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ゆっくりと目を開けると、そこには見慣れた天井があった。
「大丈夫か?」
不意に、カトリーナの顔が現れた。彼女はいつもの様に銀色の髪を後ろで束ね兄の幼少期の服を着ている。
「お、お嬢様」
アルベルトは慌てて起き上がると、あたりを見回した。窓からは光を差し込んでいた。
「え、朝……、私はそんなに……」
「一晩、目を覚まさないから心配した」
カトリーナはアルベルトが起き上がると、安堵した顔をしてベッドの横にある椅子に座った。
「私は……?」
「覚えていないのか」カトリーナは目を大きくした。「廊下で倒れているのを侍女が見つけた。ジョージ先生に診てもらった。異常ないと言っていたが身体に違和感あるか?」
「シドニー家のお医者様を……。わざわざ、申し訳ございません」
アルベルトは頭を深々と下げた。自己管理が出来ていなかったために招いた事だ。シドニー家の医師の手を煩わせてしまった事を申し訳なく思った。
「かまわない」
カトリーナは背もたれに寄り掛かると腕と足を組んだ。その姿は見ると、歳をサバ読んでいるのかと疑いたくなった。
「あの、お嬢様はいつからここに……?」
一晩たったというのに、カトリーナの服が変わっていない事が気になった。
「倒れたと聞いてからだ」
「え、まさか一晩中私の側に? 申し訳ありません」
立ち上がろうとすると、カトリーナに止められベッドに寝かされた。カトリーナを前にして寝ているのは居心地が悪かったが起きる事は許されなかった。
「気にするな。部屋に戻ってもアルが心配で眠れない」
十二歳の少女の男前なセリフがカッコよく感じた。
「体調はどうだ? 酷くうなされていただろう」
「そうですか……」寝ていた時の事を考えたが何も思い出せなかった。「特に身体に問題はありません。ご心配ありがとうございます」
思い出せないが、気持ちが沈んでいた。理由の分からない気持ち悪さを感じた。
「一週間くらい休め」
突然のカトリーナの言葉にアルベルトは意味が分からず首を傾げた。
「え……?」
カトリーナは視線を下げて、顎に手を当てた。
「私の我儘でアルを酷使しすぎた。すまなかった」
「いえ、それが私の仕事ですから」
「あのな」カトリーナは大きく首を振った。「私はアルが大切なんだ。居なくなられては困る」
嬉しい言葉だった。彼女の笑顔と優しい言葉を聞くと心が暖かくなった。
「しかし、その間はお嬢様どうするつもりですか」
老体のエマにカトリーナの身の回りの世話を全てこなす事は無理がある。だから、アルベルトは一日も休むことなく働いていた。
「エマだけでは仕事が回りません。まさか、違う侍女を……」
他の者を頼ろうとするカトリーナに驚いた。
「あぁ、ティナ様がいらっしゃる」
しかし、平民の名前を聞くと納得しつつも面白くなかった。
「……」
平民は物覚えが良く要領も悪くはない。しかし、知識不足だ。
「ちょうど、今日は王妃教育が入っている。ティナ様と受けて来る」
「――ッ」アルベルトは眉を寄せた。
平民はまず基本的なマナーを取得するのが先だ。
基礎を飛ばして応用をやろうなんて無理があると忠告しようとした。しかし、カトリーナのやる気に満ちた顔を見ると、何を言っても通じない事を悟った。
「大丈夫か?」
不意に、カトリーナの顔が現れた。彼女はいつもの様に銀色の髪を後ろで束ね兄の幼少期の服を着ている。
「お、お嬢様」
アルベルトは慌てて起き上がると、あたりを見回した。窓からは光を差し込んでいた。
「え、朝……、私はそんなに……」
「一晩、目を覚まさないから心配した」
カトリーナはアルベルトが起き上がると、安堵した顔をしてベッドの横にある椅子に座った。
「私は……?」
「覚えていないのか」カトリーナは目を大きくした。「廊下で倒れているのを侍女が見つけた。ジョージ先生に診てもらった。異常ないと言っていたが身体に違和感あるか?」
「シドニー家のお医者様を……。わざわざ、申し訳ございません」
アルベルトは頭を深々と下げた。自己管理が出来ていなかったために招いた事だ。シドニー家の医師の手を煩わせてしまった事を申し訳なく思った。
「かまわない」
カトリーナは背もたれに寄り掛かると腕と足を組んだ。その姿は見ると、歳をサバ読んでいるのかと疑いたくなった。
「あの、お嬢様はいつからここに……?」
一晩たったというのに、カトリーナの服が変わっていない事が気になった。
「倒れたと聞いてからだ」
「え、まさか一晩中私の側に? 申し訳ありません」
立ち上がろうとすると、カトリーナに止められベッドに寝かされた。カトリーナを前にして寝ているのは居心地が悪かったが起きる事は許されなかった。
「気にするな。部屋に戻ってもアルが心配で眠れない」
十二歳の少女の男前なセリフがカッコよく感じた。
「体調はどうだ? 酷くうなされていただろう」
「そうですか……」寝ていた時の事を考えたが何も思い出せなかった。「特に身体に問題はありません。ご心配ありがとうございます」
思い出せないが、気持ちが沈んでいた。理由の分からない気持ち悪さを感じた。
「一週間くらい休め」
突然のカトリーナの言葉にアルベルトは意味が分からず首を傾げた。
「え……?」
カトリーナは視線を下げて、顎に手を当てた。
「私の我儘でアルを酷使しすぎた。すまなかった」
「いえ、それが私の仕事ですから」
「あのな」カトリーナは大きく首を振った。「私はアルが大切なんだ。居なくなられては困る」
嬉しい言葉だった。彼女の笑顔と優しい言葉を聞くと心が暖かくなった。
「しかし、その間はお嬢様どうするつもりですか」
老体のエマにカトリーナの身の回りの世話を全てこなす事は無理がある。だから、アルベルトは一日も休むことなく働いていた。
「エマだけでは仕事が回りません。まさか、違う侍女を……」
他の者を頼ろうとするカトリーナに驚いた。
「あぁ、ティナ様がいらっしゃる」
しかし、平民の名前を聞くと納得しつつも面白くなかった。
「……」
平民は物覚えが良く要領も悪くはない。しかし、知識不足だ。
「ちょうど、今日は王妃教育が入っている。ティナ様と受けて来る」
「――ッ」アルベルトは眉を寄せた。
平民はまず基本的なマナーを取得するのが先だ。
基礎を飛ばして応用をやろうなんて無理があると忠告しようとした。しかし、カトリーナのやる気に満ちた顔を見ると、何を言っても通じない事を悟った。
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