運命を知っているオメガ

riiko

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番外編 2

北海道旅行 3

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 都内からすぐに行けて、安心して富裕層カップルが楽しめるヴィラ。初めはそれがコンセプトだったけれど、俺と発情期を過ごしたいがために、当時高校生だった司が発情期専用ヴィラを作った。そしたらそれが大ヒットした。

 司が父親になったことで、今回新たにファミリー向けを北海道に作ったというわけだ。双子が生まれてからずっとこの事業を進めていて、今年やっとすべてができたって、司が泣いて喜んでいたから、俺も嬉しかったけどさ。司、仕事を自分の欲望に使い過ぎじゃねぇか? 俺と付き合い始めたときも、ずっと司のホテルでヤッテたし……

 子どもには合宿気分で親と離れられる子どもヴィラなるものが、今回初の試みだった。要はその間、親たちはイチャラブを二人だけで楽しむというアルファの考えそうな事業だ。

 そこはゼロ歳から預かれる施設も作っているので、赤ちゃん連れでも大丈夫とのこと。ベテランの保育士さんを集めたって。

 ということで、今夜は家族五人で泊まるけれど、明日は一般の人……といっても司の知り合いとか、超富豪ばかりがオープン当初は予約で埋まっている。安心な環境で子どもは、見知った友達たちとここでキャンプしたり楽しく夜を過ごす予定。

 司が従業員とタブレットを見ながら話している隙に、俺は双子と遊んでくれているここの支配人に相談してネズミ型ロボとラングドシャをなんとかやめてもらった。

 支配人は、東京なら許されないかもしれないけど、ここなら中のことを絶対に拡散しない条件での宿泊という規定があると言う。外に漏れる心配がないということでこの事業の一環として、司の可笑しな要望を受け入れていたと笑いながら言っていた。そんな宿泊規定あるのかよ⁉ 

 でも、さすがに北海道の方に謝れって思ったよ。司の偏った幼少期の記憶、怖いわ。世間を知らなすぎる奴が欲望のままに何かを作ると……こうなるらしい。

 それほど秘密の楽園を目指したということで、北海道に限り会員資格が厳しかったとのこと。ここまでの施設なら富豪たちは安心して家族を連れてこられる。誰かが撮った何気ない写真に、自分の家族が入っていてそれを世間に拡散されるのは嫌だろう。

 支配人からは、愛する妻を誰にも見せたくないというアルファが世の中には少なくないと説明された。怖い奴らが世の中多いな……ん? そういえば司も俺が自由に出歩くのを好まない。それに、友達がこっそりと撮る俺の写真は全て回収しているのを俺は知っている。高校時代から俺の周りに対する目が厳しかった。

 学生時代はずっと司と過ごしていたし、司が大学卒業して本格的に社会人として仕事をしてからは、俺は双子を育てていた。護衛が周りにいるっていつだったか言っていたけど、西条の御曹司双子が狙われたら大変だもんなって、その時の俺は納得した。

 あれ? 俺って結構箱入り嫁してる? 司と付き合ってからは司とずっと一緒だし、子ども産んでからだって一人で出かけたことがないことに今気付いた。休日は必ず司付き。平日はなぜかいつも母さん付きで買い物してた。

 あれれ、俺、なんかめちゃ過保護っ子じゃない? 二十代なのに、これでいいのか?

 とまあ、そこはさておき!

 妻だけではなく子どもを連れての旅行は、いつも以上にアルファたちは気を遣うらしい。

 司は子どもたちを泊めるにあたって、かなり力を入れていた。ここで成功したら、このような秘密の村設定ヴィラを観光地に作ることを進めるって本社では事業が密かに進んでいるって、支配人が言っていた。最後にいい父親ですねと言われて、少し照れた。

 司は頭がいいけど少しおバカ。だけど、それも俺の考えを超えるちゃんとした計画があったんだって、改めて夫である司を尊敬した。

 チェックインを済ませると、俺たちは宿泊する戸建てに移動した。一軒一軒がちゃんと離れていてプライベート感が保たれている。リビングに着くと、すぐに息子たちが走り出す。

「探検だぁぁー!」
「蓮まてよぉー!」

 双子が騒ぎ出してあっという間にどこかに行ってしまった。それを見た俺と司が笑う。

「こういうところ来ると楽しくなるの、わかるわ」
「ああ、正樹も初めて利用した時、探検だぁー! って俺を放置して楽しんでたよな」

 司の言葉に俺は赤くなった。そんな昔のこと、今言うなよぉ。しかも幼稚園児と同じこと言ってたわけ? あの頃のおれぇぇぇ!

