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本編
33、告白
しおりを挟む司は俺にキスをして、そして衝撃の言葉を言った。
「セフレなんて思ってない。それに友達だけど、恋人、俺と付き合おう?」
「えっ? なんで……」
「なんでって、正樹が好きだからだよ、散々言っているだろう」
それは、ただの行為を盛り上げる睦言じゃなくて?
「でも、司、オメガ嫌いじゃ」
「正樹は好きだ。正樹と出会って、オメガが嫌いなんじゃなくて、正樹以外のオメガが嫌いだって気がついたよ」
「な、なんだよそれ、でも……」
「正樹は? 俺のことどう思っている? 体の相性は相当いいはずだし、それに正樹だって俺を好きなんじゃ無いの?」
えっ、バレてる?
好きだよ、司が俺を知るずっと前から好きだった。どうしたらいいんだろう、これは好きだって言って受け入れたらいいのか?
司が俺を好きだと言うなら、オメガとして受け入れてもいいのか?
「そんなに悩むところ? もうお互い両思いなんだから、素直に受け入れたらいいのに、何が不安?」
そう言って、俺の目元や口にキスをしてくる。不安……そうだ、何が不安だ? どうして、この状況に素直に喜んで司に抱きつけないんだろう。
「司、俺みたいなオメガらしくもない、ただの男にそんなことを言ってくれるのはありがたいけど……」
「けどの先は聞かない。イエス以外の言葉は却下だ。俺と正樹は両思いで恋人、いいよね?」
俺はどうしても頷けない。何かが、本能が、ダメだという。
「いいよねって、だってっ。今更だけどさ、そもそも司はどうして最初に会った時、俺の名前を普通に言っていたの? いつから、俺を知っていたの?」
そうだよ、俺だけが司を知っていて、司は俺を知らなかったはずなのに。初対面で俺の名前を親しげに言った。あの時はヒートだったから深く考えることもできなかったし、その後も当たり前のように司が俺の隣にいた。その疑問さえ解けていないのに、好きなんて突拍子もないこと。
「最初に会ったのは、櫻井から助けた時じゃない」
「えっ」
「正樹が放課後に、一人で初めてのヒートを迎えた時あっただろう? 朝に会った俺の友達の光輝、あいつ生徒会役員で俺はあの時そいつに仕事を押し付けられて一人で生徒会室にいたんだ。それでお前のヒートに気がついた。抑制剤を持っていったのは俺だよ。だから正樹を知った」
まさか初めて運命に気付いた日、あの日の司は俺を認識した? でもあの時、俺に暴言を吐いた。そんな奴が俺に好意なんか持つか?
それに、俺を拒絶したじゃないか!
「あの時は俺一人で本当に良かった。他のアルファがいたらどうなっていたかと思うと……」
「で、でも! 俺の初めてのヒートの時、俺から逃げた、なのに、なんで今更」
「逃げたって……、あのまま襲われたかったの? 俺はフェロモンに負けてレイプするような、そんな卑劣な男じゃない、耐えた俺を褒めて欲しいくらいだよ」
襲われたかったよ。
だってそうだろう、運命の番ってそういうものだって母さんと見たドラマでそう言っていた。
「俺のフェロモンって、耐えられるくらいのもの?」
「それで怒っているの? 俺は抑制剤ずっと飲んでいるからな、それでも他のオメガに惹かれることなんてなかった、でも正樹の匂いは正直くらっときたよ」
くらっときただけ?
俺はあんなに苦しかったのに。一瞬でこいつが運命って知ったのに。それなのに、司だけは運命に気づいてない? 抑制剤を飲んでいたから? でも、それでも運命なら抗えないんじゃ、わからないよ、わからない。それなのに、俺たちが付き合うのは決定事項だって言い切る。
――こいつはまだ運命を知らない?――
「俺は、ヒートに乗じてアルファに乗ってくるオメガしか知らなかったから。あのヒートに耐えた正樹の強さに驚いたし、同時にその強さに惹かれた。あれから目で追う日が増えて、心の中でずっと正樹を呼んでいた、自然と正樹に恋をしていたんだ」
「恋……」
まさか司が俺を目で追っていた? フェロモンに惹かれたんじゃなくて? でも運命を知らないアルファだ、フェロモンに惹かれたなんてわからず、それを恋と勘違いしたのかも。オメガのヒートを憎むと有名な司。俺があの時抵抗したから、好きになってもらえた? わからない。
「わかった? 俺の恋人になるしかないって」
やっぱり、わからない。
ここで抵抗しても結果は決まっているのだろう。運命のことはわからないからもう考えないようにしよう、でもなんとなく好きだとはまだ言えないし、付き合うとも答えは出せない。だからといって否定もしない。俺は酷いやつかもしれない。
「強引なんだな」
「いつか正樹からも俺を好きだと聞かせて、今はまだ流されていていいから、好きだよ」
俺は答えられないでいると、司にまた組み敷かれた。
途中食事をとったり風呂に入ったりもしたが、そのままその日は明け方まで繋がっていた。
恥ずかしかったけど、全てを受け入れてそして快楽に飲まれた。オメガの本能に従うことがこんなに楽だとは思わなかった。
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