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二章 城

★にっこり大将軍 深く考えない

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「限度という物があるだろう、限度が!! 」

「なんだよ限度って、ちゃんと帰ってきたんだからいいだろうが、溜まった分の仕事もちゃんと片付けるぜ? 」

「そ・う・いう問題じゃあないだ・ろ・う・が!! 」

「ああもううるせぇ!! 」




目の前で今繰り広げられているで低レベルな言い争いをしているのは私と同じ、四人の大将軍の一人。


アルギス・ルオン・ルズ・バアル・ゼンブレルに、この国で一番上の地位にいる王であるイウァン・キング・ゼンブレル。


いくら私達五人が昔から共に育った幼なじみだからと言って戦争や遠征を終えた後に始まるこの二人の口喧嘩。


……もはや定番でいい加減飽きが来てますね。




「貴方達、口論の方はその辺に、部下達に示しがつかないでしょう」

二人がやいのやいのと騒いでいる周りでは、控えている騎士たちが皆苦笑して見ている……ああもう手遅れでしょうかね?。


「うるさいミネルス! 今日という今日はこのアホに今まで尻拭いさせられてきた事に対しての個人的な苦言をぶちまけてやるんだから邪魔をするな!! 」 

その言葉百年前の大戦の時にも言ってませんでしたか?


「はぁ? どこをどうとればこの俺みたいな完璧な男に苦情なんて出るんだ」

馬鹿力をとったらただのアホの間違いでは?


「どの口が言う! 隣国に視察に行かせたらその国の国民達に破壊王なんて言われて恐れられてる奴に言われたくないわ! 」

「んなもん俺の知ったこっちゃねえな」

「…………王家主催の夜会でテーブルや柱を破壊していたとの報告が上がってるがぁ……?! 」

あやおや、そういえばそんな事もありましたねぇ。


「香水くせえ小娘共がウジ虫見てえに群がってるもんでつい…………な? 」

「な?、じゃねえんだよおい!!、おかげで隣国との婚約が見送りになったじゃないか!! あそこまでこぎつけるまでに俺がどれっっっほど苦労したか!!」

「知らねえよんなこと、そんなこんならちゃっちゃか王座をあーと、孫? 曾孫?、に譲れば良い話だろうが」

イウァンの力説に対してアルギスはふんっと鼻息荒く腕を組んで言った。


「曾孫じゃない! ………………仍孫だ」

「そうだっけか? あの坊主は…………雲孫か、じじいになったな~」 

「喧しいわそれを言ったら俺と同い年のお前もじじいじゃねえかっ」


にやにやとした顔でじじいと言われたことに怒りを顔に現すイウァンにアルギスも額に青筋を立てる。


「あぁ?、この俺の何処がじじいだよじじい」 

「うるせえじじい」 

「うるせぇ救い用のねえ孫馬鹿」

「下半身が本体のエロ魔神に言われたくない」

「心までじじいのお前よりはましだ」

「脳が筋肉でできている奴には言われる筋合いはないぞ~? 」



…………貴方たち会話の主旨が変わってません?

しかも内容がさっきよりも子供っぽくなってますし…………。


やれやれと私はため息をついた。




「………ねぇ、これいつまで続くの? 」

今までのやり取りを終始黙って見ていたアルギスが拐……誘か、連れてきた子供のような外見のラグーン君。


いい加減待ちくたびれたようでその紫色の目を気だるげにさせて私に訪ねてきた。


それに対し私は首を傾げる。

「さぁ、…………いつまで続くんでしょうねぇ?、いっそのこと終わるまでほっときますか?」

下手に話しかけても火に油を注ぐようなことになりそうですしねぇ。


するとラグーン君は不満げな顔になり、ため息をついた。


「えぇ~…………、はぁ……めんどくさい」

「同感です」

一見、何処にでもいそうな子供のような外見のこの子、ですが目に少しかかる程度に伸びた黒い髪の間から見える目はやけに据わっている。

加え彼のまとう空気、何の前触れもなくあのアホが空間転移を行い彼の自宅から数百キロ離れたこの城に連れてきたにも関わらず、軽く驚いたように辺りをキョロキョロと見渡しただけで取り乱した様子が見てとれない


「いきなり場所が変わってびっくりしてるからとりあえずアルさんの指示を仰ぎたいのに今アルさん喧嘩してる……帰ろうかな」

「……帰れるんですか? 」

「その気になればね」

そういって、彼が自分の足元を指差せば、そこにまるで水のように波打っている影………………中々興味深い。




それにしても、彼が人ではなく魔族、しかもその中でも頂点に立つ魔王とこの子は言う。


私が見る限り、あの恐ろしいまでの力を持つ魔王には到底思えなません……。

他にもダンジョンマスターや彼が特殊能力を二つも所持していると言っている……数百年ぶりに私の好奇心というか、暴いてみたいという精神が膨らみますねぇ。




まぁですが………。


「あ、おいラグーン! ミネルスと目なんて合わせているんじゃねえ!」

「は? そぎゃあ!! 」

国王そっちのけでアホがラグーン君の所にきたかと思うとあっという間に覆い被さるように抱き込そのまま抱き上げてしまった。



これからゆっくり、彼らを観察していけば良いでしょう。






「は………?、あれがアルギスの嫁…………?え、にしちゃあ小さいし、は?、おいアルギスお前…………………ロリコンか…………? 」

おっと、イウァンはイウァンで面白い事になってますね……。


信じられないものを見るような目でデレデレと嫌がっているラグーン君を抱いているアルギスを見る王に、私はにこりと話しかける。


「間違いなく、ロリコンですね」




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