甘すぎ旦那様の溺愛の理由(※ただし旦那様は、冷酷陛下です!?)

夕立悠理

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結婚式

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 結婚式の流れをアキから説明された。
 本当に驚くほど簡単で、私は祭壇の前まで歩き、そこで夫となる皇帝陛下と永遠の愛を誓えばいいだけらしい。

「ありがとう、アキ」
「いいえ。……では、いってらっしゃいませ」

 結婚式が行われる王城内にある聖堂の前まで連れて行ってくれたアキに、お礼を言って別れる。

 ……今なら逃げられないかしら、と思う気持ちがないでもなかったけれど。
 

「……」
 ため息をつきたくなる気持ちを抑えて、微笑む。

 ええい、こうなったらやけだわ。

 元々幼少期以降、死んだような人生だった。だったら、今死んでも一緒よ!

 覚悟を見せなさい。
 ミレシア•ノクシナ。

 扉が、開かれる。

 ステンドグラスは、鬱陶しいぐらいに輝いていて、その先にいる皇帝陛下の顔が見えない。

 私の一挙手一投足に視線が注がれるのを感じながら、私は皇帝陛下までの道を歩いた。

 近づくと、さすがに皇帝陛下の顔が見えてきた。
 ……ぞっとするほど美しい青銀の瞳からは、感情が読み取れない。
 そして、美しいのは瞳だけではなかった。
 銀糸の髪はさらさらと揺れ、目鼻立ちも整っている。

 ……怖い。
 でも、恐怖を顔に出したら負けだ。
 恐れるよりも、微笑んで見せることで、自分の有用性を示すべき。ベール越しだから、わからないかもしれないけれど。

 無駄に生きてしまったけれど、それでも。
 この体は、貴族の娘としていずれ、民たちの役に立つために創られたのだから。

「ーー」
 皇帝陛下は、私の笑みを見て、目を見開いた。
 その顔は、さすがにわかる。
 驚き、だ。

 何かが想定とは違ったようだが、尋ねられるはずもなく、婚姻の誓いの言葉がはじまる。

 神父の言葉にお互いが頷くと、ベールが上げられる。
 誓いの口付けだろう。

 目を閉じる。

「……?」

 周囲から歓声が上がる。
 でも、私は内心で首を傾げていた。

 唇が触れた感触はした。
 だが、その感触があったのは、私の唇の端だった。

 観客には、しっかりと口付けをしたように見えるだろうけれど、神父からはバレバレのはず。

 それでも、そこを指摘しないーーいや、できないのは、この皇帝の恐ろしさゆえか。


 儀礼的な口付けさえも嫌がるとは。
 ……なるほど。
 皇帝陛下には、どうやら愛する人がいるようだわ。

 けれど、その方がいい。
 謀殺よりも、お飾りの妃として、真実の愛の隠れ蓑になるほうが気が楽だ。

 祝福の拍手が鳴り止まぬ中、ほっと息を吐く。

「……」

 こちらを見る青銀の瞳の視線には気づかなかった。
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