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本編
59、運命への想い
しおりを挟む「お前はバカだ」
「そうだね、俺は正樹相手だとバカになるらしい」
本当、バカ。もう一生離してやらねぇんだからな! 覚えていろよ、バカアルファ。
「せっかく、運命から解放してあげられたのに」
「うん、でも見捨てないでくれてありがとう。櫻井のことは正直驚いたし、裏切られた感は半端なかったけど」
そうだ! あいつは今?
「あっ! 櫻井はどうした? あいつを拉致しただろ!」
「番になったばかりの男の前で、前の男の話?」
前の男って、なんだ。
司はベッドに横になり俺を後ろから抱きかかえて寝転んだ。
「前のって、櫻井とは何もない。司が運命を知ったら、俺は他のアルファにあてがわれるって思っていたから。だから運命に気づかれる前に、せめて知っているアルファの番にしてもらおうと思って協力してもらっていただけだから」
「それについては、本当に俺がバカだった。今更謝っても遅いけど、今まで正樹を沢山傷つけて本当にごめん。まさか正樹が運命だなんて思っていなくて、だから正樹が運命を羨ましいって言った時、俺焦ったんだ。まだ出会ってもない運命のアルファに正樹を取られるって」
まさか、司がそんな気持ちでいたなんて。そんなの、言ってくれなきゃわからないよ。
俺は体勢を変えて司に向き合った。
「なんだよ、それ? どうしてそうなるんだよ!」
「正樹は運命に憧れていたんだろ? 入江達の出会いが素敵だなんて言ったじゃないか、俺との出会いだって奇跡的なものだったのに!」
「お前、子供か!? そんな理由で」
「俺にとっては、人生最大の問題だよ。正樹以外もう考えられなかったんだ! たとえ俺の前に運命の番が現れても正樹以外を番にしない、そんなオメガには他のアルファの番を見つければ、俺は運命に惑わされず正樹だけを愛することを信じてもらえると思って、あの時正樹にそう言ったんだ」
俺は言葉を失った。あの時の言葉の裏にそんな想いがあったなんて。まぁどちらにしても酷い話だけどね。
「お前、世の中のオメガをバカにしすぎだろ」
「うん。それは否定しない、俺は正樹さえいればアルファだろうがオメガだろうが、他は正直どうでもいいから」
「はぁ――、ほんとお前バカ」
「うん、ほんとごめん」
司は俺を抱きしめて、弱気にぼそっと言う。
「でもさ、正樹も罪な男だよね? 櫻井の気持ち知っていて利用したんでしょ?」
そうだよな、すいません。
「うっ、でも番になっても友達みたいに楽しくやっていける相手だと思ったから。俺は司に愛されないなら、これから誰かを好きになるとは思えなかったし、櫻井いい奴だったし」
「まさか、そんな斜め上をいった考えだったとは。百合子さんから連絡もらった時、いったい誰といるのか全く予想つかなかった。あの時の俺の調査能力を褒めて欲しい」
今となっては、司が来てくれて良かったって思う。
「ごめんなさい」
「それにしても熱烈な愛の言葉だよね。そんなに俺のこと好きだったのに、我慢させていてごめんね、俺も正樹が好きだよ」
さっきから耳元で話すから、息がうなじにかかる。俺は真面目な話をしているのに、ビクビクって度々感じてしまうのを耐えるのに必死だった。
「ふふっ感じている? 可愛い。櫻井なら大丈夫。俺が殴ったから手当の為に連れ出しただけだ、部下がきちんと謝罪しているはず。それに二度と正樹に近づくなってお願いしていると思う」
お願いって、脅しの間違いじゃ? でもそっか、良かった。また犯罪者扱いされたらどうしようと思っていた。櫻井には本当に最低のことをしてしまった、今度きちんと謝らなくちゃ。
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