新米エルフとぶらり旅

椎井瑛弥

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第一章 第二部

独白:ある少女の夢の話(二)

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 マイカです。今年で一五歳になります。年々夢の内容がはっきりしてきました。でも夢の中で私が何を話しているのかは分かりませんし、何をしているのかも分かりません。そんな夢の中に最近気になる男の人が出てきます。

 背はけっこう高めでしょうか。優しそうな顔立ちです。私は彼の席まで行って話をすることがよくあります。たまに困った顔をしているので、私が何かしてしまったんでしょうか。父や兄もそのような顔をすることがあります。怒りたいけど怒れない、困った時の顔のようです。

 なぜ私が気になっているかというと、チラチラとその男性の方に私が目を向けているからです。彼が部屋から出ていく時も目で追っています。どう考えても気になっているのは間違いないでしょう。



 ある時私は自分の部屋で本を読んでました。絵本でしょうか。いっぱい並んでます。裕福なんでしょうか。文字は分かりませんけど、美しい男性と美しい女性が出てきます。数字は分かりますので、どうやらこのお話は何巻もある連続物のようです。本棚にはそのようなお話がいくつも並んでいるようです。すごい量ですね。細かな内容が分からないのが残念ですけど、男女の恋物語のようです。そういう話がお好きなんですね。私も憧れますけどね。

 ある時夢の中で私は犬と暮らしてました。白い小さな犬です。ものすごく可愛がって抱きしめたり頬ずりしたりしてます。この耳の垂れ方とか、私に似てるような気がします。私の毛も真っ白ですし。

 ある時私は家に帰って保冷庫から缶を取り出して一気に空けました。最近これは飲み物だということが分かってきました。そして犬を抱き上げて頬ずりします。慌ててその犬のご飯も用意してました。犬の分を忘れてたみたいですね。それからまた缶を取り出して一気飲み。犬が寄ってきたら抱き上げて頬ずり。

 次の瞬間です。目の前に床がありました。夢の中で私は床に倒れたようでした。



 !

 思い出しました! あれは私です、私、私! いえいえ、マサキ・マイカです。カミカワ先輩の部下の。先輩が行方不明になったと知ってから、気を紛らわせるために連日やけ酒を飲んで死んだそうです。カローラさんが言ってました。ストロング系はだめですよって。

 五歳ごろから少しずつ思い出し始め、一二歳から一五歳くらいで全部思い出すと聞いてました。今年で一五歳ですし、それで最近ははっきりしてたんですね。

 そうか、先輩がこっちに来てるのか。じゃあ私は本当にマルチーズの犬人になったんですね。今さらですけど、この世界にもマルチーズはいるんでしょうか? ケン、三年くらいしか相手をしてあげられなくてごめんなさい。そしてありがとう。あなたにしがみ付いてたおかげで先輩にまた会えます。

 先輩はいずれこの町に来る。それがいつなのか、はっきりとは分からないけど、ケネスという名前は聞いた。ケネスという名のエルフが来たら連絡が来るようにしてもらおう。



 後日マイカは「期日は指定しません。何年先になるかも分かりません。ケネスという名前のエルフが来た場合は賓客として迎えますので、私に連絡してください。彼を探し出す必要はありません。現れるのを待ってください」という内容の手紙を何通も送るのだが、そのことが彼女の父親や兄にも伝わり、彼らがそれから何年もやきもきすることになるのは仕方のないことだろう。
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