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第十八話 ひろいもの①
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ひな子は夕日を見ながらため息をつき、警察に連れて行かれる神田を見た。周囲で倒れていた人々は立ち上がり、少しずつ通常の姿に戻っていった。
「馬鹿だね」
見えなくなった神田に向かってボソリふいた。
しばらく歩き、校内に入ろうとすると倒れているピンク色の髪が見えた。面倒くさいと思いつつ人影を確認すると村上雪菜(むらかみゆきな)であった。
そのまま立ち去りたかったが、彼女にこの後何かあったらのちに責任を取らされる可能性を考え声を掛ける方を選んだ。
「大丈夫?」
優しく身体を揺すると村上は目を覚ましたが真っ青な顔をして震えている。
「サブドロップか」
面倒くさすぎると思いながらも仕方なくひな子は彼女を抱き起こした。
「Come(おいで)」
優しくコマンドを使うと、彼女はゆっくりとひな子にもたれかかった。
「good(よくできたね)」彼女の頭を優しく撫ぜた。「もう大丈夫だよ」
彼女の呼吸は落ち着き、次第に顔色も良くなってきた。ひな子は安心すると彼女を抱きかかえた。小柄な彼女は食事をしているのかと思うほど軽かった。
「……だ、だれ?」
「気づいた? 新宮だよ。これから医務室にいくから」
「いや……」
突然暴れ出したため、バランスが保てず彼女を強く抱きしめるとその場に座り込んだ。
「どう……」言葉をかけようとすると彼女はまた震えだし、サブドロップしかけていた。「なんなだろうねぇ。まったく」
今日は厄日だと思いながら、優しい声でコマンドを使い彼女を落ち着かせた。
数十分すると彼女は落ち着いたようで呼吸が正常に戻っていた。
「もう、大丈夫みたいだね。医務室行かないなら私はもう帰るよ」
そう言って、彼女から離れようとするとギュッと服を掴まれた。
「あ~、何?」
「……あの、あたし、その」
言いづらそうに、目を泳がせた。
「何? 帰らないの?」
「帰れないっていうか……。失敗して。だから、その」
何が言いたいかよく分からず、ひな子は眉を寄せた。
「……私に助けを求めているの?」
そう言うと彼女は小さくうなずいた。
「なんで?村上さんと私仲良くないよ?助ける義理はない」
懐かれては困ると少しきつめな言い方をしたが、彼女は服から手を離さなかった。その手を強引に外すこともできなくはないができればそうしたくはなかった。
「お願い、な、なんでもするから」
ひな子の服を握る彼女の手は震えていた。
「……」
村上雪菜はピンク色の髪をしているため目立つ存在であったが積極的な女子ではない。星を取り巻く女子の一人であるが、大抵は後ろの方にいる。星が好きというより、みんなあこがれる星を好きできることに安心しているようであった。そのため、彼女が星に手紙を渡したのには驚いた。
ひな子は彼女をじっと見た。
「私の言うことは絶対に断らないってこと?」
「え……」村上は怯えた目をしたが、すぐにうなずいた。
――情報は貴重だよね。
「いいよ」
ひな子は頷くと、彼女を抱き上げた。あまりの軽さに彼女の全身を見た。胸は大きいが手足は棒のようであり筋肉はほとんどないように思えた。
「歪な体をしているね」
「あ……」
ひな子の言葉に村上は頬を赤くして体を丸くした。そしてじっとひな子を見た後、彼女は小さく口を動かした。
「……胸は人口的に大きくしたの。細くて、胸が大きい子がいいっていうから」
「誰が?」
「……真人(まさと)君」
神田真人の名前がここで出てくることに驚いた。
「村上さんが、倒れていたのはGlare(グレア)にあてられたからだよね」あえて誰のだと言わずに、聞いた。
「うん」
「誰の?」
ひな子が聞くと、村上は眉を寄せて考え込んだ。
「わかんないけど、真人君かな?」
「どうしてそう思うの?」
「真人君が倒すって言っていたから」
「ふーん」彼女の言葉にひな子は頷きて目を細くした。「詳しく聞きたいな。うちへ行こう」
