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王宮
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馬車に揺られること半日以上。
ちゃんと私の通行証も手配されていて、スムーズに隣国入りすることが出来た。
「このあたりはあまりキースとは変わらないかな?王都の雰囲気は全く違うが」
「……初めての異国で、とっても楽しいです!ありがとうございます!」
はしたないが馬車の窓から外の景色を存分な楽しんだ。あれ何ですか?これは何?私の質問攻めにも丁寧に対応してくれるアレク様。
「そんなに喜んでもらって嬉しいよ」
アレク様がさりげなく窓を覗きこむ私の腰を抱き寄せる。そのお陰でアレク様のお顔と私の顔がくっつきそう……!
「……アレク様、お顔が近いですっ」
「……恥ずかしがるリリーが悪い」
更に力を込めてくる。
もうーっと頬を膨らませると、アレク様が今度は頬をツンツンしてくる。
(何だかお茶目だ、アレク様。可愛い……!)
「……なぜ笑う?」
「……だって、アレク様が可愛いから」
可愛いと言われてちょっとがっかりしたのか、捨てられた仔犬のようにしゅんとなってしまった。
「……もー!褒め言葉ですよ?」
……可愛い……何でだ?とぶつぶつ言うアレク様が更に可愛いくて、私は思わず両手でアレク様の両頬を包み込んだ。
「……アレク様、私のためにありがとうございます」
私の最大限のお礼だ。
「……リリーが可愛いすぎるっ」
一人悶えるアレク様を横目に私は、ミリオニアの王都の華やかさを楽しんでいた。キースにはない女子が好きそうなお店をチェックしていた。
「殿下、もうすぐ王宮です」
(えっ?もう?)
解れていた緊張感が一瞬で押し寄せてきた。
そんな私を見てアレク様はギュッと手を握ってくれた。
(……安心感をありがとう、アレク様。しかし、アレク様ってこんなキャラだったか?)
視界には、予想以上に荘厳な王宮が広がっていた。
◇◇◇
緊張しながら足を踏み入れたミリオニアの王宮で最初に案内されたのは来賓室だった。
「リリー、ここでちょっと待ってて」
そういうと、アレク様とカイル様は部屋を後にした。入れ替りで私の世話をして下さる侍女カエラが挨拶に訪れた。
(優しそうなお母さんって感じかな?)
優秀そうなオーラがすごい!
「リリアーヌ様、初めてお目にかかります。普段は王妃様の元におり、この度は数日間でございますが精一杯務めさせて頂きます。よろしくお願いいたします」
それはそれは素晴らしい角度でおじぎをされる。
(お、王妃様付きって……)
「こちらこそ、初めまして。キース国フォンデンベルグ侯爵家が長女、リリアーヌでございます。数日ですがよろしくお願いします」
相手に素敵に見える角度で精一杯微笑んだ。
「リリアーヌ様のお荷物は既にお泊まり頂くお部屋にお運びしております。殿下が参りますまでしばらくお待ち下さいませ」
手早く紅茶のサーブをしながら、お茶菓子の準備が始まった。
「リリアーヌ様はお好きなお菓子はございますか」
私ごときの好みなど恐れ多いが、さりげなく好みを伝えてみる。
「甘いものはやはり女性ですので好きなのですが、チーズケーキと、ナッツを使ったクッキーに目がありません」
「そうでしたか!では、後程パティシエにも伝えておきますね。本日はナッツのパウンドケーキと、クッキーを準備させて頂きました。お口に合えばよろしいのですが」
バラがあしらわれた素敵なお皿に、パウンドケーキと、クッキーが乗せられていた。
「このバラ柄のカップとソーサー、お皿も素敵ですね!気分が華やかになります」
私は紅茶を頂きながら、大好きなお茶菓子にも手を伸ばした。
「う~ん!このナッツのパウンドケーキは、しっとりしていてとっても好みです。バターがふんだんに使われているのですね。クッキーも大好きなカシューナッツの食感が堪りません!」
またしても満面の笑みで大層美味しいお菓子を頂いた。淑女がどこかに飛んで行ってしまった……。
(でも、ここにきて淑女マナーを学んだ甲斐があったというもの!やっぱり、知識と経験が身を助ける、だ!)
「殿下からは、リリアーヌ様はとても聡明で、貴族の淑女でありながらその……とてもエネルギッシュな方だと伺っております」
「……アレク様が?その……お恥ずかしい限りです。いつもアレク様にはとてもよくして頂いております。今回も、私が立ち上げた商会とクラニエル商会との契約で参りました次第です。まさか王宮でおもてなし頂けるなんて……。本当に感謝申し上げます」
「実のところ、ここだけのお話でございますが、殿下が生まれて初めて王妃様に女性のお話をされたのですが、それがリリアーヌ様です。過去には婚約の話もちらほらございましたが、いつの間にかたち消えることが多く……。王妃様も私も大変心配しておりました。ただ、誤解されないで下さいませ。殿下は大変オモテになる方でいらっしゃいまして、女性人気も高いのですよ。王妃様はもうリリアーヌ様がお見えになるのをそれはそれは楽しみにしておりまして……」
そんな会話をしていたからか、突如扉の周辺が騒がしくなった。
「……あらあら。きっと待ちきれなくていらしたのでしょう」
カエラが扉近くに移動すると、扉のノック音が聞こえた。
「カエラ~!待ちきれなくて来てしまいましたわ」
そこには、妖精のように美しく可憐な王妃・エカテリーナ様がいらっしゃった。
ちゃんと私の通行証も手配されていて、スムーズに隣国入りすることが出来た。
「このあたりはあまりキースとは変わらないかな?王都の雰囲気は全く違うが」
「……初めての異国で、とっても楽しいです!ありがとうございます!」
はしたないが馬車の窓から外の景色を存分な楽しんだ。あれ何ですか?これは何?私の質問攻めにも丁寧に対応してくれるアレク様。
「そんなに喜んでもらって嬉しいよ」
アレク様がさりげなく窓を覗きこむ私の腰を抱き寄せる。そのお陰でアレク様のお顔と私の顔がくっつきそう……!
