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3章 東西都市国家大戦編

第47話  完全独立宣言

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ヒロシマCN拠点 指令室

「アンタ、何様よ!?
 そんな施行せこうが通用するとでも思ってんの!? セコいわ!」

 アイがモニターで1人の青年に対して激しく問答を繰り出している。
中つ国司令官達どうし画面越しに見合うお題の中、こういう言葉が発生。
彼らの通信の相手はエイジ。
山地の駐屯地を襲った件で司令官達から事情聴取を受けているが、
返したエイジの言葉は意外な事だった。

「「という訳で、我々碧の星団は独立の方針をとる事に決定しました。
  CNの枠から離脱し、人口過多問題解決を目的とした施行でいきます。
  今までありがとうございました」」

独立、それは碧の星団が中つ国CNから離れる事を意味していた。
突然による分断に司令官達の顔が固くなる。

「総司令官、君の父上はそうしろと言ったのか?」
「「いえ、星団の決定です。今後を検討した上で
  天主殻も罰則を行う動向もみられないので実行しました」」
「我々の意向も組まずに行うというのか?」
「完全独立が狙いかね?
 CN法管轄の天主殻が何も通達しないとはいえ、
 勝手な行動は通用せんぞ?」

地上の者達にとって空師団の計画は納得していない。
勝手に縁切りをして一切干渉するつもりもないなどと言われ、
すでに日照問題も出始めて苦情も少しずつ湧き出ている。
シマネ司令官の鋭い指摘に、エイジの空気が止まる。
だが、彼は予想しない話をもちかけてきた。

「「勝手か・・・ならば、1つ質問に応えて下さい」」
「何よ?」
「「あなた方は自分にとって気に入らないモノを閉じ込めます。
  まあ、何かはともかくとして不都合的なモノです」」
「モノ?」
「「そして、ふたをされた中身をずっと放置し続けたとします。
  ある日、何かの拍子で突然ドバッと出てあふれてしまった時、
  被害も出さずに抑えていられる器量がありますか?」」
「・・・・・・」

その例え話は全ての司令官達に解釈できるもの。
山陽と山陰を回りくどく異なる言い方で責め、
地上の界隈の解消を買って出ると言う。

「「我々の部下も1人裏切りが発生してしまいました。
  理由はもちろん、ここの因縁によるものです。
  とても優秀な者だったのに、見えぬ凶気に父をロストされてしまい。
  あなた方はろくに対応もしてこなかった。
  だから、星団なりの自己解決をしたいだけなんです」」
「君はその中身を解放したいんと言うんだな?」
「「そうです、まわしい風習を天と地の差に離します。
  きっかけを起こす接触すらなく、摩擦が生まれないレベルにまで」」
「君はその代行者となるというのか?」
「「ええ、どうしようもない不純物をどうにかする。
  ただ、自分は重力で溜まったの様な空間の塊を
  外側の世界に放出させようとしているだけなんです」」

地上、地面に人が住み、生活して動き、どこかで衝突する。
数集めにへばりついて生きる限り、必ず削り合い起きてしまう。
南北という分かりやすい境にもかかわらずに根源が分からない。
せめてもの、星団のみでも完全に中つ国から放とうというのだ。
そんな中、1人の司令官が切り出してきた。

「若いな」
「「え?」」
「不必要ならばすぐに分別、結果を急ぐ青二才あおにさいが考えるパターンだ」
「0か100か、未熟者はすぐに間を見られなくなる。
 人はそんな単純に事が運ばないわよ。もっと視野を広げなさい」

アキヒコとアイは先見性の低さを述べて反意。
年長者達の熟した弁論が星団の若い長に向けられる。
それでもエイジは意味の理解を深めようと納得をせず、
話し合う余地もなく会議を止めようと回線を切る動作をする。

「「やはりそうおっしゃいますね、あんた達も同じなのに。
  ならば、独立はこちらで勝手にやらせてもらいます」」
「このまま行使する気か!?」
「「伝える事はもうこれ以上ありません、失礼しました」」
                       プツン

