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第71話 悪友
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窓の外から桜の木が見えた。
マンションの周辺には毎年綺麗な桜道ができる。何度も見ている光景だが飽きることはない。
「江本、お前本当にいいマンションんでるよな。ガキの頃は分かんなかったがな。にしてもいつ家具を全部白くしたんだ?」
酒を片手にソファーに座る和也が声を掛けてきた。
「母が海外に行ってから、心機一転で変えたんだよね」と言って貴也は和也の対面に座った。
彼と会うのは久々だ。憲貞がまめに連絡をとっていたため彼を通して和也の情報を得ていた。
「で? お母さんは? まだ戻ってこないのか?」
「あぁ、去年1回帰ってきただけかな。おかげでのりちゃんと2人暮らしを堪能しているよ」
「それはよかった」
へらへらと笑いながら、和也は酒を口に運んだ。顔が真っ赤になりだいぶ酔いが回っているようであった。
「大丈夫か?」
憲貞が心配そうな顔をして水を渡した。「いらない」と和也が断ったが睨みつけて無理やり飲ませた。
「のりちゃんも強くなったな」
「そりゃ、桜花会の会長を中高6年間やってから大学入ってまたやったんだからな。強くもなるさ」
憲貞は桜華時代のことを思い出してため息をついた。すると和也は大きな声で笑いだした。
「1年目そうとう大変だっただろ」
「1年目だけではない」
「あー、6年目の時に大道寺のお嬢さんが入学して一騒動あったみたいだな」
「あれは……」と言って憲貞は頭を抱えた。それをクスクスと貴也は笑った。
「俺は彼女の事気に入っている。きっと楽しい桜花会にしてくれるはずだ」
高校3年の時に中学1年として桜華に入学してきた大道寺レイラのことを思い出した。桜花会の人間として変わった感性を持った少女であった。
「ふーん」和也は興味なさそうな返事をするとハッと目を開いて貴也を見た。
「あ、卒業おめでとう。国家試験合格もな」
「忘れていた?」
「いいや、これお祝いの酒だよ?」
「君がめちゃくちゃ飲んでいるけどな」
呆れた顔をすると、和也はニヤニヤと笑いがならハエでも追いやるように手を振った。
「いいじゃん。どうせ、江本は研修生とかで忙しくなるんだろ。その前に騒ごうぜ」
「そうだな」と言ったのは憲貞だ。
彼は、おつまみをローテーブルに置くと、貴也の隣に座った。そして「どうぞ」と貴也に酒を差し出した。
「ありがとう」そう言って、憲貞を見た「のりちゃんにも寂しい思いをさせちゃったね。ごめんね。試験前忙しくて」
「いや、食事の時に少し会話できたし、貴也の頑張っている姿見ていたから大丈夫だ」
そう言って優しく微笑む、憲貞はすごく可愛く思えた。綺麗な顔をしているがどこから見ても男の憲貞は“可愛い”と言う言葉から遠い存在であるが、この時は抱きしめたくなるくらいであった。
和也が目の前にいなかったら実行していた。
「試験前、ちゃんと食っていたんだな。成長したな。左手は? 骨折してねぇーの?」
茶化すように言う和也に「してない」と左手を振って見せた。
「大人になったな」
「お前こそ親孝行しているの?」
「しているって。だから、大学は特待制度で入ったんだ」
和也は中学受験で勉強しなかったことを後悔したらしく、中学に入学してから高校卒業まで学年トップを守り大学は特待生で入学した。
人って変われるのだとしみじみ感じた。
「すごいよね」
感心する憲貞に「お前もな」と言って和也がニヤリと笑った。
憲貞は天王寺と関わりたくないと言って、大学卒業後すぐに小学校から友人と一緒に起業したのだ。彼らとは桜華時代に何度も顔を合わせている。
憲貞の世代の桜花会は優秀な人物が多く、なぜか皆憲貞が大好きで嫉妬した。
今、上手くいっているなら我慢したかいがあったというものだ。
「私は凄くない。周りがすごい」
「確かに、のりちゃん世代の桜花会は優秀な人ばかりだね」
謙遜する憲貞に貴也は同意した。
「そうだが、生徒会も負けてないでしょ」と憲貞はニヤリと笑った。
当時の桜花会と生徒会の人間はただ優秀なだけではなくクセも強かった。そうでなければ、桜花会を牛耳っていた中村幸弘を追い出すことはできなかった。
「なんか、わかんねぇけど。いい仲間に会えたんだな」
和也はソファーに寄りかかりニヤニヤと笑いながら、ローテーブルにあるツマミを口に放りこんだ。
