたいに綺麗な町並みになってきた、

この調子で近くにカラオケでも出来てくれたら嬉しいのにね。



新しく作られ始めている家をぼけ~と眺めながら家の方角にある信号を渡り、後は一際工事が行われている通りの交差点を曲がれば家だ。


そう頭の片隅で思いながら足を進め、ふと思い出す。


そういえば……。ここまで何か既視感あるなと思っていたけど、


僕は、気がついたらあそこの森の家にいた、だけど、それ以前の記憶は?


あぁ、思い出してきた……。


コンビニから出て、のんびりとビニール袋片手に歩きながら、確かここまでは来た……………はず、うん、


一ヶ月も前の事事細かに覚えているほど僕は記憶力よくない……、でもここから先、ここから曲がってからの事だけ全く記憶に無いって事も逆に可笑しい………ふむ、


行ってみるか。


ここで考えていても仕方ないし、卵が痛むのも嫌だし、と僕はまた歩き出す、

果たして、ここで何が起こるのかと、半分興奮しながらも歩いていく、


少なくともあんな場所に行くことになるんだ、確実に何かがあったのだろうさ、

あっちの世界に行く穴的な物に落ちたのか(ラノベ知識)

勇者的な物を呼ぶために召喚されたか(ラノベ知識)

もしくはその召喚が失敗したのか(ラノベ知s)


だったらどうやってあそこから帰ることになるのかね~(ラノベts)、


本の読みすぎと言われればそれまでだけど、少しワクワクと心を弾ませて僕は歩く……それがいけなかった。、


前のことを考えるまま歩いていると、何処からか叫び声がする。


「……い……!! 」

「ん?、なんか上からメリメリと…………、何の音? 」

真上から聞こえる音に僕は上を見る。


見ると真上、とまではいかなくともすぐ近くで組み立てられていた大きな木材が今にも崩れそうな程ぐらぐらと震えだし、突然吹く強い風が加わることによって更に酷くなっていき、


そして


メキッ、


材木の一つが大きく折れ音を響かせ、その音に続き回りの木材がひび割れるような音をたて折れていき、僕の視界を埋めていく、


「え? 」

僕が気づいたときにはもう、遅かった。


ゆっくりと、スローモーションのように落ちてくる。


痛みが先か、倒れるのが先か、驚いている間に落ちてくるいくつもの木。

頭から地面に叩きつけられ、骨が砕ける音、痛いと感じるも間もなく



僕の意識はプツンと途切れた。









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