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日本編
30、幸せの結末 ※
しおりを挟むそして僕と類は、あの日の入籍から一年後に結婚式をした。
本当はこの日に入籍のはずだったのに、あの頃の急な出来事で、バタバタとしてしまいハプニングだらけの新婚生活が落ち着くと、あっという間に結婚式。この一年は怒涛のように過ぎていった。
順番が違い過ぎるけれど、僕たちにはそんなこと関係なかった。僕と類の心は出会った時から、ゆるぎないものだったから。
「いい結婚式だったね」
「うん、サクラジュエリーの大事な息子で、ラノキリアジャパン社長の結婚式だから盛大だったよね、こんな素敵な会場を用意してくれて、司には感謝かな」
あの時の手紙、ネチ男のネチネチと正樹正樹という内容がほぼだった。ついでに書かれた「結婚式は俺のホテルを使え」という申し出。
結果、ビリーの影響でラノキリアジャパンが盛り上がり、類が時の人になってしまったから、それくらいの規模じゃないと間に合わなかったので、今となってはありがたい申し出だって思える。
「それだけじゃない、ビリーの秘蔵っ子のkaiの結婚式だよ? メディアが騒いでいたのは、ほとんどがそれだからね。みんなラノキリアモデルkaiの美しさに見惚れていた、俺の奥さんなのに」
類はちょっと不貞腐れた言い方をした。確かに、ビリーがまた僕を宝石で着飾ったから、報道陣も凄かった。結婚式で嬉しいよりも、億を身につけていて怖かったよ。こんな緊張感久しぶりだった。僕というよりラノキリアの最高傑作としての作品に、世の中は沸いていたんだけどね。
「ふふ、僕はいまだにモデルとしても需要があるようで良かった。最近、子育てがメインで生活に追われてすっかり所帯じみた気がしたけど、たまにああいう場に出るのも身が引き締まっていいね」
「海斗が所帯じみている? こんな美しい人が子育てに奮闘しているなんて、世間は想像つかないんじゃない? むしろ所帯臭撒き散らして、俺を安心させて欲しいくらいだよ。海斗はいつまでも美しい俺の女神だよ」
相変わらずの類だった。
「ふふ、類、愛してる」
「俺も、愛してる」
結婚式を挙げた、司のホテルのスイートルームに泊まっている。今日は息子を、父と母に任せている。二人きりで過ごしなさいと言われたので、遠慮なくそうさせてもらった。
「それにしても、正樹可愛かったね」
「正樹? 俺は常に海斗だけが可愛く見えるけど、そんな場面あった?」
「もう! 僕がブーケを手渡した時の顔、凄く嬉しそうに微笑んでいてさ」
「ああ、あれか」
去年、類のお友達の沙也加ちゃんに僕は初対面なのに、ブーケを貰った。きっと沙也加ちゃんの友達なら正樹が貰うはずだったんじゃないかな? だから今度は僕が正樹に渡した。正樹たちは来年入籍するって言っていたからちょうどいいし、司には世話になりっぱなしだったから、正樹の喜ぶ顔は、実は司へのプレゼントでもある。
「結婚式の日に他の男の話なんて、海斗らしくないな。初夜を楽しもうよ」
「初夜って……僕たちはもう子供もいる親なのに、まだ初夜なんて言うの? もう、類は可愛いな」
「だって、二人きりは久しぶりだし。今日ばかりは空に気を遣わずに思いっきり海斗を楽しめる‼」
「空がいても、シテるでしょ」
「でも、中断もするでしょ。今夜は途中で抜かないからな」
僕たちの息子は、空という名前。
僕の父が名前をつけてくれた、とても明るくて可愛い男の子だ。まだまだ手がかかるけれど、本当に可愛い僕の天使。実は僕以上に類が空にメロメロなのに、周りが驚いていた。
実際、親としての自覚がわくのかは不安だったけれど、僕よりも先に類が父親になってしまった。スパダリっていうの? 類は仕事を始めて忙しいはずなのに、おむつ替えも、お風呂に入れるのも、僕よりもうまくて驚いたし、抱っこも僕より上手で、空はパパっ子になってしまった。ちょっと悔しいけどパパと息子が仲良くできるのなら、まぁいいか。
陸斗は空を見ても、ただただ甥っ子が可愛いという風で記憶は全く戻る気配がなかった。今となっては類が空にメロメロだから、記憶が戻って空が欲しいと言われるのは少し怖い。僕だってもう母親としてあの子を愛している。
でも陸斗には明もいるし、記憶が戻ったとしても大丈夫な気がする。
あの二人は順調に交際を続けて、明が前のめり過ぎて陸斗は焦っているみたいだけど、ああ見えて紳士だった。まさかのいまだに陸斗を抱いていないらしい。類から聞いて驚いた。せめて陸斗の発情期が戻ってから始めたいって、ロマンティックな一面があるのには驚いたけれど、弟が大事にされているのは嬉しい。
岩峰先生が言うには、もうすぐ発情期が始まるらしい。フェロモンの数値を見る限り、あと少しって言われていた。
最初の交わりは、あの特別室でするんだって。
