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第十七話 覚悟と決意③
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「新宮さん?」
名前を呼ばれて、意識が戻った。今までどこか遠くで雲のように浮いていた気がした。病院で星遥斗のGlare(グレア)を防いだ時、行為でやったのもが自然とできたようだが意識を飛ばしてしまった。
彼から圧がなくなり体が軽くなると、ひな子は深呼吸をして椅子に座りなおした。
「ふーん」星遥斗はニヤリと笑っている。「僕は話したよ。次は自称SレベルのDomさんの番だよ」
「あら、バレていました?」
肩をすくめると星遥斗は鼻で笑った。
「別に嘘をついていると言ってないよ。多分君はSだと思うよ。けど、検査していない以上『自称』でしょ。君のソレをダダのDomだからで終わらせるつもりはないよ」
Glare(グレア)を使われている訳ではないのに、彼に睨まれると体がピリピリして変な汗が出た。まるで蛇に睨まれた蛙になった気分だ。
「星が検査してたらか私もその流れで検査している設定でいけるかと」
「無知だね」星遥斗は目を細めてひな子に冷たい視線を送った。「症状が出て命の危険あった遥は例外だよ。そもそも、強いDomの自覚症状が出たら君は今頃外を歩いてないよ」
なんでも知っているという彼の態度が気に入らないが、彼の知識は有益であったため黙っていた。
「さて、これくらいでいい?」ニヤリと星遥斗は笑った。「こ、う、か、ん」
まるで悪魔と取引をする感覚だった。本能が『アレは、毒』だと警告音を鳴らしている。毒であったとしても、ひな子はそれを飲んでしまったからもう後には引けない。
「自分自身にコマンドを使います」
「ほぉ」ひな子の言葉に星遥斗は興味深そうに頷いた。「凄いね。でもそれができるということは」
「はい」ひな子は頷いた。「検査はしていませんがswitchだと思います。自身を支配できるので楽しくて何度もコマンドを使用していました」
ダイナミクスを学習しだしてから、自身を制御することに夢中になっていた。意識的には制御できない血液の流れや内蔵の動きすらもコントロールできることが快感であった。
「自身を守るために使うのは始めてでしたが上手く行きました。先程のグレアは2回目でしたので意識することなくコマンドを発動させられました」
「無意識でのコマンド発動か。相当自分の事好きだねえ」
少し考えた後、星遥斗は声を上げて笑いだした。ずっと、睨まれ警戒されていたため彼の気の抜けた態度に驚いた。
「自己愛なんて言葉じゃ表せないくらい好きなんだね」星遥斗は笑いすぎてでて涙を拭きながらひな子を見た。「じゃアレか。遥を助けたいのは自分のためだったんだね。あの女と戦闘するのが楽しかったとか?」
自身を読み取られているようで薄気味悪かった。しかし、彼の言っている事は外れてはいない。
「君の行動原理は『理想の自分』とか『愛すべき自分でいる』とかなんだろうね。だから、遥には興味ないだね」
自分の事は大好きだ。だから、自身を嫌いなるような行動はしたくないのは事実。
「あ~、違うか。遥じゃなくて人に興味ないのかな」
彼の言葉にひな子は不満になった。それではまるで自分が人間でないと言われている気がした。
星遥斗は首を傾げ「神田医師の息子を殴ったんだっけ?なんで?」と聞いてきた。
質問されているだけなのに蛇に絡まれる気がして何も言えずにいると星遥斗はゆっくりと口を開いた。
「神田医師の配偶者が遥のダイナミクスを知っていたんだよね。それで? 遥のために怒ってくれた?」
煽り、追い詰めてくる星遥斗に腰が引けた。
「いえ……。それは別件で殴ったのは彼が私の邪魔をしたからです。その後、教師にお互いの母親を呼び話し合いになりました。その時に聞きました」
そこまで話すとひな子はじっと星遥斗を見た。そして、一呼吸置いてからまた口を開いた。
