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本編
4、恋をしていないのは俺だけなのか
しおりを挟む衝撃的なアルファオメガ発言はその時だけで、その後もクラスメイトとは男同士らしく楽しく過ごしていた。約束通り、俺をオメガ枠としては見ずに普通の友情が続いてくれてホッとした。
放課後ゲーセンやカラオケ行ったり、そして高校一年生も少し経って学校生活に慣れてきた今、一人二人と周りは彼女ができていった。
良かったな、と言いながらも遊んでもらう機会も減って寂しくもあった。
俺は……オメガは、彼女作れないみたいなあの時の会話が引っかかって、以前のように恋がしたいとか、彼女が欲しいとか思わなくなっていた。
だって、仮に付き合うことになってもその子はオメガの彼女というように、変な目で見られるんだろう、そんな可哀想なことはできない。そもそも女の子は俺と仲良くなっても女友達みたいなくくりで接してくるから、誰も男扱いしてくれない。ますます惨めになってしまって、むしろ彼女なんて欲しくないんだって自分に言い聞かせるようになっていた。
こぞってカップル成立してく中でも、言い寄ってくる女の子が沢山いるくせに、櫻井だけは彼女を作ろうとしなかったので、いつのまにか一番仲が良くて、クラスで多く時間を過ごす友人になっていった。
「ねえ、櫻井はめちゃくちゃモテるし、こないだも告白されていたよね。なのにいつも断っていて、理想高いの?」
「いや、俺すでに好きなやついるし」
「そ、そうなんだ」
俺が知らないだけで、櫻井はすでに彼女がいたんだって思ったらすこし寂しく感じた。オメガの俺にはそんな話もできない? 友達だと思っていたのは俺だけだったのかな。最近だんだんと卑屈になっている自分がいる。なんでこの世の中、バース性なんてあるんだろう。
この頃になるとバース性が嫌で仕方なかった。ベータのまま、中学の時のように何も考えずただ友達と過ごしていた環境がたまらなく懐かしく、そして愛おしかった。
「正樹? どした」
「ううん、みんな好きな人がいて羨ましいな」
「正樹もそういう気持ちにならないの? あっ、でも俺以外のアルファはだめだ。アルファの中にはとんでもないやつもいるんだ」
お前以外のって、櫻井はいいやつだからアルファでも偏見は無い。
「う――ん、誰がそうか俺には見分けつかないからなぁ。アルファって一体なんなの? 俺、櫻井以外のアルファ知らないし、櫻井見てもアルファがなんなのかはよくわからないよ」
「そうだな、俺以外知る必要ないけどオメガは発情期があるだろう? その香りにアルファは抗うのが難しい。発情してなくてもほのかにいい匂いがするから、性欲の対象になる。オメガとの性交はベータとのそれと比べ物にならないほどいいんだよ。特に相性が最高の相手や、運命の番なんかは、まず逆らえない」
「ふ、ふ――ん……」
俺がびびってしまうと、櫻井はにっこり笑っていた。
「正樹にはまだ難しい話だったかな、とにかくオメガと見ると抱きたくなる野獣アルファもいるってこと。だから身を守って、とにかくアルファには近づかないで」
俺を女扱いしているような言葉に、俺はむすっとして答えた。
「へ――、オメガの女の子は大変だなっ」
「あのさ。正樹もオメガなんだよ、オメガに男も女も関係ないから」
「は? それなりに喧嘩ならできるし、こんな男くさい俺に欲情するやついねぇだろ、櫻井は心配症だな」
「男くささ、微塵もないよ」
「……」
櫻井は呆れた顔をした。
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