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第三章 勇者の誓い
3.4 マシュー
しおりを挟む食事を堪能した後は、バスタイムを満喫。
私は、丈の長い水色のキャミソールワンピースを着て、白いガウンを羽織った。
誰の見立てかわからないけど、ジャストサイズ!
というか私痩せた!?
クルっと回ると、ワンピースの裾がヒラリと舞う。
顔もニキビやそばかすが無い、ぷるんとした肌になっている。
なんだろう、この嬉しすぎる変化。
私は、紺色のローブからカナタ石を取り出す。
キレイなオパールのような煌めき。
それを、ガルシオンから贈ってもらった金色のホルダーケージネックレスの、ホルダーゲージに入れる。まるでそれ専用だったかのように、金の網のなかにカナタ石はスッと入り、程よい重さとカタチを維持してくれる。
大切なものは、失くさないよう身に着けておくべきだ――――。
彼の言葉がリフレインする。確かに、これなら失くさない。
私の胸元で、いつもカナタが見守ってくれているようなそんな安心感さえある。
いつか、ガルシオンにお礼が出来たら良いな。
といっても、クオリティの高いものは作れないけどね……。
ロキが来たら。
一体何から聞いたらいいのだろう。
聞きたい事が山積みだ。
私はベットにゴロンと横になる。
眠たいわけではないのに、瞼が重く感じる。
ロキが来るかもしれないのに寝てられない、けれど、なんだろう妙に、眠い。
そう感じて瞼を閉じたその後。
スウッと……、意識が、遠く――――。
ピッ、ピッ、という機械音が聞こえる。
ドラマなんかでよく見かける医療機器の音だ。
ベッドからは何本かのチューブが伸びている。そこに横たわる、一人の男性。
呼吸はしている。でも、おそらく意識は――――ない。
誰……?
部屋の向こうに、黒い空間。大きなパソコンが設置されている。
机に並んだ三つのモニターに向かって、忙しくキーボードをたたく姿がある。
その男性は、私の気配に気が付くことなく黙々と作業を続けている。
壁には大きな柱時計。とてもクラシックなデザイン。近代的なこの部屋にとってもミスマッチな年代物だ。暗い部屋に、コッ、コッ、コッ、と音が響く。
針が示す時刻は八時。
朝なのか夜なのかはわからない。見回すとこの部屋……、空間には窓がない。
僅かな機械音だけが響く場所。
『来ちゃったか。ダメだよ、君はここに来たら危険なんだ』
聞いたことがあるようで無いような声。作業している男性ではない。
そう、フニオの声をもう少し高くしたら多分こんな声だ。
『この森なら、君も安心出来るよね?』
声はどこから聞こえてるのかわからない。辺りを見回すと、風景がガラリと変わる。
白い幹の大樹、大きくて美しい月。目の前に広がるのは、光る美しい湖。
――――ここは、始まりの森。湖のそばだ。
『僕はここ。君の足元に居るから踏まないでね』
私は、足元を見る。マロンと同じぐらいのサイズの――――青い鱗の蛇だ。
またしても爬虫類系か、と思ったその時。
『そうだった。人化してたほうが良い??』
――――え、私の心の中を読んだ?
私の目の前に青い光の粒子が集まり、次第に人の姿を形作る。
彼は――――少年だった。美しい水色の短い髪、水色のローブを着た小学生くらいの少年。その目は濃紺、ラピスラズリのような美しい目だ。
「人の形を取るのは久しぶりだなぁ。えと、これなら話しやすい?」
「うん。あなたは神使ロキ……、じゃないよね?」
「僕はマシュー。君の聖獣の弟分って感じ」
「聖獣マシュー……? フニオの、弟?」
「うん。まぁすわろっか」
私は促されるまま湖のほとりに座る。マシューが正座しているから私もついつい正座になる。
足がしびれないかどうか心配だ。
「今の君は思念体だよ。だから足はしびれないから安心してね」
「私の思ったこと、わかるの!?」
「何となくね。というか兄さんから聞いてないの? 聖獣は人間の感情の変化を敏感に察知するんだよ」
――――フニオならわかってても言わないよね、きっと。
「僕も聖獣さ。僕の主はロキ様と共に君たちの時間を管理しているんだ」
「君たちの、時間……?」
「まいったな。兄さん、本当に何も伝えてないのかぁ」
聖獣マシューと名乗る少年は語りはじめる。
「実は君の他にもあと二人、地球から勇者を呼んでる。まぁ彼らとはいずれ会う事になるだろうから良いとして」
――――仲間が、いるんだ。それはどんなに心強いかわからない。
たった一人であの恐ろしい邪竜と戦うのかと、ずっと思ってたから。
「だよね。君は邪竜の影と会ったんだもんね。だからこそ君は知りたいと願った。君自身のことについて。そして君の能力について。そのためにロキ様と会いたかったんだよね?」
私はこくんと頷く。
「ロキ様の代わりに、君が知るべきことを伝えよう。そのために僕は来た」
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