転生皇女は冷酷皇帝陛下に溺愛されるが夢は冒険者です!

akechi

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9章 アレクシアとアウラード大帝国の闇

閑話 もしバレンタインデーがあったら⋯

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アレクシアは今、ランゴンザレスと共に皇宮の調理場の一部を借りていた。

「今日はバレンタインデーよ!!張り切ってチョコを作るわよ~!」

いつものド派手なピンクのスーツにフリフリの可愛いピンクのエプロンをしている美青年を見て、開いた口が塞がらない程に唖然とする料理人達。そんな視線を気にする事なく、楽しそうに準備をするランゴンザレス。

「うぅ⋯眠い⋯それに視界がピンクだらけで目がしょぼしょぼしましゅ⋯」

「もう!髪がボサボサよ!それに汚れるからこのエプロンをつけて⋯」

アレクシアが目を擦っていると、ランゴンザレスがアレクシアの髪をさっさとポニーテールにして、自分とお揃いのフリフリの可愛いピンクのエプロンをつけている。

「ギャッ!いつのまにかランゴンザレしゅになってましゅ!!」

「もう!ランしゃんよ!ほらいいから、手を洗いなさい!」

豆粒サイズのアレクシアの為に台を持ってきて乗せてあげるランゴンザレス。アレクシアは渋々手を洗い、目の前のチョコレートを細かく刻む作業をしていた。

「ランしゃん、シアはこう見えても皇女でしゅよ?色々と忙しいんでしゅ!」

そう言って逃げようとするアレクシア。

「あら、そうなの~?ロインの授業だったのをお願いして変わってもらったんだけど⋯」

「あっ!今日は何の予定もありましぇんでちた!頑張りましゅよ~!!」

そう言ってまた台に乗ると、チョコレートを一生懸命に刻んでいく。そしてランゴンザレスと共に刻んだチョコレートを溶かして可愛いハート型に流していった。

チョコレートを冷やしている間、アレクシアは調理場の冷蔵庫から果実水を取り出して飲みだした。何故かランゴンザレスには大きな生肉を持ってきたので、正座させられて怒られていた。

「私は生肉なんて食べないわよ!!」

「エヘヘ⋯なんか食べそうだな~と思って。冗談でしゅよ!」

「あんたは冗談のつもりでもあれを見なさいよ!料理人達が本気にしてるでしょ!!生肉を食べる魔族って普通に怖いわよ!!」

そんなこんなでチョコレートが固まったので、今度はホワイトチョコレートを溶かしてそれでメッセージを描くことにした。そして二人はそれぞれラッピングをして籠に入れると、それを渡しに行く事にした。

「あんたは⋯本当にそれを渡すの?」

「渾身の出来栄えでしゅよ!!」

ドヤ顔のアレクシアをジト目で見るランゴンザレスだが、調理場を出た所に立っていたのはこの国の皇帝陛下でアレクシアの父親であるルシアード・フォン・アウラードであった。更にその背後には魔国国王陛下でアレクシアの婚約者であるデズモンド、竜族族長でアレクシアの前世アリアナの育ての父親であるゼストがいた。

「⋯⋯あんた達は暇なんでしゅか?」呆れるアレクシア。

「む。アレクシア、今日はバレンタインデーという日らしいぞ」ルシアードが愛娘に真面目に問う。

「ド直球でしゅね」

「俺はお前の婚約者だ。そんな俺に渡すものがあるんじゃないか?」

嬉しそうなデズモンドはもう手をこちらに差し出している。

「これまたド直球でしゅな」またまた呆れるアレクシア。

「俺はお前のチョコレートが欲しいぞ!」

デズモンドを押し退けて手を出すゼスト。

「もうチョコレートって言っちゃってましゅな!!」

いつにも増してグイグイ来る最強トリオに呆れながらも、アレクシアは持っていた籠からシンプルな透明な袋に入ったハート形のチョコレートを取り出した。

「はい、いつもありがとうでしゅ。」

まずはルシアードに渡すアレクシア。ルシアードはそれを感無量で大事に受け取ると、そのハート形のチョコレートに何やらメッセージが描かれていた。

“女運が上がりますように“

目が点になっているルシアードと、メッセージを見て笑い転げているゼスト。そんなゼストにもチョコレートを渡しに行くアレクシア。

「はい、これからもよろしくでしゅ。」

ゼストは涙ぐみながらチョコレートを大事に受け取る。そしてやはり描かれていたメッセージを見た。

”いい加減に結婚できますように”

ジト目でアレクシアを見るゼストだが、気にせずに最後にデズモンドの元へ歩いて行くと、チョコレートを先程とは違いぶっきらぼうに放り投げるように渡すと、アレクシアは逃げるようにランゴンザレスと歩いて行ってしまった。

ポカンとしていたデズモンドだが、もらったチョコレートに描かれたメッセージを見た。

“昔あげられなかったから。婚約者より”

それを見たデズモンドは込み上げる嬉しさでどうにかなりそうだった。

(これは食べられないな。永久に保存しよう)

ルシアードとゼストに見られないようにと、大事そうに自分の亜空間にしまったのだった。



広間で談笑するミルキルズとポーポトスの元へやってきたアレクシアは、チョコレートを其々に渡した。それを涙ぐみながら嬉しそうに受け取った爺達。

「何か描いておるぞ?どれ、“長生きしてね”⋯うぅ、ありがたいのう」

ミルキルズは恥ずかしいくらい大泣きしている。

「わしにも描いてあるぞ!“長生きしてねパート2”⋯うぅ、パート2は余計じゃ!」

泣きながらも説教するポーポトス。

更に二人にはメッセージカードの様なものが付いていた。

“肩たたき金貨一枚券”

「「⋯⋯」」

涙が引っ込む爺達と呆れてものが言えないランゴンザレス。

そこへタイミング良く入ってきたのはロインであった。アレクシアが爺達に書いた手作りメッセージカードにロインの鋭い視線が集中する。

「アレクシア様。肩たたき券に直して下さい」

「はいでしゅ⋯」

有無を言わさず“金貨一枚”を消させるロインと、素直に従うアレクシア。

アレクシアは籠からロイン用に作ったチョコレートを恐る恐る渡した。

“勉強一回免除してください”

メッセージを見たロインはアレクシアに向かってこう言った。

「ホワイトデーでは倍に返しますよ?」

満面の笑みでそう言うロインを見て、ブルブルと震えるアレクシアであった。


ちなみに五匹の子犬従魔とウロボロスには最高級の生肉を贈ったら嬉しそうに食べてくれたが、ウロボロスは最後まで『金を払えって言う気じゃないだろうな!?』と疑っていた。アランカルトにはアレクシアが書いたミルキルズの生態図鑑をプレゼントしたら、嬉しそうに受け取ってすぐに読み始めたのであった。

最後にランゴンザレスにもチョコレートを渡した。メッセージは⋯

“ランゴンザレス”

「何でよ!!」



●作者より
すみません、書きたくて書きました!



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