通信が切れる。
あっさりとした別れ方で、つながりを断たれた中つ地。
どれだけ年をとろうと、望まない仕打ちには堪忍袋かんにんぶくろの緒が何かに触れる。
もはや、残る地上の者達のするべき行動は1つだけ。
一度静まった指令室の中、トットリ司令官がこれからの推移すいいを口にした。

「彼らを抑える案を提唱します。
 碧の星団には兵器が多く所有しており、悪用される恐れがでるでしょう。
 特殊部隊システムも無理があり、組織を解体するしかありません」
「ええ、キッチリと落とし前をつけましょう。
 あの船は若者には持て余し過ぎる」
「目的達成に戦闘は避けられまい・・・ネゴシエーションが理想的だが。
 そういえば、彼に兄弟がいたな?」
「はい、備高竹山基地の兵です。
 アイ司令がよく面会しているはず」
「そうです、できればきちんと話し合って事を済ませたい。
 ならば、あいつから直接伝えてもらうか・・・私が相談しましょう」

せめて最低限に被害を抑えたいと、アキヒコは推奨すいしょう
ケイの説得で辞めさせる方向を他の司令官達に案じる。
彼の采配を混ぜつつ、中つ国CNの目先は決まっていく。
5人は前の大戦の処理も終えない中、責任者達の顔ぶれが画面枠から
それぞれ移相いそうし始めた。


備高竹山駐屯地

「「空中・・・都市・・・エイジが?」」
「アイ司令からハッキリと通達が来ました。
 エイジさん、CNから完全に離れるとの事」

 マリさんから突然の報告を聞かされたケイは立ったまま留まる。
碧の星団がCNから離脱する話を耳にして訳が分からなかった。
元から近くにいた連中でもないけど、もっと遠くに行くとか。
聞けば、空の上で新しい居住区を造るつもりのようだ。

「夜になっても一部だけ明るい所があったわけだ。
 あの空の上に建物を造ってた理由がそうだったなんて」
「リソースも全てあの空中区域で監視映像によると軍備類の物もあって
 武力までは放棄していない模様。
 自生産できる根拠までは特定できませんが、近日どこからか
 入居者も増えていて中つ国のサポートを減らしているらしく、
 ここを必要としなくなった理由も明らかになりましたね」
「他地方から呼んでるって事か、俺達中つ国をほっといてまでやる事って。
 天主殻じゃあるまいし、あんな所で何を?」
「CNだって大人数のリソースをまかなうのに大変なはず。
 今まで活動していた根本的理由は都市開発のためだったようで」
「それで、ここにあったあの黒い変な物を持っていったのか。
 なんでスゴイ性能を秘めてるって知ったのか?
 あれって、一体――?」
「変な物よ、あたしもよく分からないもの」
「うわあっ、アイ司令いつの間に!?」

いきなり真後ろからアイ司令の声がして驚く。
彼女も俺と同じ言い方で説明もへったくれもないけど、
腰に手を当てながら近づいて言う。

「今、会議が終わった・・・あいつらをシバキ倒しにいく。
 しまいにはこっちにも手を出してきて、もう堪忍できないわ」
「あそこに乗り込むんですか!?
 で、でも、一応味方なのに・・・いや、確かにここも襲ってきたけど」
「タマゴ型のオブジェにどのような価値があるのか不思議で、
 一部のエリアを開拓するために必要な物はたいてい衣食住で、
 私も気にはなってました」
「なんでエイジが必要だと持っていったのか教えて下さい!」

2人の疑問にできるだけ答えようとするものの、
彼女も明らかにできそうな事情は知らない事ばかりだと言う。
あの変な物はヒロシマCNより昔からずっと置かれていた。
先代の話でもいつ持ってこられたのか分からずに、
“平和のシンボルだ”とか言って司令官が保管しておくよう指示された。

