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第五章 始動
5.28 二次実技試験①
しおりを挟む試験会場。だだっ広い広場に再び立つ。一次実技試験終了後の歪んだ地面は修繕されている。
いよいよ二次実技試験。高鳴る心臓と再び顔を出す緊張――――。
EXT:72,600/86,400 FL :Lv1
『フニオ、マロン――――』と呼びかける。
『優花、そんなに緊張するな。気楽にいけ。やりたいように動いてみろ』
『マロンも応援してるの。優花、落ち着いてやればなんとかなるの! 自分を信じるの』
『ありがとう、フニオ、マロン。やってみるね!』
私が前を向いて頑張れるのは、フニオとマロンがいてくれるから。
よし、やるぞ。
折角だから……、カーラさんのペン杖、使ってみようかな。
私の魔力を感知して伸縮するという濃紺の杖。あれ? さっきよりも長く伸びてる。
ペン先に魔力が届くと、花の蕾の様な形のサファイアの石が姿を現す。
わぁ……。キラキラ輝いてなんかきれい。そしてなんか高そう。
右手に掲げる。うん。私、魔導士(っぽい)!
マリエラさんに向かって手を挙げる。
「二次実技試験を始めます!」
マリエラさんの宣言とほぼ同時に私の背後からそよ風が吹く。それが向かいにある緑の魔方陣に集まって渦を巻く。
その渦から現れたのは、美しい女性……、に見えるアンドロイド。
右手を頭上に高くあげ、左手には緑色の宝珠が付いた杖を持っている。キラキラした宝珠。
深緑色のローブのフードからのぞく鮮やかな緑色の長い髪。自然に波打ち、穏やかな風で軽やかに空中に舞い広がる。
綺麗なお姉さんのアンドロイド、それがセシルローゼだった。
「コンニチハ。私ハ、セシルローゼ。ヨロシク、オ願イシマス」
「よろしくお願いします」
優雅な所作で人のように丁寧にお辞儀をするセシルローゼ。その姿はまるで貴族令嬢。
つられて私もぺこりとお辞儀する。
「ソレデハ、参リマス」
言葉と共にセシルローゼの目が緑から赤に変化する。
セシルローゼが床に杖を立て、両手を重ねて詠唱を始める――――。
「緑ノ 息吹、ヴェリダ。コノ声ニ応え、風ヲ纏イ、大地ヲ渡リ、今ココニ姿ヲ現ワセ」
そよ風がどこからともなく吹き、セシルローゼの右手に集まる。
形成されるバスケットボールくらいの球体。
それは、宝石のごとく透明で幻想的な緑の光を放つ。
おっと、見とれちゃいけない。
状況把握だ。
白仮面の様な接近戦の爪じゃない。
ヴェリダ? 緑の球は精霊?
どうしよう。どう動く――――。
疲労度が蓄積していないのに、なんて鈍い判断力。
「テンペスト・ザ・ストームブリンガー」
セシルローゼが呟く。
球体だった『ヴェリダ』が、緑の風の精霊に変化する。
アニメのランプの精……? いや。アレよりかなりスマート。
それに、鋭い風を纏っている。
召喚された風の精霊「ヴェリダ」が両腕をクロスさせて構える。
何か、来る。対抗しなきゃ――――。
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