「みなまで言うな。初めて見たらそうなる。あいつら見ろよ、さすが俺の息子だ」
「ああ、そうだな。正樹は出会った頃は幼稚園児のようにわんぱくだった」

 むむむ、こいつ俺のことバカにしたな! へっへーん。お前はそんな俺にメロメロになっちゃったんだからな、思い知れ!

「その幼稚園児に手を出した奴はどこの誰だよ」
「俺だな、愛してるよ」

 お、お、思い知ったのは俺のほうかよ⁉ こいつは相変わらず日本男児らしからぬ、ナンパなやつめ! 昼間っから恥ずかしいっ。しかも娘の前で。

「ばっ、おまっ、いきなりそういうモードに入るなアホ!」
「はは、相変わらずすぐに照れるの、本当に可愛いよ、正樹」
「んん」

 蘭を抱っこしたまま俺にキスをする司。俺は条件反射で、そっと瞳を閉じてこいつのキスを受け取る。

 そこでばたばたーっと足音。探検が早くも終わった息子たちが戻ってきた。やっべ、キス見られちゃうところだった。っつーかはえぇな。もっと両親のいちゃいちゃ時間くれよ。

「ねぇ、ねぇ、今日僕たちどこの部屋で寝ていい?」
「ねぇねぇ、明日本当にそら来るよね! 明日はそらと寝る」
「え?」

 双子が興奮して、俺の足にまとわりつく。その間、司はリビングに用意されていたベビーベッドに蘭を寝かしていた。司が俺にそういえばと口を開く。

「ああ、言い忘れてた。明日櫻井一家を招いているんだ」
「え? あの忙しい二人、よく掴まったな。北海道の会員にもなってたんだ?」

 櫻井の家は相当な金持ちだから、ここの会員になるくらい大したことないだろう。それに奥さんは世界のトップモデルだしなぁ。これだけのセキュリティーなら安心だろう。

「ああ。ゴールデンウィークは日本で休暇を確保したって。なんでもカイは北海道の銘菓に目がないらしくて、櫻井と話す電話口で後ろから小樽小樽って、うるさかったぞ」
「そうなんだ」

 知らなかった。そういう大事なことは早く言えよと思いつつ、それはそれで嬉しかった。

「あと、明と近藤の一家も来るぞ」
「ええ? あいつらってここの会員になったの?」
「いや、俺が誘ったから特別に今回だけな」
「そうなんだ」

 特権利用だ。でもあいつらは大富豪ってわけじゃないからな。俺と同じ庶民で、二人は堅実なサラリーマンをしている。

「ああ、ゴールデンウィークは繁忙期だろ。だから中日の平日に二泊三日だ」
「そっか、二人の奥さんたちはホテルで働いてたもんね。忙しい時期によく捕まったな」

 明の嫁さんは西条グループのホテル内に入っている花屋、近藤の嫁さんは外資系ホテルの有名パティスリーに勤めてた。で、櫻井の奥さんがトップモデルだろ。みんなすごいわ。俺だけ社会人経験なく、学生結婚でそのまま子ども産んで専業主夫だった。人生どうなるか本当にわからないわ。まさか俺が子ども産むとか、こんなイケメンと結婚するとか、全く思わなかった高校時代だったのにな。

 しかし友人関係だけは高校の時から変わらず、俺たちは四家族で仲良くしていた。学生時代、司と櫻井は色々あったけど今は司の一番の友達なんじゃないかな? 近藤と明はあれから家庭を持って家族ぐるみで付き合ってるし、なんだかんだ学生の時から俺たち変わってない。そこに相手と子どもができたくらいだ。



 ※櫻井のお嫁さんは……『運命を知りたくないベータ』主人公でございます!!
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