彼女に自分の上着を掛けると負担にならないようにゆっくりと歩きだした。なるべく周囲の目に触れないように人通り少ない道を歩いた。
歩いている間は、彼女は静かにひな子の服を握っていた。
「馬鹿だね」
見えなくなった神田に向かってボソリふいた。
しばらく歩き、校内に入ろうとすると倒れているピンク色の髪が見えた。面倒くさいと思いつつ人影を確認すると村上雪菜(むらかみゆきな)であった。
そのまま立ち去りたかったが、彼女にこの後何かあったらのちに責任を取らされる可能性を考え声を掛ける方を選んだ。
「大丈夫?」
優しく身体を揺すると村上は目を覚ましたが真っ青な顔をして震えている。
「サブドロップか」
面倒くさすぎると思いながらも仕方なくひな子は彼女を抱き起こした。
「Come(おいで)」
優しくコマンドを使うと、彼女はゆっくりとひな子にもたれかかった。
「good(よくできたね)」彼女の頭を優しく撫ぜた。「もう大丈夫だよ」
彼女の呼吸は落ち着き、次第に顔色も良くなってきた。ひな子は安心すると彼女を抱きかかえた。小柄な彼女は食事をしているのかと思うほど軽かった。
「……だ、だれ?」
「気づいた? 新宮だよ。これから医務室にいくから」
「いや……」
突然暴れ出したため、バランスが保てず彼女を強く抱きしめるとその場に座り込んだ。
「どう……」言葉をかけようとすると彼女はまた震えだし、サブドロップしかけていた。「なんなだろうねぇ。まったく」
今日は厄日だと思いながら、優しい声でコマンドを使い彼女を落ち着かせた。
数十分すると彼女は落ち着いたようで呼吸が正常に戻っていた。
「もう、大丈夫みたいだね。医務室行かないなら私はもう帰るよ」
そう言って、彼女から離れようとするとギュッと服を掴まれた。
「あ~、何?」
「……あの、あたし、その」
言いづらそうに、目を泳がせた。
「何? 帰らないの?」
「帰れないっていうか……。失敗して。だから、その」
何が言いたいかよく分からず、ひな子は眉を寄せた。
「……私に助けを求めているの?」
そう言うと彼女は小さくうなずいた。
「なんで?村上さんと私仲良くないよ?助ける義理はない」
懐かれては困ると少しきつめな言い方をしたが、彼女は服から手を離さなかった。その手を強引に外すこともできなくはないができればそうしたくはなかった。
「お願い、な、なんでもするから」
ひな子の服を握る彼女の手は震えていた。
「……」
村上雪菜はピンク色の髪をしているため目立つ存在であったが積極的な女子ではない。星を取り巻く女子の一人であるが、大抵は後ろの方にいる。星が好きというより、みんなあこがれる星を好きできることに安心しているようであった。そのため、彼女が星に手紙を渡したのには驚いた。
ひな子は彼女をじっと見た。
「私の言うことは絶対に断らないってこと?」
「え……」村上は怯えた目をしたが、すぐにうなずいた。
――情報は貴重だよね。
「いいよ」
ひな子は頷くと、彼女を抱き上げた。あまりの軽さに彼女の全身を見た。胸は大きいが手足は棒のようであり筋肉はほとんどないように思えた。
「歪な体をしているね」
「あ……」
ひな子の言葉に村上は頬を赤くして体を丸くした。そしてじっとひな子を見た後、彼女は小さく口を動かした。
「……胸は人口的に大きくしたの。細くて、胸が大きい子がいいっていうから」
「誰が?」
「……真人(まさと)君」
神田真人の名前がここで出てくることに驚いた。
「村上さんが、倒れていたのはGlare(グレア)にあてられたからだよね」あえて誰のだと言わずに、聞いた。
「うん」
「誰の?」
ひな子が聞くと、村上は眉を寄せて考え込んだ。
「わかんないけど、真人君かな?」
「どうしてそう思うの?」
「真人君が倒すって言っていたから」
「ふーん」彼女の言葉にひな子は頷きて目を細くした。「詳しく聞きたいな。うちへ行こう」
彼女に自分の上着を掛けると負担にならないようにゆっくりと歩きだした。なるべく周囲の目に触れないように人通り少ない道を歩いた。
歩いている間は、彼女は静かにひな子の服を握っていた。
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