刑事×怪盗の秘密

カルキ酸

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逃走する怪盗はトイレに行きたい

おしっこ我慢の限界

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 怪盗は、狭いロッカーの中で、必死に股を揉んでいた。焦燥感に、何も考えられなくなる。
 いっそ、隠れるのをやめて、警官に連行される前にトイレに行かせてくれと頼んだほうが、楽かもしれない。
 けれど、ここまで逃げてきたのに、おめおめと姿を現わすわけにはいかなかった。

 頼むから、ちょっとの間だけでもどっか行ってくれよ。と怪盗は願う。
 尿道がじわり、と湿るのを感じた。両手の指先でグイグイと押し、必死で出口を塞ごうとする。



「いたか?」
廊下の方で、警官が会話している。
「いえ、隣の教室には居ません」
違う警官の声。
「じゃあ、残るは、ここだけか」
ガラっと引き戸が開く音がした。

 教室に何名もの警官が入ってくる足音がする。
 怪盗は、ぎゅっと閉じた太ももに力を込めた。今、漏らしたら確実に水音でバレてしまう。
 陰茎の先端まで、甘く冷たい感覚が広がる。
 も、もう駄目っ。目には涙が浮かんできた。



 不意に、渡辺警部は、ロッカーの扉を開けた。電気のついた教室は明るい。
 眩しさに目を細めながら、股を抑える怪盗の姿が晒される。

 大勢の警官に囲まれ、諦めた怪盗は、ロッカーからフラフラと出てきた。



「午前3時18分。逮捕」
 香坂刑事が、怪盗に手錠をかける。

「よし!署まで連行!」
 渡辺警部は、怪盗の腕をぐいっと引っ張る。




「あっ・・・」

 怪盗は、急に腰を抜かせて、へたり込む。


「なんだ?往生際の悪・・・
 渡辺警部は、苛立ちながら振り返って見下ろす。
「え」


 怪盗の周りには、ビチャビチャと黄金色の水溜りが拡がっていた。

「や、やだ」

 顔を真っ赤にし、声を震わせながら、怪盗は必死で股を押さえる。
 しかし、ジュイイイッと勢いよく溢れてくるのを止められない。
 下着が熱い。濡れたスラックスが、肌に張り付くのが気持ち悪い。何より、大の大人が、人前でおしっこを漏らしているのが堪らなく恥ずかしかった。

 足元に流れてくる尿に、警官たちは、思わず後ろずさりする。同時に、警官同士は気まずそうにしたり、目を逸らしたりしていた。

 やがて、腰にタオルを巻かれた怪盗は、パトカーに乗せられて連行されていった。



 一方、警察署内の一室で、画面越しに一部始終を見ていた白夜探偵は、1人腹を抱えて高笑いをしていた。

「これは、伯爵もさぞ喜ぶに違いない」

 愉快そうに白夜探偵は、壁を足で蹴り、キャスター付きの椅子でくるくる回った。
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