「そして、九州と一悶着起きた時の手助けにもなったの。
 同じ物がナガサキCNにもあったのよ、九州にも」
「どうしてそんな所に?」
「やっぱり分かんない、あれも一度四国に盗まれてたけど返してくれて
 くっついた出来事になったわけだから色々な縁をもってるんじゃない?」
(偶然すぎる)

分からん分からんと司令らしくなくサバサバと言ってのけるけど、
少なくとも同盟のきっかけとなってCNをつなげたものなんだろう。
俺が運ばされていたタヌキの置物も何か効果があったんじゃないか?
にわかには信じられないけど、実際こうして四国や九州と結ばれた。
CNなんて地方ごとに分かれてドンパチやっているけど、
始めからそんな事をしていなかったんじゃないのかと思う。

「思えば、あたしらも一方的にあれやれこれやれって仕込まれて
 根拠や理由もなく軍事行動をさせられてきたわ。
 でも・・・全部教えられてきたとも限らないし。
 秘密を墓まで持っていかれた事もあるかもしれない」
「じゃあ、CNどうしで何か連携する機能が備わっていて
 仲間割れしないよう元から仕組まれたかもしれない・・・ですかね?
 それで今度はエイジが・・・」
「あいつは必要不可欠って言ってたんでしょ?
 どうやって辿ってきたんだか、可能性を見抜いて奪いにきて。
 だから、星団の技術で中身を判定できたらしいから取り返すついでに
 特殊部隊制度も変えていこうって話をしてたの」
「中つ国の技術でもあの中は分からなかったんですか?」
「そうよ、90年製ドリルでも開けられなかったし。
 なんていうか・・・あれ・・・在庫差異が発生して遅れをとったり」
「?」
「まあ、色々あって重要技術はカズキ司令が保有してた訳!
 話を戻すけど、今後のラボリを伝えるわよ。
 次の目標は碧の星団の解散。例の空中拠点地へ侵攻する。
 今回は中つ国総出であいつらを引きずり落とす事にした」
「総出で!?」

司令達もかなり躍起になっているらしいから、
もう父親もいない、管理していた特殊部隊も軍部から離れすぎているのも
ありえないとして一度解散させようと決めた。
俺も反対しない、あいつがノウノウと空に居続けるのがおかしいし、
同じ大地で生活する、生きるべきだと思っていたから。

「なるほど、分かりました。あそこに秘密が・・・いや、父さんの遺産。
 いよいよ大詰めか、エイジ達もこれで地上に――」

ガシッ

「!?」

両手で俺の肩をつかむ、司令の目は真っ直ぐで顔も近づけてきた。
女だけあって恥ずかしく、マリさんも見ているのにどうしてこんな姿勢?
27歳と若いと思う腕が力強く感じた。

「な、何を・・・!?」
「どんな戦術や技法をもっていようと正解ルートなんて見えやしない。
 お天道様ってきちんとコマを与えて配置してくれるものね。
 こんなチャンスはこうやって巡ってくるもんだって思ったわ」
「「司令・・・」」
「ケイ・・・あんたも直接言ってきなさい。
 あたし達はあんたを星団解放ネゴシエーターとして使命する」


数日後 星団艦内

 数十機の黒緑のライオットギアが並べられている。
楕円だえん形の腕や脚、丸みを帯びたデザインで構築されたボディが
5機、目前に白い壁と対照的な色映えを見せる。
碧の星団の兵力は今までの比にならない程にまで成長していた。

「ようやく完成までこぎつけたな」
「基本骨格は四国製ですが、フレームは空気抵抗を考慮して
 風圧を促すよう流線型を施しています」

四国から横領した黒曜石とエメラルド合金の装甲は有り合わせながら
星団を象徴とした似つかわしい外観に思えた。
表面は光を強く反射して相手の目をくらませる性能で、
闇夜に舞い優雅なる存在としてここらしく施したようだ。
エイジや幹部達の点検も入念に行っている時、
アーロンがこれらの機体を名付けようと言う。

