王太子専属閨係の見る夢は

riiko

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第一章 閨係のはじまり

1、プロローグ

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「シン、とにかくお前は黙って笑顔でいろ。絶対に喋るな」
「……」
「これも我が領のためだ。お前だって可愛い弟の首を切られたく無いだろう」
「……」

 馬車の中、父親が俺に話しかけてくるが、とても答える気にはなれなかった。なぜならこれから実の親に売られるのだから。

 父親からは、長男なのにオメガで使い勝手が悪いと言われ続けていたが、まさかこんな形で厄介払いされるとは思ってもなかった。

 俺の家は、かなりの下級のギリギリ平民でないというだけの名ばかりの貴族。そしてその家の長男として生まれた俺は、人として最低と言われる人種であるオメガ。オメガの長男に期待できることなんて、せいぜい、良いところに嫁に出すことくらい。その望みのためだけに俺は捨てられずに一応の教育を受けてこられた。

 待望の次男はアルファだったのもあり、弟のバース性が判明してからの俺はさらに煙たがられた。救いは弟がとても良い子で可愛く、俺を慕ってくれていることだった。

 容姿もオメガというには可愛くはない部類で、身長もそれなりにあり口が悪い。というか、こんな扱い受けて育ったら口も悪くなる。

 こんなオメガ、誰も欲しくないだろう? 

 俺はこの年でいまだに婚約者のいない、珍しいオメガだったが、それはそれで俺としては問題なかった。

 子供の頃から、オメガの需要は子供を産むことだけなんて教え込まれたら、そんな人生に拒絶反応をおこしてもおかしくは無い。とにかく成人したら親に使われる前にとっとと家を出て平民にでもなって自由に生きようと、幼い頃から領地の子供たちと親しくなり、処世術を学んでいた。

 それなのに、こんなことになるなんて。

 卒業後こんな家からは逃げる予定だった。今回も親に売られると分かった時点で家を出れば、こんなグダグダと文句を垂れることもなかったかもしれない。だが実際にはそんなことを考える暇すらなく、それが許される状況でも無かった。

 なぜなら俺を買った奴は、この国のトップ。まさかの王家からのご所望だった。断る権利なんか無いし、王命を無視したら父親だけではなく俺の可愛い弟も、領民たちにも迷惑はかかる。

 そう、俺は王家へと売られた。

 もちろんこんな下級貴族が嫁とか側室なんて夢のような境遇のわけもなく、オメガとしての需要を満たす最低限の使い道……男娼だんしょうとして俺は召し上げられることとなった。
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