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本編
20、運命と過ごす
しおりを挟むご褒美みたいなシチュエーションのキスの嵐が終わると、西条が医者からもう大丈夫とお墨付きをもらったと教えてくれた。だから俺は帰るって言ったんだ、だってこれ以上ここにいたら俺の心が持たない。
起き上がって、ベッドから降りようとしたら、見事に腰から崩れ落ちた。あれっ、立てない?
「大丈夫か? 初めてで体が言うこときかないんだろう、もう少し休もう」
恥ずかしいっ! 処女喪失してその相手に支えられているなんて。初めてってバレてたんだな、処女を抱いたなんて重いよな。
「なっ! だ、大丈夫だ。こんなのすぐ良くなる」
「大丈夫ってわかるのか? 正樹は俺が初めてじゃないの? 経験あるから大丈夫って言っているのか?」
「な、ないよ! 無いけど、これ以上世話になるわけにいかないし、悪いけどタクシー呼んでもらえると助かる」
「呼ぶわけないだろう。落ち着いていても、俺の匂いガンガンついていて外に出したら、危ない」
「えっ、匂いついていると危ないの?」
自分の体からは、あの時のオメガのフェロモン臭はほぼ感じられない、その代わりに西条の匂いがべったりとくっついていて幸せだった。いい匂いしかしないんだけどな。
「はぁ、いかにもアルファに抱かれましたって気だるさと色気がダダ漏れだから、男に襲われかねない」
「……!」
な、にそれ。そんな淫乱な人種に見えるの? 西条にそんな風に思われているのか? 早く俺の体から情交の跡を消さないと。いつまでも自分の匂いが付いているオメガなんて、西条がうんざりしちゃうかもしれない!
「じゃあ、迷惑じゃなければシャワーだけ借りてもいいか?」
「いいよ、さぁおいで」
「え? なにそれ」
なぜか西条が、両手を広げて待っていた。
「だから、正樹は今歩けないんだから抱っこして連れていくから」
「やだよ! 俺男だよ、男を抱っことか、ほんとにどうしたの? 普段からそういうキャラなの?」
「さっきから煩いなぁ。そんな精液べったりついていやらしい状態をずっと見させ続けられている俺の身にもなって? 今すぐ襲いそうなのを我慢しているんだから、早く風呂入って欲しい」
――西条はキレていたんだ――
襲いそうって言った。
それは俺を殴らないように必死に耐えているってこと? 嫌なのに抱っこしようとしてくれている。一刻も早く俺についている自分の匂いを消さないとイライラして俺を殴りそう、だから早くしろと、そういうことか。
「ごめんっ、じゃあ、悪いけど連れて行って」
俺を殴っても後味悪いだろうから素直に従った。そしたらまさかの風呂まで一緒に!?
あぁ、俺がこっそり西条の匂いを残さないように監視しているんだ。信用ないキモオメガって思われているんだろうな。
恥ずかしいけど、嫌だけど、西条のしたいように隅々まで洗われた。まさか後孔までも洗われるとは思わなかった。抵抗してはダメだからされるままにしていたけど、俺の中に残る西条の種もしっかりと残さず流されて、思わず泣いてしまった。
悲しい。何一つ残してくれない。湯船に浸かり、後ろから抱きしめられて、ようやく俺の涙はとまった。
「あのっ、お風呂入れてくれて、あ、りがとう」
「どういたしまして」
後ろからもお湯をかけてくれて優しい。泣いたから気を使わせたのかな、疲れた体のケアをしてくれる、そして全身を温めてくれる西条。これでもう俺たちの接点は終わるのかな。
「西条……」
「次、西条って呼んだら、許可取らずに後ろを犯すよ」
びっくりした! まさか、オメガ如きが西条って呼びすてにしていたのをずっとイラついていた? 俺は一瞬考え言い換えた。
「ごめんっ、さ、西条君」
「犯されたいの?」
えっ、何を間違えたんだ? 怒っている!
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