「……アレク様、お顔が近いですっ」
「……恥ずかしがるリリーが悪い」
更に力を込めてくる。
もうーっと頬を膨らませると、アレク様が今度は頬をツンツンしてくる。
(何だかお茶目だ、アレク様。可愛い……!)
「……なぜ笑う?」
「……だって、アレク様が可愛いから」
可愛いと言われてちょっとがっかりしたのか、捨てられた仔犬のようにしゅんとなってしまった。
「……もー!褒め言葉ですよ?」
……可愛い……何でだ?とぶつぶつ言うアレク様が更に可愛いくて、私は思わず両手でアレク様の両頬を包み込んだ。
「……アレク様、私のためにありがとうございます」
私の最大限のお礼だ。
「……リリーが可愛いすぎるっ」
一人悶えるアレク様を横目に私は、ミリオニアの王都の華やかさを楽しんでいた。キースにはない女子が好きそうなお店をチェックしていた。
「殿下、もうすぐ王宮です」
(えっ?もう?)
解れていた緊張感が一瞬で押し寄せてきた。
そんな私を見てアレク様はギュッと手を握ってくれた。
(……安心感をありがとう、アレク様。しかし、アレク様ってこんなキャラだったか?)
視界には、予想以上に荘厳な王宮が広がっていた。
◇◇◇
緊張しながら足を踏み入れたミリオニアの王宮で最初に案内されたのは来賓室だった。
「リリー、ここでちょっと待ってて」
そういうと、アレク様とカイル様は部屋を後にした。入れ替りで私の世話をして下さる侍女カエラが挨拶に訪れた。
(優しそうなお母さんって感じかな?)
優秀そうなオーラがすごい!
「リリアーヌ様、初めてお目にかかります。普段は王妃様の元におり、この度は数日間でございますが精一杯務めさせて頂きます。よろしくお願いいたします」
それはそれは素晴らしい角度でおじぎをされる。
(お、王妃様付きって……)
「こちらこそ、初めまして。キース国フォンデンベルグ侯爵家が長女、リリアーヌでございます。数日ですがよろしくお願いします」
相手に素敵に見える角度で精一杯微笑んだ。
「リリアーヌ様のお荷物は既にお泊まり頂くお部屋にお運びしております。殿下が参りますまでしばらくお待ち下さいませ」
手早く紅茶のサーブをしながら、お茶菓子の準備が始まった。
「リリアーヌ様はお好きなお菓子はございますか」
私ごときの好みなど恐れ多いが、さりげなく好みを伝えてみる。
「甘いものはやはり女性ですので好きなのですが、チーズケーキと、ナッツを使ったクッキーに目がありません」
「そうでしたか!では、後程パティシエにも伝えておきますね。本日はナッツのパウンドケーキと、クッキーを準備させて頂きました。お口に合えばよろしいのですが」
バラがあしらわれた素敵なお皿に、パウンドケーキと、クッキーが乗せられていた。
「このバラ柄のカップとソーサー、お皿も素敵ですね!気分が華やかになります」
私は紅茶を頂きながら、大好きなお茶菓子にも手を伸ばした。
「う~ん!このナッツのパウンドケーキは、しっとりしていてとっても好みです。バターがふんだんに使われているのですね。クッキーも大好きなカシューナッツの食感が堪りません!」
またしても満面の笑みで大層美味しいお菓子を頂いた。淑女がどこかに飛んで行ってしまった……。
(でも、ここにきて淑女マナーを学んだ甲斐があったというもの!やっぱり、知識と経験が身を助ける、だ!)
「殿下からは、リリアーヌ様はとても聡明で、貴族の淑女でありながらその……とてもエネルギッシュな方だと伺っております」
「……アレク様が?その……お恥ずかしい限りです。いつもアレク様にはとてもよくして頂いております。今回も、私が立ち上げた商会とクラニエル商会との契約で参りました次第です。まさか王宮でおもてなし頂けるなんて……。本当に感謝申し上げます」
「実のところ、ここだけのお話でございますが、殿下が生まれて初めて王妃様に女性のお話をされたのですが、それがリリアーヌ様です。過去には婚約の話もちらほらございましたが、いつの間にかたち消えることが多く……。王妃様も私も大変心配しておりました。ただ、誤解されないで下さいませ。殿下は大変オモテになる方でいらっしゃいまして、女性人気も高いのですよ。王妃様はもうリリアーヌ様がお見えになるのをそれはそれは楽しみにしておりまして……」
そんな会話をしていたからか、突如扉の周辺が騒がしくなった。
「……あらあら。きっと待ちきれなくていらしたのでしょう」
カエラが扉近くに移動すると、扉のノック音が聞こえた。
「カエラ~!待ちきれなくて来てしまいましたわ」
そこには、妖精のように美しく可憐な王妃・エカテリーナ様がいらっしゃった。
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