「この黒緑光りした機体に名称付けよーぜ」
「型番じゃダメ?」
「せっかく念願の星団専用の機体ができたんだ。
 象徴に名前は付きものだろ?」

司令のエイジといえど、年長者のそんな言い分くらいは応じる。
ネーミングセンスに長けている方でもないが、確かに名称くらい良いだろう。
さっそく名付けようとした時、女整備士Aが名乗りを上げた。

「では、私がネーミングしてよろしいでしょうか?」
「いいぞ」

整備担当のAはエンジニアの筆頭者として従事する。
もはや代表格になったかの振る舞いで、馴染んでいた彼女は
星団の技術を古株よりも推し進めている。機械製造の当人だから
真っ先に名乗りを挙げて黒型ライオットギアにアイゲングラウと名付けた。

「意味は闇の中によどむ光。
 広がりし闇にわずかな希望の光を託して名付けました」
「星団らしくて良いやん、それにしよか」
「決まりだな、お前達にアイゲンを任せる。頼んだぞ」
「お任せあれ!」

彼女は自慢げに機体の名を掲げる。
入団以降、ようやく己だけの製造が叶ったのだ。
性能を実践じっせんさせたくて、女整備士達A~Eは
ウズウズしているほどに運用を迫る。

「ああっ、なんと美しい型よ。わたくしにこんな才能があったなんて、
 今までできなかった事が生み出せた」
「四国時代ではあの女狐メギツネのせいで規格止まり。
 もっと早く来ればよかったわ、早く試してみたいですわね」
「・・・・・・」
「リーダー、試験運用はいつ頃がよろしくて?」
「それについては問題ない、実戦投入ならすぐ始まる」
「すぐに始まる?」

エイジの言葉にカナは疑問に思う。
理由を聞こうとした瞬間、オペレーター側から通達がきた。

ピピッ

「「伝令、飛空艇周辺から無数の敵影反応確認!」」

言葉を聞いて地上に目を向けると、多くの兵装が観えている。
そこに映っていた反応の対象は中つ国CNの兵達だった。


地上各地

「スカイレイダー起動、遠征は久しぶりだ。
 真上に対する相手は初めてだがな」
「先の戦闘で一部故障していたが、起動可能。
 相手が数百人だけなら十分だ」
「こちら第2部隊、座標の指示を確認。目標、碧の星団」
「地上からのメンテナンスも終えた、だいぶ数も少なくなったが
 2日もてば十分こなせるラボリだろう」
「今までずいぶんとオタカクとまってやがったな・・・。
 裏切りはヨウシャしねえ」

 トットリ、オカヤマ、シマネ、ヒロシマ、ヤマグチ兵の順に
出動準備を終えて、ラボリ開始の号令を待つ。
あたかも待っていたとばかり用意も円滑に進み、同じCN相手であろうと
反対の意を口にする者はいない。
手の先にあるのは武器、攻撃するための道具でロストさせられる物を
惜し気なく空に向け始めてゆく。


星団も地上からの蜂起を十分に感じられる動きを察知。
中つ国CN、及び東からの赤い点滅が発生。
俺達を地上へ引きずり降ろそうとするつもりだ。
モニターの敵影反応が上空周辺に異常な数にのぼるのを確認。
突如として下界による反旗はんきが起きたのだ。

「やっぱり来たな・・・もう止められない、とめられないんだ。
 俺達は解放される、地上よりにじんだ因習から。
 各班、配置についてくれ」
「了解です!」
「・・・・・・」

号令でメンバー達にセーフラインの準備をさせる。
こうなるのが分かっていたかに待ち構えていた彼を、
カナは不安の表情を見せる。対して、エイジは心配するなと
メンバー達に防衛機能の安全性を事前に伝えていた。
理由は離脱による制裁なのは想定内。
完全独立を成就じょうじゅさせるため、星団による防衛作戦が始まろうとした。
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