「確かにこの件は、星と関係ありませんがでもそれだけで」
「人に興味ないとはかぎらない?」言葉を被せられてひな子は眉を寄せて黙った。「まぁ、そうだよ。僕は君に興味ないし、よく知りもしない。だから知っている材料だけで判断した。それがあっているとか間違ってるとか君が反発すると信じるとか僕には関係ない話」
「なら」彼が何を言いたいのかよく分からず、身体を星の方に向かって前のめりになった。すると、眉を寄せた彼が手のひらを見せた。『近づくな』という強い警告。
3度目の圧。
何度も抑えつけられ侮辱されているように感じ、ひな子は腹がたった。感情で全身があつくなるのを感じた。それをそのまま、星遥斗に投げつけた。
Glare(グレア)。
はじめ相手を威圧した。すると、星遥斗は目を大きくしたと同時に威圧感がなくなった。
「君、本当に遥と同じ歳?サバ読んでいるじゃないの?」星遥斗はヘラヘラ笑いながら、手をふった。そんな彼を見ると気持ちを落ち着かせて、椅子に座り直した。
「で?今なんでGlare(グレア)を使ったの?今日2回ほど君を威圧したけどどれも対抗しなかったよね?」
「……」
コマンドは何度も自分に使って楽しんでいたが他者に使用したことがない。元々他者に向けて行うGlare(グレア)に興味はなかった。
「あはは、今はじめできたんでしょ?」何もかも言い当てられてぐうの音も出ない。「あたり?僕凄いでしょ」
楽しそう笑う星遥斗をひな子は黙って見ていた。全て見透かされているようで怖かった。しかし、それと同時にその能力に興味があった。
「僕が怖い?」星遥斗はじっとひな子の瞳を見た。星と似ており整っているが胡散臭い。「それとも僕に興味がある?」
星遥斗は鼻で笑った。
「まぁ、こんなもでいいでしょ」
「こんなもん……?」
立ちあがった星遥斗をひな子は見上げた。じっと彼を見て言葉の意味を考えた。
「情報交換」星遥斗との目的を思い出した。「ダイナミクスの話だと神田を母親が星をSubだと知っているという話。私にグレアが効果ない理由とGlare(グレア)の使い方って事ですか?」
真剣な顔でひな子は星遥斗を見た。
「えー、もっとサービスしているよ。僕から見た君について話たし僕の観察力も披露したし」
彼の能力に感嘆した。反発する気持ちもあるが、そういった視点からの意見も重要なことをひな子は分かっていた。
本能や感情で感じるものも大切であるがそれは判断資料として受け止めるだけであり流されてはいけない。
流された結果、あの女に負けた。
流された結果、神田を殴り問題になった。
しかし、結果的に悪い方向には進んでいない。ただの友人の兄という存在であった星遥斗の能力を知り彼が自分に多少なり興味を持った。
星遥斗のおかげでGlare(グレア)を体験できた。ひな子は彼を利用しもっと自分を高めたかった。
「それには感謝しています」慎重に言葉を選んだ。「そういえば、星ってモテますよね」
背中を向けた星遥斗の動きが止まり、ゆっくり振り向いた。彼は笑顔であったが雰囲気が重い。
「何が言いたいの?」
星遥斗の眉がピクピクと動き、空気が張り詰めた。
ビンゴだとひな子は内心ガッツポーズをとった。
小学生6年になった弟を毎日送り迎えするのは、星がSubであるためということで納得するとしてもだ。半年以上も世話をやきほぼ側にいる。ひな子に星への恋愛感情を聞いてきた。
星遥斗が星へ持つ感情は家族の範囲を超えているのではないかと仮定して見た。
「私は星と同い年ですよ」笑顔を作り自分の顔を触れた。「今は何もしていませんが、この顔は素材は悪くありません。整えればそれなりですよ」
今は面倒臭くて長く伸びた髪を適当に後ろで縛っていた。それでも高い評価を得ることが多い。
「そんな私が星の側にいればある程度は排除できると思いますよ。それに、彼に友人も必要でしょ」
「なるほど。何が狙い?」
「勉強したいですよ。色々」
「あ~」星遥斗は目を細めた。「君は本当に小学生?」
「ええ」
ひな子がにこりと微笑むと星遥斗は頷いた。
