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4-14.闇墜ちデート 後編
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一本の触手が俺の右肩に向かって伸びてくる。
これを無視すれば、恐らくは肩を貫かれ、体内に侵入されることだろう。
無論、俺はドスケベ・フィールドを展開している。
あらゆるダメージは快楽に変換され、血が流れるようなことは無い。
だが、
「まともに受ければ、射精は免れないだろうな」
額に冷たい汗が滲む。
この領域内で吐き出される白濁液は、血液と変わらない。
触手に込められた淫力を見れば分かる。
一度でも拘束されたら、それで終わりだ。
「すごいすごい! 全部避けるんだ!」
どうやら胡桃はクレイジーな方面に闇墜ちしたようだ。
なるほど解釈と一致する。抑え込まれていた欲求が解き放たれたのだろう。
「ふっ、随分と楽しそうではないか」
「うん! 楽しい! 生まれ変わった気分!」
胡桃は、普段決して見せることの無い無邪気な笑みを浮かべ、両手を広げた。
彼女の周囲から触手が生え、上空に集まる。
一瞬の静寂。
触手が爆ぜた。
(……八方向同時攻撃か)
あまりにも速い。
弱体化した俺では、目で追うのがやっとだ。
「キャサリン!」
だがキャサリンの敵ではない。
触手としてのキャリアが違うのだ。
「あはっ! すごーい!」
全ての攻撃を防がれ、しかし胡桃は嗤った。
その瞳を見て違和感を覚える。だが、既に遅かった。
「っ!?」
足元から触手が生えた。
決して避けられるタイミングではない。
この軌道、狙いは肛門か。
それだけ分かれば十分だ!
「スキル!」
「おっそーい!」
二人の声が重なる。
瞬間、肛門から発せられるはずのない音が鳴り響いた。
ガラスを引っ搔いたような甲高い音。
そして惑星同士が衝突したかのような光。
いや、比喩ではない。
今まさに惑星の衝突に匹敵する程の淫力が発生したのだ。
「あはっ、防がれちゃった。流石しょーまくん!」
胡桃はパチパチと拍手をした。
これは恐らく時間稼ぎだ。流石に今の攻撃で消耗したのだろう。
こちらから攻めるチャンスだが……。
「ねぇ、しょーまくん」
「どうした?」
呼び方が違う。普段クソ陰キャ野郎と呼ばれていたが、本当は名前で呼びたかったのだろう。ふっ、シャイな娘だ。
「この笑顔、どう?」
胡桃は輝くような笑みを浮かべ、両の頬に指先を当てた。
「実に愛くるしい。叫びたい程だ」
「あはっ、やっぱり?」
「だが俺は、稀に見られるヘタクソな笑顔の方が好きだ」
俺は「胡桃」に向かって言う。
「胡桃、何をしている? まだデートの途中だぞ」
目の前の胡桃から笑顔が消えた。
「……噓つき」
彼女の身体から禍々しい魔力が溢れ出る。
淫力は感じられない。純粋で、暴力的な魔力だ。
彼女の手元に触手が集まる。
それは徐々に形を変え、やがて漆黒のステッキとなった。
「──エターナル・スターリー」
ステッキの先端に膨大な魔力が集まる。
闇墜ちによる負のエネルギーが合わさったそれは、ピエロとの戦いで目にしたモノとは別物だった。仮に当時の胡桃が今の力を有していたならば、ピエロを瞬殺できたことだろう。
『マスター、どうするの?』
キャサリンが脳に直接語り掛けてきた。
『決まっている』
俺は返事をして、ただ無防備に両手を広げた。
『相変わらずだね』
『止めないのか? 流石に、あれを喰らえば死ぬかもしれないぞ』
『その時は触手界の笑い者として永遠に語りついであげるよ』
『……ふっ、そうか』
念話が途絶えた。
胡桃が放つ魔力によってスキルが打ち消されたせいだ。
「胡桃、聞こえているのだろう」
俺は語り掛ける。
「俺には友達が居なかった」
異世界へ行く前の俺は、ぼっちの陰キャだった。
「山田胡桃、お前が最初の一人だ。この先100人、200人増えたとしても、その事実が変わることは無い」
胡桃は何も答えない。
ただ、ステッキの先端に闇よりも深く暗い色をした魔力を集めている。
「お前は、何を求めている?」
闇墜ちは、抑圧された感情が大きい程に効果を増す。
こんなにも強大な力を得たということは、それだけ我慢していたということだ。
「言葉にしろ、胡桃」
俺は久しく忘れていた感情を思い出した。
口数の少ない陰キャは、べつに何も考えていないわけではない。むしろ声に出して発散しなかった分の感情が、日々心の中に蓄えられる。
「俺は全てを受け止める」
一瞬、胡桃と目が合った。
彼女は俺を見て、ほんの微かに口元を動かした。
──リリース。
蓄えられた魔力が放出される。
俺は軽く息を吐き、目を閉じた。
「それが、お前の選択か」
世界は赤黒い光に包まれた。俺の淫力によって生成された箱庭は、熱した鉄に水を落としたかのように、一瞬で蒸発した。
選択を間違えたかもしれない。
