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3章 東西都市国家大戦編

第48話  CN法の出世

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トウキョウCN上層階 一室

「ここだな」

 複数のPDを引き連れていたベルティナが部屋の前に来ている。
アメリアの情報をリークさせた張本人はこの中にいる事を
突き止めた。容疑はスパイ行為として連行。これから該当人物を
捕縛しようとドアの前まで待機する。
銃を握りしめた彼女達が合図と共に開き、
一斉に侵入すると身近にいた者の姿があった。

ウィィン










「そこを動くな!」
ヴェイン・α「!!??」

ベルティナ一行が捕らえにかかったのはヴェインとα。
端末でPDを操作している最中に行動して抑えさせた。

バイイイン

すぐさま2人の胴体に電磁ロープを巻き付ける。
あまりの突然の出来事にうろたえている内に拘束。
訳も分からない現状に叫び、戯言ざれごとをぬかす。

「な、何ですかあなた達は!?」
「貴様らを情報漏洩ろうえいで捕縛する!」
「私はNo8だぞベルティナ! 何を根拠に!?」
「とぼけても無駄だ、お前はアメリア副指令の端末へ違法侵入している!
 そこのお前もスパイ行為をしている」
「何を根拠に、僕は反逆行為など一切して――!?」
「敵性が栖馬エリア自然排水口から侵入した事を何故知っていた?
 構造も機密事項のはずだ」
「ウチュッ!?」

以前、セレーネと会話していた時の内容を傍受。
つい口を滑らせてしまっていた。
軍備計画局の者が交通局のみ知る情報をつかんでいた事に疑問を抱き、
尋問を行う前に状況証拠を集め、ヴェインと接触していた線を見つけて
今回の逮捕に踏み切ったのだ。

「脳内のマスがバラバラになっていく・・・。
 僕の構築した世界が崩れていくふうぅうぅうン!」

2人は抵抗する間もなくあっさりと捕まる。
アメリアの迅速な対応になにもできずに、彼らは抵抗する
一刻も残されていなかった。

「・・・・・・」
「「このよはますで、できてるんだ・・・このよは」」

1人の男はうなだれて完全に沈黙、もう1人は言い訳も
聞かれずに背中を押されて連行されていく。
アメリアのドキュメントを盗んだのはヴェインだったのだ。
私は彼らを尻目に部屋の捜索に取り掛かる。

「ドキュメント盗難の残りが見つかった。
 決定的証拠だな、副司令に連絡を」
「「つながりません。現在、総司令官と通信を行っています」」
「ならば、後で直接伝えにいく」

ようやく、上層に巣くう異物を捕らえられた。
ただ、今回で上層の動向は終わりではない。
ヴェイン達の連行以降、トウキョウは身内の整理に力を入れている。
関東の動きがただならぬと様々な準備を進めていく。
このスパイ行為も関東に対して何かを起こそうと企んでいたはず。
彼女達が立ち去った後、部屋に残されたのはCPUの音だけだ。


ナガノCN七ヶ岳 隠し工房

 場所は中部へと変わり、暗い洞穴で数名が1人の元
トウキョウ出身者のトーマスは続けてイヨの体を検査していた。
体に巻き付いたや泥を落とし、内部の仕組みを入念に調べる。
恐れつつも興味深々な地方の人達が解剖の様子を見守って、
誰しもが未知の機械を注視する最中に、タカはこの人工体に
スイレンが聞きたかった人型ロボットついて聞く。

「前の質問だが、アンドロイドってなんだ?」
「人型のロボットだよ。
 CPUを搭載した自律型行動機体」
「他も人みたいに歩いたりしゃべったりするの?」
「そう、人間に近づいた人工知能。
 インテリジェンスアーキテクトのAIは向こうでPDとよばれて、
 造られたCPUの基本構造だからさ」

