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7話

おまけ1

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 体が熱い。そろそろあの日だろう。葵は気怠い体を起こした。病気が完治してから初めてのヒート。今日は大切な番の儀式の日である。
 本が映画化になるということで、今日、新は打ち合わせのため珍しく外出中である。
 はやく帰ってきてほしい。寂しい。新がほしい。新のことを考えるだけで、蕾から蜜が漏れる感覚がする。破廉恥な体になったものだ。
 葵は新の今朝脱ぎっぱなしで床に投げ捨ててある部屋着を拾い、くんっと匂いを嗅いだ。新の匂いだ。落ち着く。その服を新のベッドの上に置いた。
 その次に葵は衣装ケースを開けて、新の服を次々とベッドの上に置いていく。出来上がった巣に葵は満面の笑みを浮かべる。
 その巣の中に潜り込むと、大好きな新の匂いに包まれる感覚がする。思いきり息を吸い込み、新の匂いを取り込む。満たされるけど、やはり本物には敵わない。寂しい。はやく帰ってきてほしい。
 葵はスマホを取り出す。
 
葵:寂しい。はやく帰ってきて。
 
 このLINEを見たら新がどんな顔をするか想像し、笑みを浮かべる。珍しい葵からの誘いに新は仕事などさっさと終わらせて帰ってくるだろう。いつもはこんな我がままは言わない。でも、今日だけははやく帰ってきてほしいと思った。
 
 1時間後、車が止まる音がした。玄関が開く音がし、早足で歩いてくる足音がする。新の部屋のドアが開かれ、目の前に広がる光景に目を丸くする。自分のベッドの上にこれでもかと積み重ねられた洋服。こんもりとした山が出来ていた。
「これはまた、立派な巣を作ったね」
「新を驚かせたくて。上手?」
「うん。上手に出来たね」
 そう言って新は葵の頭を撫でた。
「それに、とってもいい匂いだ」
 新は葵の首元に顔を埋め、くんくんと匂いを嗅ぐ。
「新、俺、一人でするのも我慢してたんだ」
 葵は足をもじもじする。
「僕を待っててくれたの? 葵はいい子だね」
 新は葵の頬にキスをする。
「もう我慢できない」
「我慢しなくてもいいよ」
 おいで、と手を広げる新に葵は抱きつく。
 ちゅっ、ちゅっ、と軽いキスをされ、徐々にキスは深くなっていく。キスをしながら、新は器用に葵の服を脱がしていく。
「もうコレも要らないね」
 新は葵の首に嵌っているチョーカーを外した。
「やっとここに噛みつける」
 項に軽くキスをされる。キスされただけなのに、ゾクゾクと体がうずく。はやく噛んでほしい。蕾からどろりと愛液が漏れる。
「葵、好きだよ」
「俺も」
 唇にキスをしながら、新は葵をベッドに沈め、覆いかぶさった。
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