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本編
19、西条がおかしくなった
しおりを挟む怒ったと思った西条は……はい! やはり怒った声で俺に向き合ってくる、チビリそう。
「……なんで、そんな話になる?」
「あっ、都合いいよな、ほんとごめん。やっぱりフェロモンレイプは犯罪だし、おれ警察行けばいい?」
やはりフェロモンで誘うようなオメガは許せないか。どうしたらいいんだろう。
「そんなこと望んでない。正樹があんなアルファに襲われなくて良かったし、俺も正樹を抱けて嬉しかった。お礼ならキスをしてもいい?」
「えっ!? な、なんで?」
俺を抱いたのが嬉しかったって、言った? それになんでキスなの? もしかして、運命に気が付いて俺を受け入れてくれたとか? 俺は抱かれた時もキスして欲しくてたまらなかったけど、西条が嫌な思いすると思って必死に耐えたんだった。
誰か、ここに来て今の状況を教えて欲しい。今、何がオキテイルのでしょうか?
「だって、現実じゃキスだけは許してくれなかったから、俺、キス好きなんだよね」
「え、でも……」
キス、好きなのか。それにしても、相手は誰でもいいのかよぉ! 俺だよ!? オメガだし、男だし、俺だよ!? だから……俺ですよ?
「俺にお詫びしたいんじゃないの? キスで許すって言っているのに、してくれないの?」
「わ、わかった」
何を考えているか理解できなかったけど、それで済ませてくれるなら頬にキスをした。
「これでいいだろ? だからもう忘れてっ」
「ふざけているの? そんな子供みたいなキスで許すと思っている? まじめにやれ」
まじめにやれって、そんなぁ! 俺、キスしたことないしっ! いや、決して不真面目にやったわけではない。どうやればいいんデスカ。
「うっ、なんで? 俺したことないし、下手だと思うし、ってか俺なんかとしなくても……」
「ふふっ、またそんなこと言っている。ほら! 早く」
急かされるように唇にチュッと軽めのキスをした。柔らかいっ! ああっ、ほんのちょっと掠っただけでも、死にそうに嬉しい!
俺の喜んでいる顔なんか見られたら西条が嫌な思いする、真っ赤になった顔を見られたくなくて、すぐに離れた。はずなのに、何故か西条から深い口づけをされている!
えっ!?
「んんっっっ、やっ、んんっ」
「ふっ可愛い、ほら、もっと口開けて、そう、上手だよ」
「ふあっ、んんっっっ、もっ、くるしっ」
気持ちいっ、舌が俺の中で蠢いている。あれっ、呼吸ってどうやるの? くるしいっ、唇が少し離れた時に思いっきり空気を吸ったら、また塞がれる。
「はあっ、はっ、もう、いいだろ! 離せよっ」
「ふふ、素直に受け入れるだけの正樹も良かったけど、必死に抵抗する姿も可愛いな」
「俺っ、男でオメガ! どうしちゃったの。フェロモン嗅いでおかしくなった? 大丈夫か?」
そうだよ! あの時、運命の俺から逃げたやつが。やっぱり抱いておかしくなったのか? それにこれは何、ご褒美? 嫌がらせ?
「ああ、おかしくなったよ。正樹のフェロモンは媚薬だ。俺を虜にした責任は取るよね?」
「と、りこ? 西条本当におかしいよ、医者に見せた方がいい」
「正樹は本当に可愛いな、好きだよ、キス、もっとして」
西条は笑っている。笑っている姿もかっこいいけど、これは嫌がらせだな、オメガとして助けてもらった身としては抵抗できないけど、本気で西条のことを好きな俺にとっては酷い話だ。俺を好きじゃなくてキスが好き。俺の恋心を無闇に傷つけられている気がして嫌だった。
「っな! からかっているのか、それなら良いけど。オメガ相手にそういう言い方はよした方がいい、そんな風に迫られたら勘違いするから! 気をつけろよ」
そうだよ! 鉄の西条がこんなふうに笑うなんて知ったら、みんな惚れちゃうだろ! 俺は大丈夫、すでに惚れているから、ちが――う!
自分の身分はわきまえている。そう、俺だけは西条を困らせる行為をしないようにしなくちゃ、せめて運命の番として、番えなくても西条が穏やかに暮らせるように俺が邪魔することだけは避けて通るんだ。
「勘違いとか酷い、俺はいつだって本気なのに」
そう言ってまたキスをしてくれた。
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