運命を知っているオメガ

riiko

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本編

56、俺の相手はいったい

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 酷い気分だ。

 今回のヒートに関しては何も覚えていない。前回もそうだったけど、でもこれは酷い。俺は一体誰に抱かれたんだろう。そしてうなじはどうなった?

 辺りを見渡すと、そこは前に泊まった司のホテルの部屋に見える。

 あの場で司に犯されて、そして気を失った。その後は? 違うアルファを手配して、自分のテリトリーで秘密裏につがい契約させたのか? 

 相手は、誰だ……? 

 司の部下とか会社の人間? 俺の身なりを見てみると、パジャマを着せられている、相当几帳面なアルファなのか? 

 司との情事の後は、帰宅するまで服なんか着させてもらったことなんてない。ずっとやられて、さらには終わってからも裸を触ってきていたから、これは、今回の情事の相手は司じゃない、涙がでてきた。

 思わず自分を抱きしめた。

 風呂に入れられたみたいで、俺の体からは自分のフェロモンも、司の匂いも何もなかった。俺のつがいになったであろうアルファの匂いすら感じないくらい、丁寧に洗われたのか石鹸の香りしかしなかった。

 最後に残る記憶が、せめて司との繋がりで良かった。知らないアルファとのセックスなんてひとつも覚えてなかった。だからそんな事実は無かったと思いたい。

 今鮮明に浮かぶのは、熱にうなされた司の熱さだけ、あの吐息、熱い体。こんなにも覚えているのに、俺のつがいは司じゃない。

 この丁寧に着させられている、パジャマがそう言っているんだ。それにしても俺が手に通すこともないような、上等な生地、一応大事にされたのかな? もしかして、あの支配人のイケオジ!? いや、あんな素敵な人をあてがってくれるはずがないし、なにより年が離れすぎている。

 俺が司と友達で居たいと願ったから、司をずっと裏切り続けていたから、そしてそんな俺の浅はかな考えに櫻井を巻き込んだから、だからきっとバチが当たったんだ。

 浅はかな俺の考えなんて、運命の前ではただただ無意味なことだったんだ。

――ああ、俺は一体誰のつがいだ――

 その前に、うなじっっ! 確認しなくちゃ、痛みは? わからない……身体中が無理なことをした痛みでどこが痛いかとか既に感覚はない。随分、乱暴に抱かれたらしい、体もキスマークどころではなく、噛み跡だらけだ。暴力振るうようなアルファだったらと思うと怖い。

 やっぱり怖いよっ。そういえば櫻井はどうしたんだろう? 変なことされてないといいんだけど、そんなことを動かない体でベッドの上で考えていた。

 ガチャっとドアの開く気配がした。誰かが入ってきた? ついにつがいと対面か……。はあ、気が重い。そしてドアの前に立つ男に目を向けた。

「えっ、な……んで」
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