トーマスが手作業しながら説明する。
一言一言の連続に言葉が止まる程呆然ぼうぜんとさせられる。
レベルの高い供述に、誰も理解できない。
他にとってトウキョウのいっした技術力にどうする事もできず、
地方の者達は見守るのみだ。
何故、人型ロボットを製造しているのだろうか根源が不明。
人と機械の代替に誰もが不気味さを覚えた。
数分して、タカ分隊に連絡がくる。
あの黒兵の正体が判明し、装甲の素材地域がここ周辺と
関わりがある事が分かった。

「「俺達は・・・こんな塊に振り回されてたのか。今まで何故・・・?」」

黒兵とギフ司令官の正体、立て続けに発覚していく事実の詳細が
より周辺諸国に対する警戒心を強めてゆく。
機械を造れるのは人間しかいない。
必ずどこかに仕掛け人がいるはずだと疑心暗鬼に成りかける。
黒の装甲といい、アンドロイドといい、トウキョウに関して
もしかして接点でもあるのかとメンバー達が模索している中、
彼が大きく叫んだ。

「これは!?」
「どうした!?」
「大変興味深いものを見つけた、CN法のプロテクトコードだよ」
「プロテクトコード?」

頭部に納められたCPUから直接アクセスできない部分を発見。
直接製造した者がコピー濫用らんようされないよう、基本規格の部分を
隠す構造にしているものだ。
しかし、トーマスはかつてトウキョウで扱っていたものと異なる
仕組みだと言う。

「普通は汎用PDに内蔵される事はない。
 CN法の基に関するコードなんて、直接1機に書き込むはずがないよ。
 つまり、CN法を政策した者が造った可能性があるってわけさ」
「な、なんだって!!??」
「箱の外にあぶれた宝みたいにね。
 たまにチップの製造者が忘れて丸ごと本コードを
 中に入れてしまう時もあるからね」
「じゃあ、なんでこのアンドロイドに?」
「それは分からないけど、
 もしかしたら造った人も知らずに組み込んだ可能性もある。
 少なくともこのイヨって人は汎用型じゃないから、
 元から異なる製造場所で造ったと思われる。
 このPD、旧世代に近い形で第1~2世代のものじゃないかな」
「・・・・・・」

見たところ、相当古いタイプの物らしい。
最新式とは異なる機体の中身は設計者の名残りを含む
根拠でもあるのかもしれないのだ。
それによって、何かが明るみにでる見込みがあるのだろうか。

「よく分からんが、天主殻に関するものが入ってるのか?」
「多分、これはかなりの初期型のマルウェアソフトだから
 設計者の情報が有りえるかもしれない」
「なら、散々俺達を引っき回した頭について
 何か知ることができるんだな!」




















「・・・後はもう1つ。
 その製造元がトウキョウにいる事も分かった」
「えええええええええええええ!!??」

トーマスの口からアッサリともう1つ事実が判明する。
CNを築いた者がトウキョウにいたという話を聞いて、
誰しもが簡単に信じられなかった。
それでも元トウキョウの人は冷静な顔であっけなく言ったのだ。

「さらに製造者も判明したよ。
 トウキョウCN、統制論理機関だ!」
「なんだ、そこは?」
「おそらく間違いない・・・。
 他のCNが造っていたならば話が異なるけど、
 これは明らかにトウキョウで造られた物さ」
「でも、これはトウキョウとは違う型だって言ったろ?」
「存分に見覚えがあるチップが内蔵されていたんだ。
 脳と同じくらい柔らかい金属質の物。
 サンダーエッグとシリコンを疑似シナプス形状にコード化させている。
 これを製造できるのは、トウキョウの上層部だけ。
 回路を木綿状に加工できるのも、電離作用ができる
 AUROだからこそ可能なんだ。もうあそこしかない・・・」

実はトーマス自身も作業過程の間、薄々気が付いていた。
天主殻からの通達はいつも上層からPDを通して伝えてくるか、
またはMの通達者映像くらいなのだから。
ワタルがかつての見聞きを語る。