「まぁ、いいよ。そろそろ遥の復学を考えていたんだよ」
取引が成立すると、星の家を後にした。外に出ると既に空は赤くなっていた。
名前を呼ばれて、意識が戻った。今までどこか遠くで雲のように浮いていた気がした。病院で星遥斗のGlare(グレア)を防いだ時、行為でやったのもが自然とできたようだが意識を飛ばしてしまった。
彼から圧がなくなり体が軽くなると、ひな子は深呼吸をして椅子に座りなおした。
「ふーん」星遥斗はニヤリと笑っている。「僕は話したよ。次は自称SレベルのDomさんの番だよ」
「あら、バレていました?」
肩をすくめると星遥斗は鼻で笑った。
「別に嘘をついていると言ってないよ。多分君はSだと思うよ。けど、検査していない以上『自称』でしょ。君のソレをダダのDomだからで終わらせるつもりはないよ」
Glare(グレア)を使われている訳ではないのに、彼に睨まれると体がピリピリして変な汗が出た。まるで蛇に睨まれた蛙になった気分だ。
「星が検査してたらか私もその流れで検査している設定でいけるかと」
「無知だね」星遥斗は目を細めてひな子に冷たい視線を送った。「症状が出て命の危険あった遥は例外だよ。そもそも、強いDomの自覚症状が出たら君は今頃外を歩いてないよ」
なんでも知っているという彼の態度が気に入らないが、彼の知識は有益であったため黙っていた。
「さて、これくらいでいい?」ニヤリと星遥斗は笑った。「こ、う、か、ん」
まるで悪魔と取引をする感覚だった。本能が『アレは、毒』だと警告音を鳴らしている。毒であったとしても、ひな子はそれを飲んでしまったからもう後には引けない。
「自分自身にコマンドを使います」
「ほぉ」ひな子の言葉に星遥斗は興味深そうに頷いた。「凄いね。でもそれができるということは」
「はい」ひな子は頷いた。「検査はしていませんがswitchだと思います。自身を支配できるので楽しくて何度もコマンドを使用していました」
ダイナミクスを学習しだしてから、自身を制御することに夢中になっていた。意識的には制御できない血液の流れや内蔵の動きすらもコントロールできることが快感であった。
「自身を守るために使うのは始めてでしたが上手く行きました。先程のグレアは2回目でしたので意識することなくコマンドを発動させられました」
「無意識でのコマンド発動か。相当自分の事好きだねえ」
少し考えた後、星遥斗は声を上げて笑いだした。ずっと、睨まれ警戒されていたため彼の気の抜けた態度に驚いた。
「自己愛なんて言葉じゃ表せないくらい好きなんだね」星遥斗は笑いすぎてでて涙を拭きながらひな子を見た。「じゃアレか。遥を助けたいのは自分のためだったんだね。あの女と戦闘するのが楽しかったとか?」
自身を読み取られているようで薄気味悪かった。しかし、彼の言っている事は外れてはいない。
「君の行動原理は『理想の自分』とか『愛すべき自分でいる』とかなんだろうね。だから、遥には興味ないだね」
自分の事は大好きだ。だから、自身を嫌いなるような行動はしたくないのは事実。
「あ~、違うか。遥じゃなくて人に興味ないのかな」
彼の言葉にひな子は不満になった。それではまるで自分が人間でないと言われている気がした。
星遥斗は首を傾げ「神田医師の息子を殴ったんだっけ?なんで?」と聞いてきた。
質問されているだけなのに蛇に絡まれる気がして何も言えずにいると星遥斗はゆっくりと口を開いた。
「神田医師の配偶者が遥のダイナミクスを知っていたんだよね。それで? 遥のために怒ってくれた?」
煽り、追い詰めてくる星遥斗に腰が引けた。
「いえ……。それは別件で殴ったのは彼が私の邪魔をしたからです。その後、教師にお互いの母親を呼び話し合いになりました。その時に聞きました」
そこまで話すとひな子はじっと星遥斗を見た。そして、一呼吸置いてからまた口を開いた。
「確かにこの件は、星と関係ありませんがでもそれだけで」