俺は決して小さくはない後悔を胸に、光の中、意識を手放した。
──そして、天にも昇るような快楽に襲われた。
これを無視すれば、恐らくは肩を貫かれ、体内に侵入されることだろう。
無論、俺はドスケベ・フィールドを展開している。
あらゆるダメージは快楽に変換され、血が流れるようなことは無い。
だが、
「まともに受ければ、射精は免れないだろうな」
額に冷たい汗が滲む。
この領域内で吐き出される白濁液は、血液と変わらない。
触手に込められた淫力を見れば分かる。
一度でも拘束されたら、それで終わりだ。
「すごいすごい! 全部避けるんだ!」
どうやら胡桃はクレイジーな方面に闇墜ちしたようだ。
なるほど解釈と一致する。抑え込まれていた欲求が解き放たれたのだろう。
「ふっ、随分と楽しそうではないか」
「うん! 楽しい! 生まれ変わった気分!」
胡桃は、普段決して見せることの無い無邪気な笑みを浮かべ、両手を広げた。
彼女の周囲から触手が生え、上空に集まる。
一瞬の静寂。
触手が爆ぜた。
(……八方向同時攻撃か)
あまりにも速い。
弱体化した俺では、目で追うのがやっとだ。
「キャサリン!」
だがキャサリンの敵ではない。
触手としてのキャリアが違うのだ。
「あはっ! すごーい!」
全ての攻撃を防がれ、しかし胡桃は嗤った。
その瞳を見て違和感を覚える。だが、既に遅かった。
「っ!?」
足元から触手が生えた。
決して避けられるタイミングではない。
この軌道、狙いは肛門か。
それだけ分かれば十分だ!
「スキル!」
「おっそーい!」
二人の声が重なる。
瞬間、肛門から発せられるはずのない音が鳴り響いた。
ガラスを引っ搔いたような甲高い音。
そして惑星同士が衝突したかのような光。
いや、比喩ではない。
今まさに惑星の衝突に匹敵する程の淫力が発生したのだ。
「あはっ、防がれちゃった。流石しょーまくん!」
胡桃はパチパチと拍手をした。
これは恐らく時間稼ぎだ。流石に今の攻撃で消耗したのだろう。
こちらから攻めるチャンスだが……。
「ねぇ、しょーまくん」
「どうした?」
呼び方が違う。普段クソ陰キャ野郎と呼ばれていたが、本当は名前で呼びたかったのだろう。ふっ、シャイな娘だ。
「この笑顔、どう?」
胡桃は輝くような笑みを浮かべ、両の頬に指先を当てた。
「実に愛くるしい。叫びたい程だ」
「あはっ、やっぱり?」
「だが俺は、稀に見られるヘタクソな笑顔の方が好きだ」
俺は「胡桃」に向かって言う。
「胡桃、何をしている? まだデートの途中だぞ」
目の前の胡桃から笑顔が消えた。
「……噓つき」
彼女の身体から禍々しい魔力が溢れ出る。
淫力は感じられない。純粋で、暴力的な魔力だ。
彼女の手元に触手が集まる。
それは徐々に形を変え、やがて漆黒のステッキとなった。
「──エターナル・スターリー」
ステッキの先端に膨大な魔力が集まる。
闇墜ちによる負のエネルギーが合わさったそれは、ピエロとの戦いで目にしたモノとは別物だった。仮に当時の胡桃が今の力を有していたならば、ピエロを瞬殺できたことだろう。
『マスター、どうするの?』
キャサリンが脳に直接語り掛けてきた。
『決まっている』
俺は返事をして、ただ無防備に両手を広げた。
『相変わらずだね』
『止めないのか? 流石に、あれを喰らえば死ぬかもしれないぞ』
『その時は触手界の笑い者として永遠に語りついであげるよ』
『……ふっ、そうか』
念話が途絶えた。
胡桃が放つ魔力によってスキルが打ち消されたせいだ。
「胡桃、聞こえているのだろう」
俺は語り掛ける。
「俺には友達が居なかった」
異世界へ行く前の俺は、ぼっちの陰キャだった。
「山田胡桃、お前が最初の一人だ。この先100人、200人増えたとしても、その事実が変わることは無い」
胡桃は何も答えない。
ただ、ステッキの先端に闇よりも深く暗い色をした魔力を集めている。
「お前は、何を求めている?」
闇墜ちは、抑圧された感情が大きい程に効果を増す。
こんなにも強大な力を得たということは、それだけ我慢していたということだ。
「言葉にしろ、胡桃」
俺は久しく忘れていた感情を思い出した。
口数の少ない陰キャは、べつに何も考えていないわけではない。むしろ声に出して発散しなかった分の感情が、日々心の中に蓄えられる。
「俺は全てを受け止める」
一瞬、胡桃と目が合った。
彼女は俺を見て、ほんの微かに口元を動かした。
──リリース。
蓄えられた魔力が放出される。
俺は軽く息を吐き、目を閉じた。
「それが、お前の選択か」
世界は赤黒い光に包まれた。俺の淫力によって生成された箱庭は、熱した鉄に水を落としたかのように、一瞬で蒸発した。
選択を間違えたかもしれない。
俺は決して小さくはない後悔を胸に、光の中、意識を手放した。
──そして、天にも昇るような快楽に襲われた。
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