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日本編
22、代理人
しおりを挟む僕たちがベッドに篭っている間に、櫻井家が弁護士をたててくれて爽の家に行き、飯田家の代理人としてすべての処理をしてくれた。
弁護士の先生が、どのように番解除という結論に辿り着いたのか、爽から聞き出してくれた。
あの二人は次の発情期が来る前に、オメガ治療最先端の岩峰総合病院に二人で来院した。
爽はヒートの時だけ陸斗と会っていたが、好きな気持ちは冷めて、ただ本能で抱けるというそれだけの関係に嫌気が差していたとのことだった。そこで番解除の画期的な治療法があると知った爽は、陸斗にその話を持ちかけて、陸斗も了承して二人で来院したらしい。
番解除の治療を始めるために、爽は岩峰先生から血液やら精液やらのサンプルの提出と、保健治療外という説明を受けて莫大な治療費を支払うという手続きをしただけで、後は陸斗一人で来院していたらしい。それ以来二人は会っていなかった。
ちなみに、番のアルファの消息が掴めない場合などのオメガ主体の治療は保険が効く。アルファからの番解除は保険外で、アルファが実費で治療費を払うことになっているらしい。それほどに、してはいけない行為なのだ。アルファがその治療を怠るようなら、法律で罰せられる。
爽は合法的に手続きをして、陸斗と終わったと言った。
岩峰先生が陸斗の意思を尊重したので、爽は陸斗の妊娠を知らない。爽は発情期に呼ばれないことに、治療がうまくいったのだろうと思っていたらしく、陸斗のことは考えてもなかったと。
だから今回、弁護士の話を聞いて驚いていたらしい。陸斗が番解除の影響で、記憶喪失になったことに、さすがに爽も罪悪感を持ったみたい。
陸斗は、爽が用意した家に住んでいて、本当にたった一人でずっと暮らしていたのだ。治療さえ始めれば、もう関係ないと爽は陸斗の住む家に行くことはなかったらしい。それまでも爽とはヒートの時だけ顔を合わせて、あとは一人。陸斗はどんなに寂しい思いをしていたのだろうと、胸が苦しくなった。今となっては陸斗のその時の気持ちを知ることはできなくなったけど、そんな思いは記憶とともに忘れられて良かった。
陸斗の住んでいた家は、所持品含めそっちで処理してくれと伝えた。そして治療のために、二人が番だったという事実を本人に伝えないこと。爽が引き取った子供の親が陸斗だと、誰にも言わないこと。たとえ子供にも実の母親の事実は言うなと約束させた。
出産経験があることを、陸斗自身が忘れているのだから、知らない方が今後の治療のためと言われれば、そうするしかない。そもそも嫁の子供として育てているから、子供も実の母親は一緒に暮らしている爽の嫁だと思っているとのことで、爽自身も都合が良かったのだろう。それはそれで凄く腹立たしかった。
陸斗との一切を誰にも言わない、そして飯田家との接触も禁止し、それをすべて書面で契約を交わす。
本来なら一生治療費を支払うというのが、法律で決まっているらしいが、向こう三年分の治療費を一括で病院に前払いすることを慰謝料とした。
お金でさえも、繋がっていたくない。飯田家は一切お金を受け取らないと決めた。櫻井家が治療費を払うと言ってくれているのもあるけど、陸斗くらい僕が養える。
とにかく、爽との関係の全てを清算できたのは嬉しかった。櫻井家の顧問弁護士さんという、最強の人のお陰ですんなりと片付いた。
爽は、別れたかった番が自分を忘れて、子供の存在すらも忘れてくれて、一生かかる治療費も三年分で済んでむしろラッキーだったみたい。弁護士の先生がそういう印象を受けたと言っていた。
最低だなって思うけど、もういい。いつまでも恨むだけ時間も、心ももったいない。完璧に縁が切れるなら僕にも、記憶はないけどきっと陸斗にとっても喜ばしいことだと思う。
そんなスッキリしたある日、類と司のホテルに来ていた。司に入籍の報告と、来年ここで結婚式をするための打ち合わせ。
それが終わったら、明日から類と沖縄に行くんだ。楽しみだな‼ その前に陸斗に会いに病院にも行って、今日も忙しいぞ。
司は、仕事ができる男みたい。まだ高校三年生なのに、もう国内のホテル事業を手がけているんだって! 正樹と過ごす発情期のための高級ヴィラまで建てたとか!? ネチ男なのは正樹関連だけらしく、ビジネスではかなり優秀なアルファということがわかった。僕に対しても別に変なところもないし、むしろ感じが良くて驚いた。
類と話が進んでいるみたいで、穏やかだった。
打ち合わせも終わった頃、ビリーからの連絡が類に入った。あれから類はビリーの話を受けた。ご両親も喜んでいた、そりゃラノキリアの日本支社の社長だよ‼ 凄いことだもんね。
「海斗、ごめん! 急にビリーが日本の物件確かめてこいって、青山と銀座に二軒抑えたから、俺の目で今日中に確かめろって、まだ俺ラノキリア入社したわけじゃないのに、もうこき使われている」
「ふふ、でも僕たちが日本にいる間に役に立てるならいいじゃない! がんばろう、僕も一緒に行くよ」
「いや、海斗はここ数日いろいろあって疲れているだろ? 西条、悪いけど部屋一つ空きない? 海斗をホテルに送る時間なさそうだから、いったん海斗をこのホテルで預かってくれない? 夜に迎えに来るから」
類が司に話を振った。
「ああ、いいよ。スイートはもう埋まっているから、ランク下がってもいいか?」
「ああ、海斗を一人休ませるだけだから助かる、ありがとな」
アルファ二人で話が進んだ?
「えっ、僕一人でホテル戻れるよ?」
「「ダメだ‼」」
あれ? 二人でハモった? なぜ他人の司まで僕にダメ出しするんだろ。
「いや、海斗は有名人だから一人はだめ」
「そうだ、カイに何かあったら、正樹に恨まれんのは俺だ。それから正樹が会いたがっているから、良かったらここにいてくれると助かる。正樹呼んでいいか?」
「ま、正樹? う、うん会いたいな。じゃあ、類は気をつけてね、司ありがとう」
そうして、司からキーを預かった。部屋まで送ると言われたけど、エレベーター前で大丈夫って言って断った。
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