「人に興味ないとはかぎらない?」言葉を被せられてひな子は眉を寄せて黙った。「まぁ、そうだよ。僕は君に興味ないし、よく知りもしない。だから知っている材料だけで判断した。それがあっているとか間違ってるとか君が反発すると信じるとか僕には関係ない話」
「なら」彼が何を言いたいのかよく分からず、身体を星の方に向かって前のめりになった。すると、眉を寄せた彼が手のひらを見せた。『近づくな』という強い警告。
3度目の圧。
何度も抑えつけられ侮辱されているように感じ、ひな子は腹がたった。感情で全身があつくなるのを感じた。それをそのまま、星遥斗に投げつけた。
Glare(グレア)。
はじめ相手を威圧した。すると、星遥斗は目を大きくしたと同時に威圧感がなくなった。
「君、本当に遥と同じ歳?サバ読んでいるじゃないの?」星遥斗はヘラヘラ笑いながら、手をふった。そんな彼を見ると気持ちを落ち着かせて、椅子に座り直した。
「で?今なんでGlare(グレア)を使ったの?今日2回ほど君を威圧したけどどれも対抗しなかったよね?」
「……」
コマンドは何度も自分に使って楽しんでいたが他者に使用したことがない。元々他者に向けて行うGlare(グレア)に興味はなかった。
「あはは、今はじめできたんでしょ?」何もかも言い当てられてぐうの音も出ない。「あたり?僕凄いでしょ」
楽しそう笑う星遥斗をひな子は黙って見ていた。全て見透かされているようで怖かった。しかし、それと同時にその能力に興味があった。
「僕が怖い?」星遥斗はじっとひな子の瞳を見た。星と似ており整っているが胡散臭い。「それとも僕に興味がある?」
星遥斗は鼻で笑った。
「まぁ、こんなもでいいでしょ」
「こんなもん……?」
立ちあがった星遥斗をひな子は見上げた。じっと彼を見て言葉の意味を考えた。
「情報交換」星遥斗との目的を思い出した。「ダイナミクスの話だと神田を母親が星をSubだと知っているという話。私にグレアが効果ない理由とGlare(グレア)の使い方って事ですか?」
真剣な顔でひな子は星遥斗を見た。
「えー、もっとサービスしているよ。僕から見た君について話たし僕の観察力も披露したし」
彼の能力に感嘆した。反発する気持ちもあるが、そういった視点からの意見も重要なことをひな子は分かっていた。
本能や感情で感じるものも大切であるがそれは判断資料として受け止めるだけであり流されてはいけない。
流された結果、あの女に負けた。
流された結果、神田を殴り問題になった。
しかし、結果的に悪い方向には進んでいない。ただの友人の兄という存在であった星遥斗の能力を知り彼が自分に多少なり興味を持った。
星遥斗のおかげでGlare(グレア)を体験できた。ひな子は彼を利用しもっと自分を高めたかった。
「それには感謝しています」慎重に言葉を選んだ。「そういえば、星ってモテますよね」
背中を向けた星遥斗の動きが止まり、ゆっくり振り向いた。彼は笑顔であったが雰囲気が重い。
「何が言いたいの?」
星遥斗の眉がピクピクと動き、空気が張り詰めた。
ビンゴだとひな子は内心ガッツポーズをとった。
小学生6年になった弟を毎日送り迎えするのは、星がSubであるためということで納得するとしてもだ。半年以上も世話をやきほぼ側にいる。ひな子に星への恋愛感情を聞いてきた。
星遥斗が星へ持つ感情は家族の範囲を超えているのではないかと仮定して見た。
「私は星と同い年ですよ」笑顔を作り自分の顔を触れた。「今は何もしていませんが、この顔は素材は悪くありません。整えればそれなりですよ」
今は面倒臭くて長く伸びた髪を適当に後ろで縛っていた。それでも高い評価を得ることが多い。
「そんな私が星の側にいればある程度は排除できると思いますよ。それに、彼に友人も必要でしょ」
「なるほど。何が狙い?」
「勉強したいですよ。色々」
「あ~」星遥斗は目を細めた。「君は本当に小学生?」
「ええ」
ひな子がにこりと微笑むと星遥斗は頷いた。
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