「アンドロイドか。偵察でチラッと観に行った時、
 人みたいなロボがいるって大騒ぎしてたな。
 トウキョウって、こんなスゴイ物を造ってたのかと。
 あんたも、それに関わってたのか?」
「僕はあくまでシステムエンジニアだけど、少しはね。
 もちろん、基本構造を見る権限はなかったよ。知ったら、即営倉送りさ」
「・・・・・・」

アンドロイドの製造者、CN法の政策者がいる。
この世界を闘争に満たさせた元凶がそこにあるという意味だ。

「だいぶ世界の根源がみえてきたな。元からキナ臭いと思ってたが、
 やっぱりトウキョウも一枚かんでやがったのか・・・。
 総動員で洗ってやった方が良いんじゃないか?」
「「イヨ・・・」」
「ヒミコさん・・・」

トーマスは沈黙する、当然ながら彼もトウキョウの人。
この場にいる誰よりも信じられないのは彼だろう。
真っ先に疑われるポジションの彼自身がそう告げている。
そうしてでも、堂々と公言するくらいの何かをするべきと
手を止めた直後、彼は意外な突破口を画策して皆に伝えた。

「もし、この機体がトウキョウ元なら、内蔵されてる
 通信回路をトウキョウ経由で辿っていけば
 おそらく内部のCPUに入れるかもしれない」
「すると?」
「トウキョウCNにハッキングをかけてみる。
 成功保証もなくイチかバチかだけど、何か見つかるかもしれない」
「ハッキング!?」
「情報管理する端末に忍び込む方法さ。
 向こうトウキョウではそんな大胆な事できなかったけど、
 ここからならできるかもしれない」
「あんたもトウキョウモンだろ? そんな事して大丈夫か?」
「そうだけど、仕方がないんだ。
 僕達だって、好きに戦争なんてやってるんじゃない」
「あ、ああ・・・」
「ま、そうだな。皆に呼びかけよう!」
「ただ、これだけは約束してほしい。
 平和のためにトウキョウを止める事を」
「分かった、必ず成し遂げてみせるよ!」

トーマスの提案を受け入れる。
今回を機に東と西の停戦を協定するかのように止まった。
天主殻の承諾など受けておらず、何も警告メッセージの1つも
出さないのがなおも不審さが深まっていく。
そんな、問答無用に定められた異質な法の枠を超えて、
イヨの件はまたたく間に各CNへと伝わる。
この世界の仕組みの起源がトウキョウにあるという衝撃は
誰しもが関心を寄せて、関心を寄せずにはいられなかった。


チバCN拠点 工房

 場所は関東、チバCNの製造場で珍しい組み合わせがいる。
エリーとトオルが機体について話し合っていた。
というのは、トチギCNだけでまかなえる場所がなく、
イワテCNは遠すぎて身近なここを訪ねにきていた。

「で、ここがこうなって、ああなるの。
 言葉では言いにくいけど、衝撃を音で和らげてホワ~ンみたいな」
「なるほど、破壊的力場を振動で極力抑えさせる仕組みですね。
 これなら相当強度の高いシールドになれるかもしれないです」

ヒョウゴCN潜入時に、たまたま手に入れたディスクのデータから
ライオットギア両脇に装着する盾の製造法を見つけていた。
しかし、彼女は内容通りの通常型シールドでなく、
オリジナルに添加てんかさせた新しい物を勧めて相談。
ワタルに弟がいるのはすでに知っていて、
工学部に所属する事で今回の技術を掛け合ってきたのだ。
チバのモブ工作兵も突然やってきた彼女の案を却下しようと思っていたが、
トオルの見込み(興味?)に推されて共同作業する。

「これに反響糸を加えて跳ね返すようにできるかなって」
「反発係数が1に近づくくらい衝撃を和らげる効果が見込めるかも。
 スゴイですよ」

何がどうすごいのかは不明。
盾と言うくらいだから、武器や攻撃の類ではない。
ただ、抽象的なところも聴こえて周囲にとって何を造ろうと
するのか分からず、工作班の尻目を側に2人の間だけで話が進んでいった。

