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第二章

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 テイラー伯爵の婚姻申込書が見つかった2日後に、私とお兄様は仕事の手伝いをお休みにしてもらった。

 本当なら今日も仕事の手伝いだったのだけど、ユーリ様が入学まで日数が少ないのだから、早くしたほうが良いだろうって私達に気を遣ってくれた。

 ユーリ様も人手不足で大変だろうに優し過ぎるわよね。

「レイチェルは学部を変えてくれるでしょうか?」

「どうだろうな。特進クラスから一般クラスなら抵抗するかもしれないけど、一般クラスから特進クラスなら反対しないんじゃないか?」

 普通はそうよね?

 今なら学部を変えても学園の教師にしか知られることはないから、周りからの反感を買うこともないですし、拒否をする理由はないわよね?

 学生の私達が知ってるのは自分が何処のクラスに入るかだけで、同じクラスに誰が居るのかは本人が言わない限り知られることはない。

 入学前なのに私達がクラスを知ってるのは、学部によって制服が違うのと、特進クラスは1クラスだけだけど、一般クラスは複数クラスがあり成績で分けられていて、一般クラスは制服はみんな一緒だけど、クラスによってネクタイとリボンに違いが出るらしいのよね。

 成績が下のクラスになれば成る程、デザインが地味になるとお兄様から教えられた。

 学園で身分制度は低いらしいけど、成績での差別はあるってことよね。

 あの学園は優秀な人材を教育することに力を入れてるから仕方ないのかしら?

 あの学園に入学するのは、高度な教育を受けて就職に有利にしたいものと、優秀な人材を発掘してスカウトしたい人ばかりだから、分かりやすく区別されてるほうが選ぶ方も楽にはなるわよね。

 レイチェルが来るのをボーっと待ってると、ドアがノックされる。

「レイチェル様がお見えになりました。お部屋にお通しして宜しいでしょうか?」

「構わないよ」

 お兄様が許可を出すと、レイチェルとメイドが入ってくる。

「イリーナ、セミュン様、おはようございます」

「レイチェルおはよう~」

「朝早くから呼び出してしまい申し訳ありません」

「今日は1日暇でしたので問題ありませんわ。でもお二人は宰相様の手伝いがあるのにもう宜しいのですか?」

 レイチェルが畏まってるのを見ると、すごく違和感を感じるわね。

 私と2人だけの時は軽い口調だから、急に遠くに感じてしまうわね。

「まだまだ人手不足だから明日からまた手伝いに行く予定です。今日はレイチェル様にお願いしたい事と注意してほしいことがあり、俺とイリーナは休みにしてもらいました」

「私にお願いですか?セミュン様のお願いなら何でも聞きますよ?」

「何でも聞くなんて軽率なこと言ってはいけないよ。そんな事を言ったらどんなお願いをされるか分からないからな」

「セミュン様なら大丈夫ですわ」

 レイチェルが自信満々に言うと、お兄様は複雑そうな顔をしていた。

 こんなに良い笑顔で断言されたら、お兄様からしたら複雑な気分になるわよね。

 信頼されて嬉しいって気持ちと、この期待を裏切らないために下手な事は出来ないってプレッシャーになるはず

 こんなに信頼してくれてるレイチェルに手を出せなくなるわよね。

 この世界では婚前交渉は禁止されてない。

 この世界には避妊具と避妊薬があり、ちゃんと使用すれば妊娠することがないから婚前交渉も許されている。

 婚約者が居るものは婚約者以外とするのは基本的には禁止されてますけど、そういう行いを売りにしてるお店などは例外なのよね。

 婚前交渉を許されてる理由は色々あるけど、1番の理由は禁止されればされるほど興味を持ってしまうからだ。

 性に対して興味を持つ年齢の者たちが学園で集まってるのに、間違いが起きないほうがおかしい。

 10代後半なんて禁止されればされるほど興味を持ってしまう年齢だから、反対するより婚約者や恋人なら許可をしたほうが良いって事になった。

 この決まりが出来たのは20年前ぐらいだから、あまり良く思ってない人も居るみたいだけど、私には前世の記憶があるからか別にいいと思ってるのよね。

 だって婚約者が出来たとして、自分と出来ないからって学園で恋人を作られるより良いわよね。

 10代後半なんて男は性教育が始まって、未亡人やそういう職業の女性と練習するようになる。

 1度快感を知った男が数回だけで我慢できるわけない、10代の男の頭なんて猿並みなんだからね。

 乙女ゲームや小説とかで、婚約者が居るのに学園にいる間だけ恋人作るとか良くあるけど、大体の理由がそういう事だと思うのよね。

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