明が、何かあったら怖いからって岩峰先生にお願いしたとか。明は意外に慎重派らしい。陸斗は、みんなに知られて初体験するのは恥ずかしいって真っ赤な顔で言っていたけれど、あそこの特別室なら問題ないよって教えてあげた。だって僕も類と翌日の昼までずっとシテいたからね、居心地最高だったって教えたら、陸斗はまた真っ赤な顔をした。
陸斗は記憶がないから、本当に初体験なんだ。うぶな弟は可愛かったな。
「海斗、俺との時間に考え事?」
「ふふ、今までいろいろあったけど、やっとこの日が来て、しかも最高に幸せで心配事が何もないんだよ、凄くない? 今、幸せに浸っていたんだ」
類が真剣な顔で僕を見る。
「海斗、ずっと俺と生きていて……どんな未来も、全てを俺が支える」
「類……。類と生きていくよ。僕と出会ってくれてありがとう。これからもずっと離さない」
僕たちはキスをする。
「あっ、類、フェロモンしまってよぉ」
「だって、こんな色っぽいお嫁さんを前に無理だよ。海斗だって出ているよ、可愛らしい花の香りが」
「類はさわやかなオレンジだよね、最近、類の香りが鮮明にわかるようになってきた」
「俺はもう、海斗のフェロモンはすぐにわかるよ、甘くてスパイシーで好きだな」
僕のオメガ化はますます進んでいて、たびたび類がラットを起こすし僕からも花の香りがしてきた。そして類が性的に興奮すると、僕も類のフェロモンがわかるようになってきた。
僕も相変わらず岩峰先生の診察を受けている、類も一緒に受けてお互いのフェロモンを調べていると、多分次は本格的なヒートになるだろうって。こないだ類がラットを起こしたばかりだから、次の予想日をだいたい当てているので、その時はまた息子を親に預かってもらう約束をした。
孫が可愛くて仕方ない両親は、よく預かってくれるし空も懐いているから問題ない。とにかく次に、僕はオメガとしてヒートを経験するらしい、それはとても楽しみだった。でも今は類とアルファとベータとして、いつもの交わりをする。
類が丁寧に僕の後ろを、香りのいいオイルを使ってほぐす。これもいつも通り、まだオメガの分泌液は類のラットの時しか出ないから、しっかりといつも通り僕をほぐしてくれる。
「あっ」
「ちゅっ、ふっ、海斗、可愛いっ」
「ああ、あっ、両方は、だめっ、ああ‼」
類が後ろを指でほぐしながら、前をしゃぶる。とにかく甘い、いつでも大事に大事に僕を扱い、先に僕をイカせてくれる。
「ふふ、最近忙しかったからね。たくさんでたね」
「もう! 夜は長いんだから、あんまり早く疲れさせないで。イクなら類のでイキたかった」
「イカせるよ。もう少しほぐしたらね」
「あ、ああ、あん、大丈夫。もう挿れてよっ」
「凄い、フェロモン。もう十分出ている。くっ、俺また海斗に負けちゃう、挿れるよ」
ゆっくりと類が挿入ってくる。気持ちいい、ひたすら快楽を体がつかみ取る。
「ああ、あンッ、あ、あ、気持ちいっ、類ッ、すき、すき、あああ」
「くっ、愛してる、海斗」
類が丁寧に動き出す。奥まで挿入いると、そこでコツンと僕と類が繋がった。
「ああ、当たった。あたってる」
「うん、当たった。海斗、動くよ」
「う、うん、あ、あ、ああ」
「くっ、絞り取られる、くっ、う」
類の動きが早くなる。僕は必死に類にしがみついた、類の首元に顔を寄せると、類の逞しくてさわやかな香りが僕の鼻腔に入り込む。
「あああ、あん。はぅ、あ、ああ、出るっ‼」
「海斗? うっ、」
僕が自分のお腹に、温かいものを吐き出すと、僕のお腹の奥には類のが出てきたのがわかった。温かい、しあわせ、嬉しい、愛おしい、幸せに触った瞬間だった。
「類、愛してる」
「海斗、好きだよ、ほんと好き、どう表現していいかわからないほど愛してる」
「うん」
僕たちはしばらく動かずにお互いを感じていた。そして、その日はもちろん盛り上がり、二日間ホテルの部屋から一度も出なかった。
チェックアウトの時、僕は立てなくなり、類に抱っこされてホテルを出たところ司に会った。
「お前ら、羽目を外し過ぎだ。結婚式の翌々日で、抱っこでチェックアウトって……」
「ふふ――ん、羨ましいでしょ? 司も正樹とそうしたいだけでしょ」
「まあ、そうだな。俺もそうするな、カイ参考にさせてもらうよ」
「ははっ、司ぶれないな! お世話になりました。いい結婚式と初夜だったよ」
「お前らを見ればわかるわ!」
類は終始にこにこして、僕と司の会話を聞いていた。もちろん僕を抱っこして、ちゅっちゅって僕の首にキスをしていた。
「それにしても、櫻井。お前イギリス行ってから人種変わりすぎだ」
「それは、愛する人に出会ったからだよ。西条だって、正樹と出会ってから変態アルファって言われているじゃないか」
「間違いないな」
アルファ二人で笑い合った。平和だな、この二人が一人のオメガを奪い合った過去があるなんて、今では信じられないけどね。
幸せな結末を僕たちみんな、迎えられた。
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