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第一章

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 私がお兄様に相談したかったのは、婚約者候補から辞退したあとの話なのよね

「私がお兄様を呼んだのはこの事を報告するためではないんです」

「そうなのか?」

「はい。お兄様に相談したいことがあったんです。婚約者候補を辞退した後のことを相談したかったんです」

 私はまだ12歳だから婚約者候補を辞退しても年齢的に困ることはないと思うけど、今まで王太子妃になることしか目標にしてなかったから、これからはどうすれば良いのか悩んでいる

 自分一人で物事を決められないのは情けないけど、勝手に決めて突っ走たりして家族に迷惑をかけるのは絶対に嫌

「何の相談だ?ミハイル様の婚約者候補を辞退したら、沢山の縁談が申し込まれるだろうから次の相手には困んないと思うが?暫くは誰とも婚約したくないとかか?」

「出来たら暫くはゆっくりしたいです。いずれは相手を選ばないといけないでしょうけど、焦って相手を決めたくないです。それに男性に依存はしたくありません」

「それなら問題ないだろ。最近は学園を卒業するまでに結婚相手を探せばいい流れになってるから、無理に今すぐ見つける必要はないぞ。それにもしもイリーナが結婚したくなかったら、それはそれで構わないと俺は思ってる。お前1人ぐらいなら俺が最後まで面倒を見てやるさ」

 お兄様がカッコ良すぎる。

 お兄様から結婚しなくても構わないって言ってくれて、正直な気持ちホッとしてしまった

 実はずっと不安だったのよね。

 前世で私は恋愛感情がわからなかった

 異性に対して格好良いなって思うことはあったけど、絶対に付き合いたいとか、深い関係になりたいとか思うことがなかった

 小さい頃は好きかもって思う人が居たこともあったけど、その人が他の人を好きって聞いても、何の感情もわいてこなかった

 その人が好きな人と付き合えたらいいなって思うことはあっても、私が好きかもって思った人が他の人と付き合うことを、嫌って思うことは1度もなかったのよね

 心の底から祝福出来た

 友達にその話をするとおかしいって言われてきた

 本気で好きになったことがないから、祝福できるんだよって言われていたわね

 私の好きって気持ちは憧れなんじゃないかって言われた

 それを言われてから好きって感情がわからなくなった

 もしかしたら今世でも好きって感情がわからないかもしれない、でも政略結婚をするならその方が良いのかもしれないわね

「まだどうするか決めてないけど、もしも結婚しなかったとしても、お兄様達に頼りっぱなしになるつもりはないわ。お兄様の将来のお嫁さんに悪いもの」

「そんなことを心配する必要はない。俺は妹を邪険に扱うものを伴侶にするつもりはない」

「家族を大切にするのは良いことですけど、私よりこれから出来るお嫁さんと子供を大事にして下さい。私はお兄様のお嫁さんにとって、邪魔な小姑になるつもりはありませんわ。自分がやったことは、いつか自分に返ってくるのですよ?」

 もしも私が結婚した時に厄介な小姑が出来たら嫌だから、私は絶対に嫌な小姑にはならないわ

 お兄様のお嫁さんとは、適度な距離をとって仲良くするつもり

「何か寂しいな。昔みたいにお兄様大好きって言っても良いんだぞ?」

「お兄様の馬鹿。別に今でも嫌ってませんけど、私だってもう12歳なのだから昔みたいにベッタリなんかしませんわ。それより本題に入りたいんですけど」

「そういえば話が進んでないな」

 本当に全く進まないわね

 お兄様と話してると何故か途中で話が脱線するのよね

 話てて楽しいから良いのだけど

「今までの経験を活かして、将来何か仕事をしたいの。だけど何の仕事が良いのかわからないの。貴族女性が仕事をするのはあまり良く思われてないでしょ?」

「そうだな。古い考えの貴族は女性が仕事をすることにいい感情がないな。でも俺はいいと思うぞ。女性だって1人でも生活していける力があってもいいと思う。結婚することが幸せだって言うものも居るけど、1人で生活できる収入源がないと、いざって時に行動ができないだろ」

「いざって時?」

 離婚したいときとか?

 でも貴族は離婚したりするの珍しいわよね

 前世では夫の浮気とかで離婚したりするのが多いけど、貴族は結婚しても愛人が居るのが当たり前

 既婚者同士の浮気や未婚者との浮気はあまり良い顔されないけど、未亡人との浮気は美談になる傾向にある

 未亡人と浮気をしていても、男性は援助をしていたと言えば周りは文句はあまり言えない

 貴族男性にとって、旦那を亡くした奥さんを援助するのは貴族としてステータスになる

 純粋に援助だけしている男性も居るから女性はあまり文句を言えない、年の差婚が多い貴族にとって、自分が同じ立場になる可能性が将来あるだけに文句は言いづらい

 大体は体の関係があるみたいですけどね

「例えば結婚をしてから夫を亡くした時とかだな。その時に自分で収入源があれば男に頼る必要がない。愛人になる必要もないし、年寄の後妻になる必要もない。それと夫が男尊女卑な考えで暴力的だった時に離縁して逃げやすくなる」

 そっか…………

 私達のお父様は暴力とか振るわないけど、貴族男性の中には暴力的な人も居るわよね

 貴族男性はそういう人が多い気がする

 だからなのか気が強い女性や自分の意見をちゃんと言える人よりも、従順な女性がモテる印象があるわね

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