その姿が、“俺が言った通りだろ”と言わんばかりの態度だ。
「まぁな」
本当にこの悪友には感謝している。
マンションの周辺には毎年綺麗な桜道ができる。何度も見ている光景だが飽きることはない。
「江本、お前本当にいいマンションんでるよな。ガキの頃は分かんなかったがな。にしてもいつ家具を全部白くしたんだ?」
酒を片手にソファーに座る和也が声を掛けてきた。
「母が海外に行ってから、心機一転で変えたんだよね」と言って貴也は和也の対面に座った。
彼と会うのは久々だ。憲貞がまめに連絡をとっていたため彼を通して和也の情報を得ていた。
「で? お母さんは? まだ戻ってこないのか?」
「あぁ、去年1回帰ってきただけかな。おかげでのりちゃんと2人暮らしを堪能しているよ」
「それはよかった」
へらへらと笑いながら、和也は酒を口に運んだ。顔が真っ赤になりだいぶ酔いが回っているようであった。
「大丈夫か?」
憲貞が心配そうな顔をして水を渡した。「いらない」と和也が断ったが睨みつけて無理やり飲ませた。
「のりちゃんも強くなったな」
「そりゃ、桜花会の会長を中高6年間やってから大学入ってまたやったんだからな。強くもなるさ」
憲貞は桜華時代のことを思い出してため息をついた。すると和也は大きな声で笑いだした。
「1年目そうとう大変だっただろ」
「1年目だけではない」
「あー、6年目の時に大道寺のお嬢さんが入学して一騒動あったみたいだな」
「あれは……」と言って憲貞は頭を抱えた。それをクスクスと貴也は笑った。
「俺は彼女の事気に入っている。きっと楽しい桜花会にしてくれるはずだ」
高校3年の時に中学1年として桜華に入学してきた大道寺レイラのことを思い出した。桜花会の人間として変わった感性を持った少女であった。
「ふーん」和也は興味なさそうな返事をするとハッと目を開いて貴也を見た。
「あ、卒業おめでとう。国家試験合格もな」
「忘れていた?」
「いいや、これお祝いの酒だよ?」
「君がめちゃくちゃ飲んでいるけどな」
呆れた顔をすると、和也はニヤニヤと笑いがならハエでも追いやるように手を振った。
「いいじゃん。どうせ、江本は研修生とかで忙しくなるんだろ。その前に騒ごうぜ」
「そうだな」と言ったのは憲貞だ。
彼は、おつまみをローテーブルに置くと、貴也の隣に座った。そして「どうぞ」と貴也に酒を差し出した。
「ありがとう」そう言って、憲貞を見た「のりちゃんにも寂しい思いをさせちゃったね。ごめんね。試験前忙しくて」
「いや、食事の時に少し会話できたし、貴也の頑張っている姿見ていたから大丈夫だ」
そう言って優しく微笑む、憲貞はすごく可愛く思えた。綺麗な顔をしているがどこから見ても男の憲貞は“可愛い”と言う言葉から遠い存在であるが、この時は抱きしめたくなるくらいであった。
和也が目の前にいなかったら実行していた。
「試験前、ちゃんと食っていたんだな。成長したな。左手は? 骨折してねぇーの?」
茶化すように言う和也に「してない」と左手を振って見せた。
「大人になったな」
「お前こそ親孝行しているの?」
「しているって。だから、大学は特待制度で入ったんだ」
和也は中学受験で勉強しなかったことを後悔したらしく、中学に入学してから高校卒業まで学年トップを守り大学は特待生で入学した。
人って変われるのだとしみじみ感じた。
「すごいよね」
感心する憲貞に「お前もな」と言って和也がニヤリと笑った。
憲貞は天王寺と関わりたくないと言って、大学卒業後すぐに小学校から友人と一緒に起業したのだ。彼らとは桜華時代に何度も顔を合わせている。
憲貞の世代の桜花会は優秀な人物が多く、なぜか皆憲貞が大好きで嫉妬した。
今、上手くいっているなら我慢したかいがあったというものだ。
「私は凄くない。周りがすごい」
「確かに、のりちゃん世代の桜花会は優秀な人ばかりだね」
謙遜する憲貞に貴也は同意した。
「そうだが、生徒会も負けてないでしょ」と憲貞はニヤリと笑った。
当時の桜花会と生徒会の人間はただ優秀なだけではなくクセも強かった。そうでなければ、桜花会を牛耳っていた中村幸弘を追い出すことはできなかった。
「なんか、わかんねぇけど。いい仲間に会えたんだな」
和也はソファーに寄りかかりニヤニヤと笑いながら、ローテーブルにあるツマミを口に放りこんだ。
その姿が、“俺が言った通りだろ”と言わんばかりの態度だ。
「まぁな」
本当にこの悪友には感謝している。
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