「イヒヒ、だからこうしてああして完成と」
「フヒヒ、あれがこうなってそうして防御力向上と」
「・・・・・・」

別に誰も止めはしない。
ずいぶんと息が合って仲が良さそうにも思える。
本当に良い策でもあるのかと怪しげな雰囲気がしたが、
これはこれで命が保たれるならおんの字。
関東に安全性が一歩進めてゆく感じだけはした。


数日後 イワテCN拠点 演習場

 関東本部、イワテCNに各地の兵が大勢待機。
チバ兵達もそこで待機していて西からの防衛に注ぐと思いきや、
聴かされた一通の知らせに耳を疑った。

「CN法の・・・出元でもと?」

レッドは思いもよらない内容に、誰に放つべきか分からない一声を出す。
トウキョウの一組織内に戦争させられていた根源。
たった1体の機械から見出した事で、世界の基本を造られた
出元がそこにあるという。
まったくもって予想外の連続ばかり起こる最近の出来事に、
答えを見つけ出せる何かを感じ取れそうだ。
カオリも身近なCNとして両手を腰に構えて言う。

「やっぱり、あそこは臭うと思ったわ。
 あんな密集しすぎてるとこ、何か1つ2つは隠しているでしょ!」
「でも、最大勢力といっても俺達と同じCNから発足したんなら、
 まばらに散開させて争わせてもリスクが出るはずだ。
 いずれ大きなしっぺ返しがくる危険もあるんじゃないか?」
「さあね、元から大きいんだからひっくり返されないと思ってんでしょ。
 王様気分で支配して命のやりとりを楽しんでるサディストよ」
「そんな単純な理由か?」

適当そうな感想に口返し。
自分は間違った事は言っていないと思う。
計画を起こした者が同じ組織の中にいようものなら、
たちまちくるめられて改変や消滅を起こされるはずだ。
等しい立場でもある東北サイドも同意。
サラとロックも今後の動向を気にしてアキタの事もふまえ、
来るべき関東最大勢力への意識を整え直す。

「私達を戦わせた元凶が書かれているのかしら。
 レイチェル司令も今、対策を検討しているそうよ」
「ムカつくな、サッサと終わらせようぜ」

この時ばかりは誰も天主殻の様子などお構いなく、
たった1つのCNへ押し掛けようとする流れへ向かう。
同盟CNの司令官会議も話がまとまったようで、
次に各隊長達へ内容を1つずつ伝達してゆく。
各兵達にトウキョウCNへ侵攻する決定が下された。


それから1週間後、クリーズとレイチェルがイワテCNに訪問。
トウキョウCNに対する編成をわざわざ直に伝えにくる。
参加CNは全同盟国で総動員し、解決にあたるという。
さすがに今回は重要課題として取り組み、ここに役人を集合させてまで
入念なミーティングを行って企てを始める。
彼の質問に、彼女が1人の兵を指名した。

「今度のトウキョウはわずか一か所に集中するエリアです。
 誰か1人、陣頭者を決めておいた方が良いのでは?」
「そうですね・・・ならば。
 レッドさん、あなたに指揮をとってもらいます」
「俺が?」

総司令官はレッドを指名した。
彼女による判定により、自分のスキルを指摘したのだ。

「あなたの判断力、感覚神経、状況判断力が
 高水準に達している事が分かりました。
 よって、貴方をトウキョウCNへ進出する要、
 関東軍第1隊長として任命します」
「・・・・・・」

周りの目は自分に眉が下がる様で、賛同の声があがる。
反対する者など、誰1人いやしない。
ここぞとばかりに当てにされていた。

「ま、普通の流れでもそうなるわね」
「この俺をマッハで張っ倒したくらいだからな。
 それなりの働きをしてもらおうか♪」
「なんだかよく分かんねぇけど、頼むぜ」

皆が自分をしてくれている、総司令官の優しく力強い
眼差しに応えるべく、敬礼しながら大きく返事した。

「一大事を果たすため、拝命はいめいします!」
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