侍従の苦悩~お嬢様が自分は悪役令嬢だから家が没落すると大騒ぎして途方に暮れています~

黒夜須(くろやす)

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仮に、王妃教育に平民がついてこれたしてもだ。王妃とは簡単になれるものではない。平民に、王妃教育を受けさせたとなれば王家側も黙ってはいないはず……。
アルベルトは頭が痛くなった。
「本気で殿下と平民を結ぶつもりですか?」
「できればそうしたい」
アルベルトはカトリーナの『つもりでない。そうなると知っている』という強気の言葉が返ってくると思っていた。
「『できれば』なのですか?」
「できればというか……」カトリーナは顎に手をあてた。「それが一番いい」
「お嬢様が亡くなるのに、ですか」
自分で言って悲しくなった。
「以前は死にたくないと思ったこともあったが」カトリーナは寂しそうに笑った。「私の命一つで私の大切な人間が幸せになるならそれで良い」
「なれません」
アルベルトの大きな声にカトリーナは目を大きくした。
「カトリーナ様がいなくなっては……」
「今はそう思うだけだ。実際いなくなれば『自由』を感じる事ができる」
「……自由」
今が不便だと思った事はない。カトリーナの奇行には驚かされ戸惑うこともあるが苦痛を感じたことはない。
「そう」
 寂しげなカトリーナの微笑みに、どう返答していいか分からなかった。
「じゃ、ちょっと行ってくるから。またな」
「あの……」アルベルトは遠慮がちにカトリーナを見た。
「なんだ?」
 振り向いたカトリーナは元気そうに見えたが、自分の側に一晩いた彼女の体調が心配だった。
「寝ておられないのですよね。そんな状態で王妃教育を受けて大丈夫でしょうか?」
王族に見られるため常に緊張感を持って挑まなければならない王妃教育は万全な体調でもきつく感じる。
「平気だ。夜通し馬に乗った後受けた事があるが完璧だと褒められた」
「そうでしたね」
カトリーナの化け物のような体力を思い出した。数日寝ていない彼女に剣術で押された日の事を思い出し苦笑した。
「それじゃな」
部屋をカトリーナが出ると入れ替わりに、家令アルファードが入室したためアルベルトの身体に緊張が走った。
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